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革命家とテロリストと 4

「いいかげん、機嫌直せよ」


 シャワールームから出てきた後、少女は険しい顔のまま、窓の外を見続けている。


「……アランのことは、もういいわ」

「え?」


 少女の語り口は唐突で、あやうく、聞き逃すところだった。


「アランなら大丈夫よ。そんな気がする」

「……そうか」


 少女は穏やかな表情で、はっきりと告げる。その様子にやけになった感じはなく、青年も胸をなでおろす。

 少女がどうして急に考えを変えたのかはわからないが、青年にとって、これ以上その議題を引っ張らずに済むことはありがたかった。


「そのかわり……」

「?」


 窓から眺めることができる、茜色に染まる小さな空から少女は目を外し、青年をまっすぐと見つめる。この少女が静かに物事を語る時、知ってか知らずか、雰囲気が子供のそれではなくなる。凛とした空気に包まれながら、青年は思わず背筋を伸ばした。

 少女はその様子に、余裕の感じられる小さな笑みを浮かべる。この場の空気を自覚して作りだしているとするなら、この少女が末恐ろしい、と青年は思った。


「そのかわり、私たちが危険な状況に陥っている気がするの」


 青年には、少女の言葉の意味が分からなかった。


「警察のみならず、軍隊にも追われてる奴より危険な状況って、どんだけだよ」

「……少なくとも、アランたちを追いかけているのは人間だわ」

「どういう意味だよ」


 少女は切羽詰まった感じだ。


「じゃあ何か? ターミネーターよろしくロボット軍勢が襲ってくるってか? 冗談きついぜ。親友のピンチに頭やられちまったんじゃないのか?」

「迫ってきているのは、現代の技術で作れるロボットより、よほど高性能よ」


 少女の言い分は正直、支離滅裂すぎて意味不明だ。

 しかし、いつになく、少女は真剣そのもの。気が触れたという風にも見えない。


「……何が向かってきてる?」

「バルク。水も食料もない砂漠でも、三ヵ月は戦いぬける戦士」

「なんだそりゃ。革命の時には、そんなんいなかったぞ」

「アーカルで造られるバイオロイドは、軍が管理しているの。革命の時、軍は不干渉を表明していたから、実戦投入されることはなかったわ」

「バイオロイド? それって人造人間のことだよな」

「ええ……って、あまり驚かないのね。もはやSFの世界の話よ? もう少しリアクションが欲しいところなんだけれど……」


 確かに青年の反応は冷静だ。


「あー……化け物の相手なら何回かしてきた。兵器の技術は日進月歩だからな。今さら何が出てきても驚かねぇよ」


 青年はなんの気なしに言う。青年には、絶対に殺されはしないという自信があるのだろう。

 気楽な青年とは対照的に、少女の顔色は深刻そうだった。


「そう。じゃあ、こんなこと言ってもまだ、私のこと守ってくれる?」

「あ?」

「あなた、今度の戦いで死ぬわよ」


 少女の唐突な予言。

 今回ばかりは青年も笑い飛ばすこともできなかった。


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