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プロローグ [改]

 初投稿になります。SS経験は多少ありますが初心者です。文章を書くことに慣れるための作品ですので至らない点も多数あると思いますが、大目に見ていただければ幸いです。

2016/1/31 更新

青い空。白い雲。


街路樹の上では鳶(とんび)の番(つがい)が踊り輪を描く。


ごく普通の穏やかな空の景色。


―――そう、光る少女が浮かんでいなければ。



「あとはアレだけなのですけどなかなか……あっ、アレいけそうです!」



小さな呟きと共に鳶の上まで急降下。

何やら騒がしい地上を無視して手を伸ばす。

その先には何も無い。…はずだが、少女が掴んだ途端うっすらと光る球体が現れた。


「無事ゲットしたからにはとんずらスタコラサッサなのです、ふふふ」



言葉を残し姿を消す少女。

見上げればさぞ驚かれただろう光景にも気付いた者はいない。


何故なら人々の目は地上に注がれていたから。



悲惨な事故現場。

昼下がり、居眠り運転の車が赤信号の交差点へノーブレーキで突っ込んだのだ。

危うく難を逃れた者は後にインタビューでこう答えている。


「男性が小学生くらいの女の子を庇って身代わりに……」

「あの子を突き飛ばした後、避けようがなかったんだろうねぇ」


重体2名、重傷3名、他負傷者含め14名の大事故。

正面から跳ねられた2名のうち1名は奇跡的に助かるものの、

女の子を庇った青年は搬送先の病院で心配停止が確認されることになる。

彼の名は新田淳史。享年19歳であった。




  ◆ ◆ ◆





「ということなので貴方は無事に死亡確認なのです、おめでとうございます~!」


「ああ、ありがとな…って違うだろう!!」


ここは天界。――かどうかは判らない。

見渡す限り白っぽい色、地面らしきものはこれまた白くてちょっぴり柔らかい。

どう見ても地球っぽくない。少なくとも自分の知る限りでは。

目の前にいる女…いや少女?は金髪に蒼い眼、と有り得ん話ではないが。

でも羽根と頭の上の輪っかはないよな。コスプレだったら凄いクオリティだ。


「ええっ、今から面白い世界に連れていって差し上げるのですからいいじゃないですかぁっ」


俺は頭を抱える。…いや、足どころか手もないのでつもりだけどな。

様式美って大事だよね、うん。


「はぁ……とりあえずだ。俺が死んだのは理解した。なんとなく覚えてるしな。」


そう、俺は死んだ。大学で午前の講義を終え、バイトまでの時間を潰そうとぶらり歩いている時だった。

歩行者信号が青になりぼーっと歩き出した時、ふと横を見れば――車が突っ込んできていた。

えっと再び視線を前に戻すと青信号が見えた。うん、青だ。

女性らしき悲鳴が聞こえる。視界の隅で車は俺へと真っ直ぐ突っ込んでる。

いや、正確にはやや後ろだ。振り返ると棒立ちしている女の子が見えた。

このままだとあの子死ぬな。――そう思ったら身体が動いていた。

理由なんか判らない。とにかくダッシュして女の子を突き飛ばす。

最後にもう一度横を見たら運転手が見えた。ハンドルに額をつけてやがる。

ちくしょう、ぶん殴ってやる。顔は忘れんぞ、と思うがつむじしか見えねぇよ!

そんな馬鹿なことを思えるくらい、やけにゆっくりだった。




それが俺の最後の記憶。痛みを感じる間も無かったらしい。

気がついたらこんなところにいた。で、話は戻る。


「死んだって解って頂けたら話は簡単じゃないですか。ほら、楽しい第二の人生が待ってますよー!」


「いやせめて余韻に浸らせろよ?!」


思わずツッコミをいれてしまったが違う、そうじゃない。

大体第二の人生ってなんだ。


「だって早く済ませないと見つかるかもしれないじゃないですかぁ……」


「見つかるって何だよ!魂管理してんならえらい神様じゃないのかよ!」


ちくしょうツッコミが追いつかねぇ。

せめてハリセンでもあればノータイムでいけるのに。


などと思いつつ、拉致があかないので何とか落ち着いて話を聞き出した。

結果、こんな感じらしい。


・こいつ(少女)は創られホヤホヤの神様見習い。

・この度「自分の世界を作ってこい」という命令がきた。

・思いつかなくて迷ってたところ、地球で面白そうなのを見つけて参考にした。

・ついでにサンプルが欲しかったので適当に見つけた魂捕まえてきた。

・ここ地球の近くにいつまでも居るとバレやすいので早く移動したい。



……うん、つっこみどころしかない。

聞いてたら参考どころか日本のとあるネトゲの設定マルパクリじゃねぇか!

