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第6話 フラグにご注意


おはよう異世界。

本日冒険4日目。いや5日目か?そろそろあやふやになってきたな。

元々時間感覚はルーズな方なのであまり気にしていない。

約束の時間はちゃんと守ってたぞ、念のため。他のヤツラが皆遅れるときは適当だったが。


昨日は疲れてたのか食事後すぐに寝てしまった。

地球にいたころだと太りそうなもんだが今だと痩せすぎが心配なほどだ。

ステータスが強化されてるようなので体調を保てているのだろう。魔神にちょっと感謝かな。


今日は少しゆっくりしていこう、ということでのんびり朝食を摂りつつポイントの配分について考えた。

生産をとるにはまだ早い。せめて草原で安定して狩れる程度には必要だ。

それよりレベルアップを隠す方法について早くも検討しなければならない時期がきている。

他の街に行く場合ギルドの証明書が必要になるが、その際必ず鑑定される。

このままだと俺のレベルアップ速度が異常と思われるのも遠くない。

俺の場合敵が強くなればなるほどレベルアップが速くなるからだ。

今はレベルが低いから不思議に思われてもいないだろうが……


そうなると何らかの形で誤魔化すスキルが必要になる。

方向としては鑑定を妨害するかステータスそのものを偽装するか。

魔力パターンを弄られるなら変装とあわせて別人に成りすませるが…

DNAみたいなものだったら難しいかもしれない。実験しようがないしな。

リスクを考えるとステータス偽装が一番無難か。

他人のステータスを確認するのは鑑定だと思うが、さて検索するとどうなるやら。


―――と思ったら一発でヒットした。

ステータス偽装:必要ポイント5

これは買いだな。レベルと能力さえ偽装できればいい。ポイント低いし一種の魔法みたいな扱いだろうか。


効果は後で確認するとして残り6ポイント。

これからを考えると遠距離攻撃は確保したい。

接近戦は防具に金をかける余裕が無い。

探知と遠見で敵より先に発見、ヒット&アウェイ戦法が今のところよさそうだ。

かばうがあるから前衛向きなんだろうけれど、PTメンバーいないし。


そうなると敏捷をもう少し強化。あとは魔法か弓か……だな。

弓だと矢代が心配か。魔法だと火を強化するか、風を覚えてみるか、土で足止め狙ってみるかあたり。

水はどうも攻撃という印象がない。防御系の魔法じゃないかと推測してみる。

ここは火を強化してみるか。2+1で3ポイント消費、残り3を敏捷に注ぎ込もう。




部屋に戻ってポイントを振りステータスはこうなった。


名前:アツシ・チェスター

性別:男  種族:人間 年齢:17歳

レベル:2 NEXT:290/500

職業:当たり屋LV1 

控え職業:斥候LV1


HP:120/120→131

MP:53/53→54


装備: 武器/ナイフ  防具/布の服  装飾:皮のベルト


筋力:15

敏捷:25→40

器用:15

魔力:16→17

精神:16→17

頑丈:30

知力:15

集中:15

魅力:16

幸運:25


所持金:215Y

ポイント:0


所持スキル:気配探知LV4 遠見LV2 方向感覚LV1 格闘LV1 治癒魔法LV1 火魔法LV1→2 水魔法LV1 かばうLV1 ツッコミLV5


所持魔法:ヒール ファイア ファイアボール ウォータ


特殊能力:LVUP必要経験値固定(3ケタ) 獲得スキルポイント上昇(大) 上限撤廃 病気無効 自動翻訳 ステータス偽装


アイテムボックス:アナビットの皮×25 アナビットの肉×25 ホーミ草×2 ドーク草×2






敏捷と頑丈を上げてるので防御特化、という感じだな。

生存優先なので間違ってもいない。これならブルーウルフの群れにあっても逃げられるかもしれない。

敏捷は伸びすぎを疑われそうなのでステータス偽装しておこう。

どう使うんだこれ。ステータス画面で偽装と念じれば……おっ、いけた。

うん、名前も含めて全て弄れそうだ。やり方は項目をタッチするだけ。

慣れれば意識でもできるかな。咄嗟にできないと意味が薄い。



ひとまずポイント振る前の状態にして部屋を出る。

宿をでてそのまま門の外に。人がいない場所まで歩くと、力をこめて走ってみた。

……体が軽い!オイオイこんだけ走れりゃボルトも抜けるんじゃないの。

そう思えるほど別世界だった。15の差でここまでか。次全部敏捷に振ったらどうなるんだ?

