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あの日交わした約束を  作者: フリムン
第一章 追憶
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Recollection:22 繋がる想い

なんだかなぁ、上手く文章が浮かんで来ない今日この頃。


それでも頑張りましたので、読んで下さい。



「カルマ、無事か!?」

「おうよ、当然」

「ヒナタ、大丈夫?」

「うん、なんとか」


 マルカと梶原がオレ達の方へ駆け寄り、遅れて松岡さんと佐伯も病室へ入って来る。

 オレは目の前にいる魔人に問いかけた。


「どうしてここが分かった? ストーカーか?」


 その問いに、魔人は苦笑気味に答える。


『いや、大したことじゃねえよ。ただ、〈覇拳〉の持ち帰った魔力の残滓をここから感じてな。とりあえず、って感じかな?』

「当てずっぽうかよ。もし違ったら………なんて、お前らにそれを言っても無駄か」

『ふむ、ならば正解と言うことかな?』

「残念ながら、正解だ」


 隠しても意味が無いので、素直に認める。


『そうか、では死んで貰おうか』


 すると奴は、いきなり攻撃を仕掛けてきた。

 少し灰色に違い白色の魔力玉が奴の周囲に発生し、こちらへ飛来する。


「「「魔人変躯(イーヴィル・トランス)!!!」」」

「「「神騎変躯(セイクリッド・トランス)!!!」」」


 オレ、マルカ、松岡さんが魔人の姿となり、ヒナタ、梶原、佐伯先輩が神騎の姿となる


『ここに一人で来た事が、お前の敗因だぜ!』


 飛来する魔力玉を打ち落とさんと前に出た瞬間、カクンと膝から力が抜ける。

 それを咄嗟に判断した佐伯先輩が双剣で払おうとする。だが、魔力が刃に触れた瞬間に、触れた部分の刃が消える。


範囲設定(サークル)! 【空間接続(エリア・コネクト)】!』


 松岡さんの声が響いたと思ったら、次の瞬間には中庭の上空。つまり、魔人の後ろに転移していた。


『うぐっ!』

「きゃっ!」

「うわっ!」

「おうっ!」

『スタっ!』

『いや、自分で言うなよ。て言うか痛えよ』


 ついいつものようにツッコんだ後、何が起きたのか理解する。


「一体、なにが……」

『僕の技ですよ。空間と空間を無理やり繋げる、僕の〈魂術〉』

「これが、魂術ですか」


 いち早く体制を立て直した二人が言葉を交わす。

 と、そこに先ほどの魔人が降りてくる。


「梶原さん、朝霧さん、いつもの陣形で。松岡さんは桐久保君の護衛を。桐久保君、君はまだ傷が塞がっていないんだ。ここは下がってくれ。」


 冷静に的確な指示を出した〈熾神騎〉は、双剣を構えて前を見据える。それに倣い、ヒナタが太刀を、梶原が双銃を構える。


『神騎二人に熾神騎一人。なかなかどうして、豪華じゃないか』


 クツクツと魔人は愉しそうに嗤う。そして名乗りを上げた。


『吾が名は〈消滅〉ルイン。

 全てを虚無へと誘う魔弾の担い手なり』


『さあ、名乗ってくれるのだろう?』

「すまないが、僕たち神騎にはそんな習慣は無いんだ」

『分かっている。お前らではない。俺が聞いているのは、そこの人魔二人だ』


 そう言って、こちらを指差す。


『俺は名乗った。であるならば、お前達も名乗るのが道理だろう?』

『………そうだな、仕方がない』


 仕方無く、オレと松岡さんも名乗りを上げる。


『吾が名は〈同胞喰らい〉カルマ。

魔を狩り、己が(つみ)を纏う者なり』


『吾が名は〈転移者〉アスカ。

 空を切り取り、繋ぎ、駆ける者なり』


 名乗りを聞くと同時に、魔人と神騎の戦闘が始まった。ルインは〈消滅〉の名に恥じぬ、消滅の魔力を放ち触れた物を消滅させるが、ヒナタや佐伯先輩はそれを躱し、梶原が撃ち落とす。


