Recllection:10 狩魔VS魔人
おかしいな、バトルメインで書こうとしたのに、何で説明がメインになっているのだろうか?
「うにゅる…」
「んあ…?」
前にどこかで聞いたことのあるようなマルカの寝言で、オレは目を覚ました。
「何故にマルカはオレをベッド代わりにしているんだ」
マルカを落とすように立ち上がり、周囲を見回す。そして、冷静に状況を整理し、理解しようとする。
「オレはまず、寝ていなかった。それなのに、気づけば寝ていた。それはあまりに不自然だが、恐らく今現在、起きているのはオレと、下にいる神騎、魔人だけ何だろうな」
そう、下の方、つまりグラウンドでは魔人と神騎がなにやら話し合っていた。
「下にこの間の二人がいることはほっといて、これはつまり、『人間』は眠り、神騎と魔人が起きている。オレは魔人化しない限り半分以上が人間で、マルカはほぼ完全な魔人。ということは……」
オレは床に落として尚、ぐっすりと寝ているように見えるマルカに近づき、手刀を繰り出す。
「起きろアホゥ!」
「ひでぶっ!」
ゴス! という鈍い音が響き、マルカの悲鳴が上がる。
「何をする!」
「てめぇ、ちゃんと『言霊』を防がなかったな!」
『言霊』とは、魔人や神騎の使う、力の籠もった言葉の力。『言霊』に攻撃力など、直接戦闘へ影響を及ぼす力は無いが、結界や、無関係な人間を巻き込まぬよう、今回のように眠らせる事ができる。
ちなみに、この間ヒナタがオレにやったのも、言霊だ。
「アホか!そもそもお前自身が言霊苦手だろうが!」
「お前、オレの魔人部分だろうが!気合いで何とかしやがれ!」
「できるかぁ!」
確かにオレは言霊が苦手で、マルカにも期待していなかった。だが、今オレはそれよりも気になる事がある。
「じゃあ何でお前まで寝てんだよ」
「………」
「ヲイ」
「…ついうっかり?」
「何で疑問形?」
「……テへ」
「可愛くないから止めろ」
……嗚呼、オレの愛しい妹様は、どうにも救いがたいアホの子のようだ。
「で? どうするのだ、カルマ? 介入するのか? このまま放っておくという選択肢も………聞くだけ無駄か」
「わかってるね、さすがマルカだ」
「仕方が……ってオイコラちょっとまて!」
「んだよ?」
「このまま行くのか」
「当然」
そう言って、オレはマルカの首根っこを掴む。
「よっしゃ! 行くぜマルカぁ!」
「ああ! だがせめて首から手を離せ!」
屋上の鉄柵に足をかけて勢いよく飛ぶ。
「「魔人変躯!」」
オレとマルカの体を光が包み込む。
『目標は赤魔人だ!』
『やけにテンションが高いな、カルマ』
そしてオレは、すっかり油断し、がら空きになった赤魔人の頭部へ踵を振り上げた。
結論から言おう。
奇襲は失敗した。
『もらっ―――たんがふ!』
確実に会心の一撃だった踵落としは、横合いからの強い衝撃で中断させられた。
『誰だ!?』
『俺だ!!』
質問に対し、即答したのは、やけに体格のいい黒い魔人だった。
ていうか、みんなの視線がオレに集中してやがる。
「君は確か」
「あの時の!」
「アナタが〈同胞喰らい〉ですか?」
『ようやく会えたな、〈同胞喰らい〉よ』
『〈覇拳〉と似ているな』
『黒が赤黒くなっただけだねぇ〜』
ええい、いっぺんに喋るんじゃねぇ!
『ああそうだよオレだよ!』
少々ヤケクソ気味に言ってみれば、魔人四人が一斉に襲ってくるという、熱烈歓迎サプライズが行われてしまった。
『え、ちょ、まっ……わー! それ反則ー! タイム、ターイム!』
『問答無用』
『熱、あっつ! 無用にしないで! ていうか問答らしいこと一つしかしてない! 熱いから火は止めて!』
赤魔人の火から逃げつつ、他の魔人の攻撃にも警戒をしてみるが、一向に攻撃の気配がない。
『アイツ、熱いて言ってる割には、無傷そうだね』
『そいつぁすげぇ。確かにさっき、わき腹にキメたんだが、てんで効いて無かったぜ』
『頑丈な奴だ』
三人は何やら話し合っているようで、こちらに攻撃をして来る気配は無い。
『フン、あの〈抉りし鬼〉が瞬殺されるだけの事はあるな』
『そうかい?』
『故に、我は貴様と戦おう』
『いやいやいや、話が繋がってねーよ!? いやまぁ別にいいけどさ』
互いに距離を取る。
すると、他の魔人達は不用意にオレ達の名を聞かぬよう、神騎達へ襲いかかる。
魔人には、〈称号〉と『名前』がある。〈称号〉なら、いくら聞かれ、名乗ろうとも問題ないが、『名前』は魔人にとって魂の本質であり、オレら人魔にとっては、人間の証。
『名前』を知られるということは、相手に生殺与奪権を与える事。だから、互いに名乗りあえば、互いが互いの命を奪い合うということを了承したということだ。