しかも異世界トリップの小説読んでたらしくて魂の拉致だよ。

その上地球を担当している神様から許可もらってないらしい。

見つかったら数百年の謹慎とか何考えてんだこいつは。


で、このロクデナシ神様見習いはこう聞いてきた。


「このまま死んじゃってやり残したことないんです?チャンスなんですよぉ?」



俺は即答してやる。


「モテたい!!!是非頼む!!」




いやね、よく考えたら俺の人生女っ気皆無なんだよな。

小学生の頃なんてアホガキで色気のイの字も無かったし。

ちょいと小学生でやらかしたから心配した両親が中高一貫の学校へ送ってくれたのはいいんだが。そこが中高一貫男子校だった、というね。判るだろ?

そりゃ気楽だったけど灰色も灰色のいいとこだ。リアル妹は数に入らないからな。で、僅かな望みを託して大学受験。進んだ先は……工学部機械科。

もちろん女の子はいたさ。学部180人中3人な。東大より倍率たけぇぞ。オイ。女慣れしなくてチキンな俺はサークルも男っぽいサッカー同好会。

マネージャー?都市伝説ですよそんなものは。強豪チームなら別なんだろうけどな。バイト先も焼肉屋の厨房で来る女性といえばオバ……いやマダムのパートばかり。流石に30歳年上の人妻には手出せんよね。せめて10歳差なら…ぐぬぬ。

当然年齢=彼女いない歴ですよ。童貞かどうか?言わせんじゃねぇバカ。

俺の人生終わる時になって女の子触ったというか突き飛ばしただけじゃ死ぬに死ねん。よくよく振り返ればだ、突き飛ばさなくて抱きかかえて飛んでれば助かった気もするんだ。

まあ、チキンで煩悩まみれの俺には気がひけたんだろうな。

ちなみにロリコン属性はない。ペドでもねぇ。大事なことなのでというヤツだ。




ということで、だ。死んだ以上これは心新たにしてモテフラグ構築するチャンスだと思うんだ。

悲しんでくれているだろう両親妹友人連中には悪いが心を鬼にして叫ばせて貰おう。


「俺はモテたい!!!心の底より!!」


「ハイハイ、一回言えば判りますよぅ。それじゃサッサと契約しちゃいましょう。タイムズイズマネーなのです。」


なんだか違う気がしたがスルーしよう。英語苦手なんだよ。

こいつ捕まってチャンス失うのもなんだしな。


「契約、か。当然色々チートな能力つけてくれるんだろな?」


「へっへっへ、そりゃぁ勿論ですともお代官様。お好みのブツたぁんと用意してます、ハイ」


「そうかそうか。ふふふ、そちもワルよのぅ……!」


「お代官様には叶いませんとも、ぐふふふふ」



なんともノリのいいヤツである。名前聞いてなかったけどエチゴヤで決まりだ。


「よしよし。どんなものがあるのじゃ、ホレ見せてみぃ」


「ぬふふ。こちらのめにゅーから幾つか選んでくださいまし。るーるぶっくもサービスです!」


「幾つかにもよるのぅ。具体的には何個いけるのじゃ」


「普通は1個デスがお代官様は女の子助けたことで結構な徳が溜まりましたから3つはいけそうですとも、ハイ」


やっててよかった人助け。

悪代官で徳ってものなんだがまあいい。どれどれ。コスト式か。

パクっただけあって異世界転生ものでお馴染みのスキルが多いな。

世界設定は…確かレベルアップ時にスキルポイント獲得、それをスキルに割り振るタイプだっけ。

能力値は行動や職業に応じて上昇する感じ。スキルポイント1で能力値5に変換できるようだ。

不死身スキルはないか、残念。そうなると戦闘怖いし生産チート目指すかな。

権力者にバレても最悪殺されることはないだろうし。戦闘系だと怖がられて死亡フラグだしな……。

特に魔法や特殊能力系は油断してバレそうだ。これでもうっかりには自信がある。

装備ガチガチにして経験稼ぐ方向にしよう。レベルあげて物理で殴ればいい、ってやつだ。

そうなるとこれとこれと、これか。もうちょい貰えないか聞いてみてもいい。


と、そろそろ飽きてきたので普通に喋るとしよう。


「これとこれとこれ、で頼む。ちなみにこの上限撤廃、って能力値だけなのか?」


「もうプレイ終了なのですか。ああ、夢のあーれーくるくるくるーがー」


「それは別のヤツ捕まえてくれ。てかエチゴヤがあーれーは見たくないぞ」


「むー。ともあれ、ええとですね……LVUP必要経験値固定(3ケタ)に獲得スキルポイント上昇(大)、あと上限撤廃ですか。なんだか地味ですねぇ。精霊神召喚とか悪魔合体とか面白そうと思いませン?」



 そんなスキル使った瞬間国家の敵確定だろうが!

