Recollection:22 繋がる想い
なんだかなぁ、上手く文章が浮かんで来ない今日この頃。
それでも頑張りましたので、読んで下さい。
「カルマ、無事か!?」
「おうよ、当然」
「ヒナタ、大丈夫?」
「うん、なんとか」
マルカと梶原がオレ達の方へ駆け寄り、遅れて松岡さんと佐伯も病室へ入って来る。
オレは目の前にいる魔人に問いかけた。
「どうしてここが分かった? ストーカーか?」
その問いに、魔人は苦笑気味に答える。
『いや、大したことじゃねえよ。ただ、〈覇拳〉の持ち帰った魔力の残滓をここから感じてな。とりあえず、って感じかな?』
「当てずっぽうかよ。もし違ったら………なんて、お前らにそれを言っても無駄か」
『ふむ、ならば正解と言うことかな?』
「残念ながら、正解だ」
隠しても意味が無いので、素直に認める。
『そうか、では死んで貰おうか』
すると奴は、いきなり攻撃を仕掛けてきた。
少し灰色に違い白色の魔力玉が奴の周囲に発生し、こちらへ飛来する。
「「「魔人変躯!!!」」」
「「「神騎変躯!!!」」」
オレ、マルカ、松岡さんが魔人の姿となり、ヒナタ、梶原、佐伯先輩が神騎の姿となる
『ここに一人で来た事が、お前の敗因だぜ!』
飛来する魔力玉を打ち落とさんと前に出た瞬間、カクンと膝から力が抜ける。
それを咄嗟に判断した佐伯先輩が双剣で払おうとする。だが、魔力が刃に触れた瞬間に、触れた部分の刃が消える。
『範囲設定! 【空間接続】!』
松岡さんの声が響いたと思ったら、次の瞬間には中庭の上空。つまり、魔人の後ろに転移していた。
『うぐっ!』
「きゃっ!」
「うわっ!」
「おうっ!」
『スタっ!』
『いや、自分で言うなよ。て言うか痛えよ』
ついいつものようにツッコんだ後、何が起きたのか理解する。
「一体、なにが……」
『僕の技ですよ。空間と空間を無理やり繋げる、僕の〈魂術〉』
「これが、魂術ですか」
いち早く体制を立て直した二人が言葉を交わす。
と、そこに先ほどの魔人が降りてくる。
「梶原さん、朝霧さん、いつもの陣形で。松岡さんは桐久保君の護衛を。桐久保君、君はまだ傷が塞がっていないんだ。ここは下がってくれ。」
冷静に的確な指示を出した〈熾神騎〉は、双剣を構えて前を見据える。それに倣い、ヒナタが太刀を、梶原が双銃を構える。
『神騎二人に熾神騎一人。なかなかどうして、豪華じゃないか』
クツクツと魔人は愉しそうに嗤う。そして名乗りを上げた。
『吾が名は〈消滅〉ルイン。
全てを虚無へと誘う魔弾の担い手なり』
『さあ、名乗ってくれるのだろう?』
「すまないが、僕たち神騎にはそんな習慣は無いんだ」
『分かっている。お前らではない。俺が聞いているのは、そこの人魔二人だ』
そう言って、こちらを指差す。
『俺は名乗った。であるならば、お前達も名乗るのが道理だろう?』
『………そうだな、仕方がない』
仕方無く、オレと松岡さんも名乗りを上げる。
『吾が名は〈同胞喰らい〉カルマ。
魔を狩り、己が業を纏う者なり』
『吾が名は〈転移者〉アスカ。
空を切り取り、繋ぎ、駆ける者なり』
名乗りを聞くと同時に、魔人と神騎の戦闘が始まった。ルインは〈消滅〉の名に恥じぬ、消滅の魔力を放ち触れた物を消滅させるが、ヒナタや佐伯先輩はそれを躱し、梶原が撃ち落とす。
『くそ、オレも今すぐ……』
『行かせないよ、カルマ君。今君が行っても足手まといになるだけだ』
『くっ……っ! だけど、見てるだけなんて!』
『じゃあ彼らを信じるといいよ』
『信じる? ちゃんと信じてるさ!』
『それだけじゃ足りない。背中を預けるといい。君は今まで確かに独りで戦って来たのだろう?』
『あ、ああ』
『でももう独りじゃない。いつまで独りのつもりだい?』
『独りじゃない……んだな』
『ああ、だから信じて任せるんだ』