殺さぬ相手の名は聞かない。それが魔人達の不文律であり、神騎には無い習慣だ。
まぁ、オレの場合、名前を神騎達に(特にヒナタに)知られると、厄介な事になるので、魔人達の行動はかなり助かる。
『吾が名は〈火喰い〉フレア。火を喰らい、火を操り纏う者なり』
『吾が名は〈同胞喰らい〉カルマ。魔を狩り、己が業を纏う者なり』
互いに名乗り終えた時には、すでに他魔人と神騎達は戦っていた。
『へっ、お互い喰って纏う者同士、頑張ろうぜ』
『ふん、断る』
その会話を最後に、周囲は炎に囲われオレは走り出した。
『燃えろ!』
フレアの手が閃き、極太の炎が襲い来る。
『ふん!』
避けきれないと判断し、両手を前に突き出し、受け止める。
『炎の剣よ!』
剣の形を作り、硬質化された圧縮熱の剣が横から突き出される。
『こなくそ!』
身を捩り、何とか躱すも、止めていた炎が直撃する。
『どうした、〈同胞喰らい〉。防戦一方じゃないか』
『るせーな、判ってるよ』
『爆ぜろ』
周りの空気が爆発する。その爆炎を突き抜け、フレアの方へ詰め寄るが、フレアは陽炎のように消える。
炎の威力は大したこと無いが、精神的にキツい。
正直、物凄くやりづらい―――
『どこだ!』
『ふははは、ここだ』
『ここか!』
『あべし!』
――なんて事はなく、既に戦法と特徴、弱点を見破った今、大した脅威ですらない。
戦法は、爆発や砂埃、陽炎での目眩ましと撹乱。
特徴は、爆発する瞬間や燃える瞬間、言霊で酸素を集めていること。
弱点は、急速に酸素を集める為、こんな炎の中でも空気の流れがわかる事。そして、フレアの手許と、発火地点に酸素が集まる事だ。
て言っても、気付いたのはマルカだけど。
『発火地点は足下、奴は右斜め後ろだ!』
『了解!』
オレが飛び退いた瞬間、その場所から火柱が上がる。
『セイ!』
『がっ!』
回し蹴りがフレアの首を捉え、吹き飛ばす。
『何故、我の居場所がバレる!?』
『隙あり!』
拳が、無防備なフレアの顔面を捉え、体ごと吹き飛ばす。
ここからが、オレの番だ。
払い、走り、肉迫し、殴る。
躱し、跳び、接近し、蹴る。
オレの流れに飲まれてしまったフレアは、何もできず、ただ攻撃され続ける。
甲殻が割れ、紅い血が流れ、腕が折れる。だがオレがまだ殴るのは、彼が致命傷を紙一重で躱すからだ。
ズン! 鈍い音と共に、オレの膝がフレアの腹に突き刺さり、彼は口から血を吐く。
『ぐふ! がっ…こ…の……、な……めるなぁ!』
フレアの躯から、先程までとは段違いの熱を持った青白い炎が溢れ出し、その炎は容赦なく地面を焦がし、フレアの躯を灼く。
『【超臨界発火】!』
『なっ!? 名前付き? 魂術か!?』
魂術。魔人や神騎の使う能力とは違う、魂に刻まれし業。
代表するならば、オレの【冥道開通】がそれに当たる。
『否!これは我が作り上げし、我が身、我が魔力を炎に焼べ、万物を灼く炎を作り纏う自作技術だ!』
『それはまた、代償の大きな力だな』
フレアは手をかざす。
『【超炎】』
莫大な青白い炎熱がオレを襲う。
『くっ!』
紙一重で躱すものの、その炎が掠ったオレ甲殻は、一瞬にして灰になる。
『まずいな、カルマ』
『ああ、これは迂闊に近づけねぇ』
『だが、奴の自壊を待つという選択肢は無いのだろう?』
『それがオレだからな。応えてやろう、アイツに』
魂術を少し発動する。
オレは魂を削り、魄で繋いだ冥界の力を纏う。
フレアの超臨界発火による炎は、今も奴の身を灼き、オレに襲い来る。
一触全焼瞬灰の熱量を持つその炎を、何とか避けながら、フレアをオレの射程圏へ入れるため、近づいていく。
『超炎に灼かれ、魂の髄まで灰燼となれぇ!』
『輪廻の回廊へ誘われろ!』
『【超臨界溶岩】!』
『【冥道開通】!』
フレアの放つ、巨大な溶岩の奔流は、まるで龍のように迫りくる。
それを真正面から、冥道の穴が飲み込む。穴の持つ吸引力は、全ての力を使い切り、疲れ果てたフレアを引き寄せる。
『じゃあな、フレア』
『……………さらばだ、カルマよ』
冥道へ吸い込まれたフレアは、甲殻の色を失い、やがて光の塵となって消え去った。そして彼がいた場所には、青く輝く光の球が浮いていた。
その光の球こそが、魂。
『いただくぜ』
『ああ』
左胸が紅く輝き、左腕で魂に触れれば、魂はすぐにオレの体へ吸い込まれ、オレの魔力となってゆく。
魔人は人間の魂を食べる。
人魔は幽霊の魂を食べる。
オレは魔人の魂を食べる。
それが、オレが〈同胞喰らい〉と呼ばれる所以だ。
さあ、次は誰が相手だ?
次回もバトル予定です。ていうか、あと三回バトルします。
カルくんは後一回ですけど。
頑張ってバトルを書いちゃいます!
次回は12/28 6時予定です




