表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あの日交わした約束を  作者: フリムン
第二章 決意
31/100

Resolution:2 婚約者!?


最近、ここに書く言葉がなくなってきた。




「「………………は?」」


 彼女の言葉に、オレ達の動きが一斉に止まる。


「ですからわたくしは、カルマ様の婚約者ですわ」



 ――――――空気が、凍った。

 まさに絶対零度。全ての存在を赦さぬ極限の低温。

 そんな空気の中、ただ一人、ルルを除いたただ一人が動き出す。

 彼女はオレへ顔を向ける。

 錆び付き油の切れた門扉のように、凍り付いたタイヤを無理やり動かすように、ゆっくりと、しかし着実に、彼女は振り向く。


「カル………くん?」


 光が、無い。

 その目に光は無く、虚ろな眼差しがオレを射抜く。

 コレはマズい。ひじょーにマズい。


「おいコラ、ルル! いつそんな話になったよ!?」

「イヤですわカルマ様ったら。そんなに照れなくても」

「なぜそうなる!?」

「…………カルくん」


 ヒナタ様の眼が据わっていらっしゃる!?

 さ、刺される………っ!


「ま、マルカ………あれ?」


 マルカに援護を頼もうとしたが、彼女を含めた梶原、佐伯先輩の姿が見当たらない。

 そして彼らがいた場所には一枚の紙切れが。


『―――――頑張ってね、モテ男くん(笑)    by真留華&佐奈&翔太』


 アイツらぁぁぁあああ!

 ポンッと肩に手が置かれる。


「カルくん、早く、説明」

「違うから! オレに婚約者なんていないから!」

「ひどい! わたくしとはお遊びだったと言うのですか!? 何度も一緒に寝たと言うのに………」

「一緒に……寝た? 何度も?」


 ギリギリと肩に乗せられた手に力が込められ、オレの肩を万力のように締め付ける。


「あだだだだ! そこ! 誤解を招くような言い方をするんじゃない!」

「でも、事実ですわ……オヨヨヨ……シクシク……あんなに愛し合ったと言うのに……」

「愛し……合った?」


 肩への圧迫が強くなる。肩からミシミシと不気味な音が聞こえ始める。


「あだだだだ! だから誤解を招くなって! 一緒に寝たのは子供の頃じゃねぇか!」

「一緒のベッドに入って……あんなに激しく……///」

「寝相がな! ゴメンな寝相が悪くて!」

「でも、一緒のベッドで寝たんだ」


 ミシミシミシ……パキっ

 おぅふ……不吉な音が聞こえた気がする。


「アイツが入って来たんだよ!」

「バルス」


 パギョッ!

 ヒナタの静かな一言が聞こえた瞬間、オレの肩が砕け散った。


「ぎぃやぁぁぁああ! 肩が、肩がぁぁぁあああ!」


 何なんだよチクショォォオオ! オレが何をしたってんだよ。この間までのシリアスを返せよぉぉ!






 数分後、ぐったりと公園のベンチにもたれかかったオレは、改めてルルに問いかける。


「で、ルル。お前なんで日本にいるわけ?」

「それよりもカルマ様、こちらのブt……ゴホンッ、こちらの女性はどなたですか?」

「最初の間違いはなんだ」


 ルルがヒナタを指して聞いてくる。すると途端にヒナタの顔に勝ち誇ったような笑みが浮かぶ。


「こんにちは、私は朝霧日向。カルくんの恋人(・・)です」


 ヒナタは「恋人」というワードを強調して紹介をした。

 すると、ルルが怪訝そうな表情と声で聞き返す。


「恋人ですって?」

「はい」


 その質問に、ヒナタは満面の笑み(ただし、目は笑っていない)で返す。


「…………」

「…………」


 二人の間に閃光が走り、火花が散る。

 わぁー、空気が薄い。


「そう、恋人ですか。まぁカルマ様程の器量と甲斐性ある殿方でしたら、愛人や(めかけ)の一人や二人、持っていて当然ですわね」

「そうね、昔の女が押しかけて来ても養えるくらいだからね。でも迷惑よね」

「本当ですわ。正妻を前に、たかだか愛人が自己主張だなんて」

「忘れられたのに正妻と名乗る痛い女を養うなんて、カルくんがかわいそうとは思わないのかしら? 厚顔無恥ここに極まるわね」

「まったくですわ。恥曝しもいいところね」

「そうね、飛行機、墜ちればよかったのに」

「うふふふふ………」

「あはははは………」


 表面上はにこやかにウフフアハハと楽しげに談笑しているように見えるが、今この周辺の空気は非常に薄く、そして冷たい。動物の気配すらない。

 これ以上黙っていると、さらに悪化しそうなので、慎重に言葉を選び、熟考を重ねた後に口を開く。


「ま、まあ落ち着いて、二人とも。オレは………」

「カルマ様は少し黙って下さいな! この小娘を叩きのめしますわ!」

「カルくんは静かに! 今すぐこの女を三枚に下ろすから」


 あれー? 悪化した? なんで? オレ最後まで言ってないのに!


「だから落ち着けって!」


 べしっ、と頭に手刀を入れる。


「あべし!」

「ぶべら!」


 二人は頭を抑え、涙目でオレを見上げる。ちょっとかわいい。


「それで、日本に何の用だよ、ルル」

「あら、この制服姿を見てわかりません? 珍しく察しが悪いですわね」


 ルルはそう言ってくるりと回る。それにより、スカートがふわりと持ち上がり、彼女の白い太ももが一緒露わになる。

 ……………む、黒か。


「カルくん、見ちゃダメ」

「あだだだだ! 折れる! 木の枝のようにオレの首が折れる!」


 何とか首を解放してもらい、ルルの方に顔を向けると、そこには華のような笑みを浮かべた天使(ボマー)がいた。


「実はわたくし、この度、青桜学園へ編入することになりました」

「「え?」」

「ですから、わたくしはカルマ様の学友ですわ」

「「えぇぇえええ!」」



 本日爆弾、二発目。



 本当に騒がしくなりそうだ。




ボマー=Bomber=爆撃機and爆弾魔


言葉の爆弾魔ですね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