ダメだな、オレは。いつも独りで在ることに慣れて、そのくせいつもウジウジグダグダ悩んで考えて。
だけど、そんな臆病さはもう捨てた。皆が、仲間が出来たから。
だから任せよう。仲間を信じて。
『任せたぜ、お前ら』
そう呟くと、まるで力を使い果たしたかのように強烈な眠気が襲って来る。
オレの声が聞こえたのか、ヒナタが振り向いて、オレをみた。マスクで隠れて顔は見えないが、何だか微笑んでいるような気がした。
――――任せて。
それが声だったのか、幻聴だったのか判断出来ないまま、オレは眠りに着いた。
◆◆◆ヒナタ視点
『やはり、独断専行はダメだな。分が悪い』
「だからって、手加減はしませんよ!」
『気にするな。全力で逃げるだけだ』
「逃がすと思う? ぶち抜く!」
ルインの言葉を聞いたサナちゃんが、銃弾を更に浴びせかける。
だが、それを一顧だにせず、魔力を放出する。それは消滅の魔力。
『元々は様子見だ。まさかここまで分が悪いとは思わなかったが、致し方あるまい。頼むぞ、〈天翔空羅〉』
『貴様のワガママに付き合うだけ、時間の無駄だったな』
空中から、翼を持つ魔人が降り立つ。どうやら、高みの見物をしていたらしい。
彼はルインの体を抱え、飛び上がると、最後にこちらを見る。
『熾神騎、次会うときは我が貴様を殺す』
「その言葉、そっくりそのまま返すよ」
『フン』
魔人は面白そうに笑い、夜闇の向こうへ消えていった。
今、私の膝枕で、カルくんが眠っている。
サナちゃんや佐伯先輩、松岡先生が病室を修復する間、私はカルくんの看病を任された。
カルくんは今、松岡先生の睡眠薬でぐっすり眠っている。
私は彼の頭を優しく撫でる。亜麻色で癖っ毛で、フワフワとした感触の彼の髪は、ずっと撫でていても飽きる事はない。
寝顔を見つめる。安心したような穏やかな寝顔だ。彼の呟きは私に届いていた。
嬉しかった。『任せた』というたったの一言がこの上なく嬉しかった。
「カルくん、アナタの背中は、私が守る。アナタの道に私は寄り添う。だから、アナタも、私を、守って?」
静かにそう問いかけた。
膝の上の彼が瞼を開き、私の目を捉える。
「ああ、守ってやる。だから、背中は任せたぜ」
起き上がった彼は、私の隣に座る。
お互いに沈黙し、何もしゃべらないが、それでも居心地は良かった。春の肌寒さも、二人で寄り添えば何てことは無かった。
私は彼の肩に頭を預け、彼はその私に体をもたれかける。
肩を合わせ、私たちは互いの体温を確かめあった。
◆◆◆カルマ視点
ヒナタに呼ばれて、オレは目を覚ました。彼女は優しい瞳でオレを見ていた。
約束を交わし、肩を合わせて暖かさを共有する。
とても居心地のいい時間だ。
「ヒナタ……」
「なに?」
「ヒナタ」
「なぁに?」
オレは無意識にヒナタの名を呼んだ。
体をヒナタに向ける。目が合う。肩に手を置く。
体が自然に動く。心臓は早鐘の如く鳴り響き、顔が熱くなる。ヒナタは潤んだ瞳でオレを見ている。上気した頬は朱に染まり、いつもより艶めかしく見えた。
「ずっと……ずっと一緒だからね、カルくん」
それは昔、オレと交わして、果たされなかった約束。
ポケットから青い石のペンダントを取り出し、彼女の首にかける。
「ああ、ずっと一緒だ、ヒナタ」
どちらからともなく顔が近づく。
そして―――――
―――――お互いの唇が触れ合う。
最初は恐る恐る。徐々に優しく、想いを込めて。
それは一瞬のようで、だけど永遠のようで。
そんな永久のような刹那の中で、オレは誓った。
もう離れないと。もう離さないと。
ずっと一緒にいよう。それは昔、果たされなかった約束。だけど、今は違う。
だから、今度こそ果たそう―――――
―――――あの日交わした約束を―――――。
無理やりな戦闘と展開ですみません(平伏)
次回で一章は最後となります。
本日12時更新予定