 なんて口に出さずに笑顔で続きを促す。俺は安全に生きたいのだ、安全に。


「この撤廃、というのは能力とスキルレベルの上限撤廃です。他のレベルは元々上限なしという特典つきデスから」


「地味で悪かったな。そう思うならもうちょっとおまけしてくれよ。あと特典、って他にもあるのか?」


「お代官様は欲深なのです……うう、仕方ありません。この山吹色のお菓子という名の初期ボーナスアップおつけしまショウ」


なんだか言葉やイントネーションが妙になってきたぞ。混ぜすぎておかしくなったのか。まあいいや。

それより凄いことを聞いた気がする。スキルレベルってかレベルに上限なし?

……心を読まれる可能性もあるので、スルーしておこう。煩悩退散。


「なんだか悪い顔になってまセン?まあいいでス。特典は、あと病気無効・自動翻訳・初期所持金装備アリ、くらいでしょうカ」


「オイ特典なしだと本当に無一文で放り出されんのかよ。翻訳と病気無効は有り難いな。助かる」


これのあるなしで難易度大幅に代わるからな。何も判らないまま食当たりで死亡とか洒落になってない。

所持金に初期ボーナスもあるならそうそう死ぬことはなさそうだ。あとは野盗とモンスターにご用心、てか。


「せっかくいい魂なのに無駄に散らしたら勿体無いデスからネ。すぐ死なれると隠蔽にも苦労しまスシ」


「……聞かなかったことにしよう。で、これで手続き終了ってか?」


「そうなりマス。では最終確認デスね。汝………」



そこでエチゴヤがぴたりと止まる。あれ、まだ決めてないことあったっけ?


「忘れてました。性別と名前どうします?容姿はこのままでいいですよネ」


そこかよ!!今更そこかよ!!俺もすっかり忘れてたけど棚にあげとくよ!


「名前はアツシ…ファミリーネームもか。アツシ・チェスターで頼む。容姿はイケメンで」


「チェスター?……まあイイデス。イケメンはチート能力1つと交換になりマース」


「うっ。性別も容姿もそのままでいい……」


「では最終確認デス。

 汝アツシ・チェスターは我チェルティが創造せり世界プレミアルドにて第二の生を受くことを誓う。

 所持スキルはLVUP必要経験値固定(3ケタ)、獲得スキルポイント上昇(大)、上限撤廃、病気無効、自動翻訳。

 特典として初期ボーナスと初期装備に所持金少々。異存なければ跪(ひざまず)き胸に手を当てヨ」



お前この世界でサッカーとラノベしか見てないだろ!

それより魂で跪けんのか?と思いつつイメージでやっておいた。

ひんやりと冷たいものに包まれる。妙に黒っぽい。…黒?

それに気のせいか寒気もするような。


「…お前ほんとに神だよな?」


「――これにて契約終了デス。とっとと異世界飛んでけーなのデス☆」



エチゴヤ改めチェルティがそう言った瞬間、足元に黒い穴が開く。

それはゴーッと空気を吸い始めた。もちろん俺のタマシイボディごと。


「って地獄逝きにしか見えねぇっ?!ちょっ、たいむ!ヘルプミー!」


俺の叫びも虚しく声ごと吸い込まれていく。もうあわわともがくばかりだ。



「あ、言い忘れましたガワタシ、神は神デモ魔神でした、てへぺろっ☆」


「てめぇてへぺろって言いたかっただけだろがー!う、うらんでやるぅぅぅ」


「ごアンシンヲ。魔神でも安心安全設計デスからー ニコッ」



ちきしょう、ニコッと声に出しやがった。吸い込まれてるのにまだ会話通じてるのもわざとだろ。

気に入った台詞この際全部言ってみたいという欲望をひしひしと感じる。

無論俺にはもうどうすることもできない。声すら出なくなっている。

ただただ落下している感覚。掃除機に吸い込まれる虫の気持ちがよく判った。ごめんな、虫ども。


「はわわ、お代官様がピンチなのデス。ここは笑顔で送って差し上げるのデス。バイバイ○ーン!」


そのネタ危ないからーっ?!


そんなツッコミを律儀に入れつつ、俺の意識は遠ざかっていった。

ネタ全般的に古過ぎんだよ………

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