第19話「リーネット、参上!」
(リーネット、まだつかないのか!?)
重ねる銃撃、落下の重圧。
対するカミソリ攻撃で互いに拮抗している。
さすがに2対1ということでラナフィーも攻めに攻められないようだ。
だが、あの絶やさぬ可憐な笑みに、どんな邪悪な策を忍ばせているのか。
カプノスも、《《本気を出すべきか》》と思い始めた。
だがラナフィーのセンスはその思惑を上回る。
「キャア!」
「ルヴィア!」
超人的な跳躍でルヴィアに突っ込み、一気に距離を開けられた。
人間が出しうるタックルの威力を超えたパワーで、ルヴィアの肺から一気に空気が抜ける。
「アハッ! ルヴィアさんのお胸ってクッションみたいだね」
「こ、このッ!」
「でも残念。許してあげない」
ザクザクザクッ!
今度はトランプではない。
ルヴィアの制服の一部をカミソリに変えた。
「がはっ!?」
「じゃあ、さよならっとッ!!」
宙で華麗な身のこなし。
ラナフィーの回し蹴りがルヴィアの腹部に炸裂した。
壁にぶつかる直前、
「悪ぃ遅れた。アタシ、参上!」
リーネットがバネの足で飛び出してきた。
まさに瞬間移動のような速度でルヴィアを抱きかかえ、激突を阻止する。
「遅いんですよ、おバカ」
「おーおー、痛そうだな。でもご自慢のボインは大丈夫そ────ぶふぅ!?」
「それ以上言ったら殺します」
「殴ったなぁこのアマ……もういい! 降りろッ!」
「降ろして!」
半ば仲間割れ気味にふたり並びながら、ラナフィーに対峙する。
「え~3人も相手にしなきゃいけないの~? たったひとりで戦うラナフィーちゃん、なんてかわいそうなんでしょう。えーんえーん」
「なぁにぶりっ子かましてんだタコ」
ふたりが前へ出る。
カプノスは離れた位置で銃を構えていた。
ラナフィーは「冗談通じないな」というように泣くフリをやめてつまらなそうな顔をする。
「ねぇねぇねぇ~。どうせやるなら~ひとりずつやりましょうよ~」
「そんな余裕はねえってよ」
「嬲り殺しにします」
「……わたしは君がやめてくれるか、その力を手放してくれるならそれでいい」
3人の反応を見ながら、ラナフィーはゆっくりと足を動かす。
「なるほどなるほど~。つまりラナフィーちゃんをぶっ殺したいって思ってるわけだ」
「その通り」
「でもわかってます? 皆さん追い込まれてるんですよ~、このラナフィーちゃんに」
「アタシが来たからもう終わりだよ」
「終わりじゃないでーす。まだまだ余裕アリリングでーす」
さっとトランプを出し、準備運動とばかりに華麗な手品をし始める。
「それに、知ってます? こういう追い詰められた状況での『殺してやる』とか『ブッ殺す』っていうのはね? 実のところ『逃げ』の姿勢なんですよ。殺すことでさっさと苦しみから解放されたいっていう、極端な逃避心理」
「なにが言いてぇんだよ御託はいいってんだ」
「そんなんじゃ、不幸は祓えない。むしろより厄介になる。オーディンならなおのこと!」
突如地面を蹴り飛ばし砂利と一緒に砂煙を浴びせた。
それぞれがカミソリのように鋭い威力を持ち、当然目くらましにもなる。
怯んだ隙に、カミソリトランプを投擲した。
同時にカプノスがラナフィーに撃つもまたしても弾かれる。
「んふふ、相性悪いみたいですね。おじさま♡」
「かもね。だが、それを補えるほどの戦力はあるよ」
「なにをバカな……────なっ!?」
ふたりがいない。
それぞれ別方向に躱し、
「落ちろ!」
「ぐはっ!!」
ラナフィーが潰れたあと、
「さらに、落ちろ!!」
「アタシを落とすなああああああああ!!」
上空へ回避したリーネットを、ラナフィーめがけて落下させた。
ルヴィアの力を甘く見ていたラナフィーは、激痛の中で瞬時に状況判断を行う。
「チィ! もう抜け出しやがった!」
リーネットはクレーターから飛び出したルヴィアを追う。
スピードだけならリーネットより上だ。
実際追いかけようにも、最早魔導士の感覚ですら追えない速度だ。
ピョンピョン飛び回りながらだと、意外に小回りが利かないのが難点。
実質、リーネットとのタイマンとなる。