『くそ、オレも今すぐ……』

『行かせないよ、カルマ君。今君が行っても足手まといになるだけだ』

『くっ……っ! だけど、見てるだけなんて!』

『じゃあ彼らを信じるといいよ』

『信じる? ちゃんと信じてるさ!』

『それだけじゃ足りない。背中を預けるといい。君は今まで確かに独りで戦って来たのだろう?』

『あ、ああ』

『でももう独りじゃない。いつまで独りのつもりだい?』

『独りじゃない……んだな』

『ああ、だから信じて任せるんだ』


 ダメだな、オレは。いつも独りで在ることに慣れて、そのくせいつもウジウジグダグダ悩んで考えて。

 だけど、そんな臆病さはもう捨てた。皆が、仲間が出来たから。

 だから任せよう。仲間を信じて。


『任せたぜ、お前ら』


 そう呟くと、まるで力を使い果たしたかのように強烈な眠気が襲って来る。

 オレの声が聞こえたのか、ヒナタが振り向いて、オレをみた。マスクで隠れて顔は見えないが、何だか微笑んでいるような気がした。


――――任せて。


 それが声だったのか、幻聴だったのか判断出来ないまま、オレは眠りに着いた。




◆◆◆ヒナタ視点


『やはり、独断専行はダメだな。分が悪い』

「だからって、手加減はしませんよ!」

『気にするな。全力で逃げるだけだ』

「逃がすと思う? ぶち抜く!」


 ルインの言葉を聞いたサナちゃんが、銃弾を更に浴びせかける。

 だが、それを一顧だにせず、魔力を放出する。それは消滅の魔力。


『元々は様子見だ。まさかここまで分が悪いとは思わなかったが、致し方あるまい。頼むぞ、〈天翔空羅〉』

『貴様のワガママに付き合うだけ、時間の無駄だったな』


 空中から、翼を持つ魔人が降り立つ。どうやら、高みの見物をしていたらしい。

 彼はルインの体を抱え、飛び上がると、最後にこちらを見る。


『熾神騎、次会うときは我が貴様を殺す』

「その言葉、そっくりそのまま返すよ」

『フン』


 魔人は面白そうに笑い、夜闇の向こうへ消えていった。





 今、私の膝枕で、カルくんが眠っている。

 サナちゃんや佐伯先輩、松岡先生が病室を修復する間、私はカルくんの看病を任された。

 カルくんは今、松岡先生の睡眠薬でぐっすり眠っている。

 私は彼の頭を優しく撫でる。亜麻色で癖っ毛で、フワフワとした感触の彼の髪は、ずっと撫でていても飽きる事はない。

 寝顔を見つめる。安心したような穏やかな寝顔だ。彼の呟きは私に届いていた。

 嬉しかった。『任せた』というたったの一言がこの上なく嬉しかった。


「カルくん、アナタの背中は、私が守る。アナタの道に私は寄り添う。だから、アナタも、私を、守って?」


 静かにそう問いかけた。

 膝の上の彼が瞼を開き、私の目を捉える。


「ああ、守ってやる。だから、背中は任せたぜ」


 起き上がった彼は、私の隣に座る。

 お互いに沈黙し、何もしゃべらないが、それでも居心地は良かった。春の肌寒さも、二人で寄り添えば何てことは無かった。


 私は彼の肩に頭を預け、彼はその私に体をもたれかける。

 肩を合わせ、私たちは互いの体温を確かめあった。



◆◆◆カルマ視点


 ヒナタに呼ばれて、オレは目を覚ました。彼女は優しい瞳でオレを見ていた。

 約束を交わし、肩を合わせて暖かさを共有する。

 とても居心地のいい時間だ。


「ヒナタ……」

「なに?」

「ヒナタ」

「なぁに?」


 オレは無意識にヒナタの名を呼んだ。

 体をヒナタに向ける。目が合う。肩に手を置く。

 体が自然に動く。心臓は早鐘の如く鳴り響き、顔が熱くなる。ヒナタは潤んだ瞳でオレを見ている。上気した頬は朱に染まり、いつもより艶めかしく見えた。


「ずっと……ずっと一緒だからね、カルくん」


 それは昔、オレと交わして、果たされなかった約束。

 ポケットから青い石のペンダントを取り出し、彼女の首にかける。


「ああ、ずっと一緒だ、ヒナタ」


 どちらからともなく顔が近づく。

 そして―――――


 ―――――お互いの唇が触れ合う。

 最初は恐る恐る。徐々に優しく、想いを込めて。


 それは一瞬のようで、だけど永遠のようで。


 そんな永久(とわ)のような刹那の中で、オレは誓った。

 もう離れないと。もう離さないと。


 ずっと一緒にいよう。それは昔、果たされなかった約束。だけど、今は違う。

 だから、今度こそ果たそう―――――




―――――あの日交わした約束を―――――。




無理やりな戦闘と展開ですみません(平伏)


次回で一章は最後となります。


本日12時更新予定

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