浮かれて全力疾走してしまった。周りのことなんて忘れて。


―――もちろん、盛大なフラグだった。



気付いた時にはブルーウルフが見えていた。遠見なんて使っていない。

慌てて探知すると、俺の前方に気配が6つ。

群れのど真ん中に飛び込む寸前だったらしい。

くそ、俺の大馬鹿野郎!!


不幸中の幸いか、勢いよく走ってきた俺を警戒してブルーウルフ達の動きは止まっている。

問題は俺の状態。全力で走ったため息が切れている。

いくら敏捷高めててもこれで逃げ切れるとは思えない。

飛んで火にいるバカ冒険者。悔やんでも遅すぎた。


とにかく息を整えるまで時間を稼ぐしかない。

向こうが距離をとってくれている今がチャンス。

俺の手段は覚えたばかりのファイアボール、それだけだ。

せめて消費MPだけは確認しておけばよかった。ああ、本当にバカ。


ひっきりなしに襲う後悔の念を黙らせるように、掌を向けて大きく叫ぶ。


「ファイアボール!!」


目標は正面の一頭。位置的にリーダーぽい。

ステータス画面を一瞬だけみて消費MPを確認する。

消費は6、だった。ヤバい。予想以上に大きい。


速度は思ったよりいい。が、警戒していた狼は跳躍して避けた。

着地点で弾ける火球。俺の腰まで炎が吹きあがる威力。

直撃させれば恐らく倒せる。


落ち着け、俺。ここで死んだら何の為にあの子を見捨てたかわからねぇ。

気配を探る。今の攻撃を受けてか、狼達はゆっくりと動き出していた。

俺を囲むように左右へ広がっている。

この距離から今撃ってもかわされるだけだろう。

現在MPは48、消費6なら残り8発。0になったらどうなるか判らないので実質7発。


カウンターしかない。先の動きを見るに真横への跳躍は無理だろう。

鋭角30度前後が限界か。背後からか正面から撃てば可能性は上がるはず。

狙うなら大きく跳んだ後か、避けられない距離で撃つ。

挟撃されると厳しい、ならば―――



この状況なのに俺は何故か落ち着きを取り戻しはじめていた。

自分の荒れる呼吸音が聞こえる。早鐘を打つ心臓も自覚できる。

理由を知るのはずっと後の話。この時知る由もない。



狼達の包囲が完成する。それは攻撃の合図ともなった。


「GAAAAA!!」


正面の一頭が雄たけびを上げると同時に周囲の気配が一斉に近づいてくる。

俺は右前方の1頭へこちらから駆け寄った。

交錯まで1秒あるかないか、そんな間合い。


近寄る1頭と視線があう。瞳がギラギラと猛っていた。

その牙は俺の喉笛を、肩を、脇を、容易く食い破るだろう。

俺が倒れれば骸は食い尽くされ骨を野に晒すばかりとなろう。


それは、御免蒙る。


俺は走りながら大きく開かれた口へ右手を差し出した。

自ら捧げるように。


「ファイア、ボール」


自分でも驚くほど静かな言葉。

同時に火球が放たれ―――



不幸な1頭の喉を、気管と肺と口腔とを焼き尽くした。




火達磨となった狼を避けるように転がりすぐに態勢を立て直す。

視線を向けなくとも狼達の動きは判っていた。

俺を追っていたが突然燃え盛った仲間に怯んで距離をとっている。

奴等から見れば突然火の玉が正面に現れたようなものだ。

よく避けた、と言うべきだろう。

俺の敏捷が高かったおかげで追撃を受ける程近づけさせなかったのも幸いした。



――狼の瞬発力を今の俺は上回っている。



逃げるほどまだ体力は回復していない。

胸の上下は激しく収まりそうにない。

ならば、戦うしかあるまい。


戦士じゃない俺に相手の飛ぶ瞬間を見切ることは無理だろう。

先ほどのは偶然。神様が、或いは魔神が微笑んでくれただけ。

紙一重で俺の手が食い千切られていたはず。幸運25の効果といったところか。


次はそれに期待できない。

俺はゆっくりと左手で腰からナイフを引き抜いた。

そろそろ格闘LV1にも役立ってもらう時が来たようだ。


狼達が再び俺の周囲を囲もうとする。まだ戦意は衰えないらしい。



ああ、いいだろう。互いの尊厳を、命を賭けたバトルといこうじゃないか。


右脇を締め力強く踏み出そうとしたその時。









「あぁぁぁぁぁっ、避けてくださぁぁぁぁぁ」








「えっ?」



場違い極まりない素っ頓狂な声。


振り返るとそこには―――



眼前に迫った巨大ハンマーがあった。


「どえぇぇぇぇっっ?!!」







 7話につづく

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