Resolution:8 デートタイム2
昨日上げる予定でしたが、間に合わなかったので、今あげました。
「だが断る」
「それを棄却します」
「なんだと!?」
「はーい、行きますわよ、カルマ様!」
「さあ行きましょう。カルマ義兄さま!」
ルルが号令をかけると、センさんがヌッとオレの背後に忍び寄り、ガッシリとホールドする。
「え? ちょっ! 待って! ………あーれー」
「か、カルくん? カルくーん!」
ルルとキースに両腕を捉えられて、オレは引き摺られていく。
割りとマジで振りほどけない。なんでこの二人こんなに力強いんだよ!?
あれよあれよと言う間にオレはショッピングモールに連れ戻されるのだった。
「どうですか? 似合ってますか?」
試着室から出てきた彼女が着ていたのは、クリーム色のカーディガンに若草色のストール、そして空色のロングスカートといった、これまでの彼女とはイメージのかけ離れたフンワリとした装いだった。
「まあ、出るとこ出てたら文句無しだったな」
「カルマ様? デリカシーの無さは相変わらずの様ですけど、今のは流石のワタクシでも怒りましてよ?」
ルルがニッコリと微笑む。
するとマルカが珍しくフォローに入る
「そう怒るな、セルルト。カルマはツンデレだからな、素直にお前を褒めたくないのだろうよ。まあ要するに照れ隠しだな」
「誰がツンデレじゃ」
「マルカさん、それは本当ですか? もう、カルマ様ったら、ワタクシとあなたの仲ですのに、今更恥ずかしがらずともよいではありませんか」
「だーまらっしゃい! 人を拉致っといてなーにがオレとお前の仲だよ.まったく」
「ともに一夜を過ごし、熱いベイージョを交わした仲ですわ」
「まて。最初はまあ子供の頃のお泊まり会であるとして、最後のキスの部分は記憶にないぞ。勝手に捏造すんな」
「カルマ様が起きていなかっただけですわ」
「何を馬鹿なことを…………ハァ!?」
「きゃっ! びっくりしましたわ」
「びっくりしたのはこっちだよ! いつしたんだ!?」
「嫌ですわカルマ様。それはプライバシーの………」
「それは今朝もやった!」
などとオレ達が騒いでいると、もう片方のカーテンが開いた。
「インデリアさん? いい加減にしないと三枚に下ろすわよ?」
などと物騒なことを微笑みながら言い放ったヒナタの服装は、白のブラウスとジーパン素材のホットパンツ、そして太ももの半ばまであるニーソックスに赤いハイヒールといった、これまた彼女の大人しい楚楚とした雰囲気とは違う、どこか溌剌さを感じさせる物だった。
「似合う、かな?」
「うむ、我ながらなかなかに素晴らしいコーディネートだな」
「マルカ凄いなお前」
「くっ、認めざるを得ませんね」
「凄いです! おねーさん凄く似合ってます! マルカ義姉さま凄い!」
「フフフ、もっと褒めろ」
「マルカはなんでも出来るんだな」
「なんでもじゃないよ、出来ることだけ」
「んー、お前が言うには足りないものが多いな。胸とか身長とか胸囲とかメガネとかバストとか」
「そいや!」
マルカの美しい回し蹴りが綺麗に腹に入る。
「ぐふぉ!」
「だ、大丈夫? カルくん………って、きゃあ!」
慣れていないハイヒールを履いたせいか、ヒナタがオレのところに倒れてくる。
それに押され、マルカの蹴撃によりバランスを崩していたオレは、彼女を受け止めきれずそのまま倒れこむ。
「きゃっ!」
本日三度目の悲鳴を聞いた直後、オレは背中で柔らかいものを感じ取った。
「………」
「………」
「………」
「なぁカルマよ」
「言うなマルカ。分かってる」
「えらく冷静だな」
「違う、思考停止しているだけだ」
「あの、カルくん………」
「………カルマ様」
オレは今、大変な事になっている。正面にはヒナタが、そして背面にはルルが所謂サンドイッチ状態、いわゆる前門の虎後門の狼。うん、二個目違う。
「やりますね、カルマ義兄さま!」
「日中往来で堂々とか。我が兄ながら、やりおるな」
「おねがいだから助けて!」
いや、確かに嬉しいことは嬉しい。だが、これは気まずさの方が何万倍も勝っている。
「二人も固まってないで動いて!」
「そこで二人に奉仕を求めるか。我が兄は凄まじい度量の持ち主だな」
「まあ、カルマ様ったら」
「もう、カルくんったら」
「おいこらマルカテメェ!」
「「二人ではなく、私達のどちらか1人を選んでよ(くださいな)」」
「お願いだから空気読んで!」
◆◆◆
そんな事もあったが、気がつけば既に日は傾き始め、空が茜色に染まり始めていた。因みにここは坂道でもないし、ツンデレもいない。
夕焼け空に、うっすらと月が昇り始めている。どうやら満月のようだ。
「今日は楽しかったな」
「うん、ホントにね」
「途中からデートでは無かったがな」
「一番最初にぶち壊したやつが何を言っている」
ルルは家の用事だとか言って、既に帰っている。
「まあ、折角出し、このままヒナタん家まで送ってくよ」
「え? ううん、大丈夫だよ?」
「そこはまあ、あれだ」
「デートの醍醐味で、男の役目見たいな物だからな!」
「なんでお前はいつもそうやってオレの言葉をかっさらっていくかなぁ!?」
「それが私の役目だからだ!」
「何のだよ!?」
その後、ヒナタを無事に送り届け――その際、久方ぶりにあったヒナタの母親の質問攻めに遭ったことは言うまでもない――自宅に着いたときには夜の帷が空を覆い尽くし、やけに赤く見える月だけが、煌々と輝いていた。
次回は久しぶりのシリアス。
しかし、あの二人のシリアスをいつにしようか………(伏線)




