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あの日交わした約束を  作者: フリムン
第二章 決意
33/100

Resolution:4 カルマの受難

女の子に両側から腕を組まれてみたいですよね?


え? 案外そうでも無い?

 ――――9年前。


『こんにちはー、隣に引っ越して来ました、桐久保でーす』


 そう言って、我が家の門を叩いたのは、一人の亜麻髪の男性でした。



「おい、なんでいきなり回想が始まっ「カルくんちょっと黙って」………すいません」



 わたくしはその頃から人見知りが激しく(「嘘こけ」「シャラップ」「ごめんなさい」)、その男性と父上が話している間、ソファの後ろに隠れていましたの。

 そしたら、いきなり肩をつつかれて、驚きながら振り向くとそこには、訪ねて来た男性と同じ髪の色をした美しい少年が立っていました。

 ……ええ、一目惚れでしたわ。ですからわたくしは、彼に言ったのですわ。


『嫁にして下さい!(ポルトガル語)』


 そしたら彼は


『何言ってるか全然わかんないケド、とりあえず頷いた方が良いかな? (日本語)』


 と言って、頷いたのですわ。

 それから9年、わたくしは彼の隣にずっといました。嫁として、妻として。

 なのに……なのにっ!


◆◆◆


「うわー……桐久保、アンタ………」


 梶原がゴミを見るような目つきでオレを見ている。


「ちょっと待ておかしいだろ!」

「はて? 何がですか?」

「はて? じゃない! お前、9年前って8歳じゃねぇか! 今日初めて知ったよ! あの時お前が言ったセリフが!」

「でも頷きましたわ。それに、聞いて来なかったんですもの」

「いや確かにオレも悪いけど……ていうか! なんだ嫁にしろって! ホントに8歳のセリフか!?」

「ああ、あれ嘘です」

「嘘かよ!?」

「正確には、『真剣(マジ)に私に恋……』」

「ストップ、ストーップ!」

「むう………」


 危ない危ない、危うく言わせる所だったぜ。いわせねぇよ!


「そもそも、なんで8歳がそれを知って……ていうか、いつの間に海を越えてたんだ?」

「どうかしました? カルマ様」

「いや……それよりもルル、オレは認めた覚え無いからな」

「そんな………ヒドいですわ!」


 ルルが瞳を潤ませる。


「泣き落としは効かないからな」

「一緒にお風呂に入ったのに!」

「ガキの頃な!」

「一緒のベッドでも寝たのに!」

「キースもいたからな! そしてそれもガキの頃!」

「性の初体験も……」

「それもガキの…………ってしてねぇわ! あっぶねぇ! サラッと事実捏造してんじゃねぇよ!」


 油断も隙も無いぜ、まったく。気が抜けない。

 すると、梶原がポツリと呟く。


「桐久保って、意外とワルなんだ」

「オレかっ!? オレが悪いのかっ!?」

「やっぱりカルくんは無実なんだね! 信じてたよ!」


 そう言って腕に組み付くヒナタ。

 ……あの、ヒナタさん? そう言ってくれるのは嬉しいんですが、その、極まってます。腕に技、極まってます。すっげー痛いっす。


「くぅ~! カルマ様から離れなさい! この乳女! 例の如く乳にしか栄養が回ってませんのね!」


 ルルもオレの腕にしがみつく。いや、だから極まってますって。なに貴女達、オレの腕殺す気ですか?


「アナタこそ離れなさい! でも、いくら食べても胸に全く栄養が行かない人も、可哀想よね? 可哀想だから触れないであげるわ、まな板さん。あ、ごめんなさい間違えたわ、洗濯板さん?」

「~~~っ! 言うに事欠いて! いい加減離れてはどうです? 重苦しい脂肪の塊をつけたお牛さんは!」

「そうなのよ、これ、結構重くって。肩がこっちゃう。アナタは良いわね、肩凝らなくて」


 お? 今回はヒナタが優勢か?

 などと感心していると、両側から思いっきり引っ張る。


「カルマ様から離れなさい!」

「カルくんから離れて!」

「あだだだだだ! ち、千切れる! オレの腕が千切れる、折れるぅぅうう!」


 マルカ、助け………


「さぁ、張ったはった! 朝霧ヒナタVSセルルト・ハザール・インデリアのこの勝負、軍配はいったいどちらに上がるのか!?」

「さぁさぁ、ヒナタ派はこちらに! セルルト派は向こうね」


 なんで賭博師みたいな事してんだよマルカと梶原は!


「お前、どっちだと思う?」

「朝霧さんかなぁ?」

「いいや、インデリア嬢だね!」

「いやいやいや、桐久保の真っ二つでしょう」

「「それだ!!」」


 両側の腕から、メキッという音が聞こえた気がした。


「それだじゃねぇぇぇえええ!!!」


 オレの絶叫が、朝の校舎内に響き渡ったのだった。



カルくんにはきっと、女難の相が浮かんでいる事でしょうね

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