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第18話「オーディン」

「ねえねえ、くら~い場所で年の差男女がふたりきり。ワクワクしません?」


「しないよ」


「んも~いけずなんだからッ! ホラ~早く開けてくださ~い。こういうとき、男性がリードするものなんですよ?」


「まったく、なんでこんなことに」


 ため息交じりにドアを開いた。

 だが、それがよくなかった。


 開けた直後に上からなにか落ちてくる。

 どうやらドアとドアの間に《《カミソリ》》がいくつか挟まっていたようで────


「ぐおおおお!?」


 急ぎ飛びのいたが、斬撃は許さない。

 切り裂かれながらも、意識を高速回転させる。


「クソ、ここへ連れてきたのも罠か!!」


「今さら気がつくとか、おじさまってザコザコさんなんですか? キャハ☆」


 あどけない微笑みは一気に邪悪の色に染まる。


「ラナフィーちゃんの可愛さに惑わされるだなんて、うふふ、おバカさんって罵ってやりたいけど、ちょっと嬉しかったり。でも、見事だったでしょ? ラナフィーちゃんのこのニコニコスマイル」


「どういうつもりだ?」


「どういうつもりもなにも、教えてあげてるんですよ~。怖い顔しないでくださーい。大人の人は女の子に優しくすべきだと思いまーす。……おじさまはこのラナフィーちゃんを出し抜いたと思ってるみたいだから、ちょっとレクチャーしようと思ってぇ」


「意味がわからないな」


「さっきも言ったでしょ? ラナフィーちゃんのニコニコスマイルは見事だったでしょって。そう、おじさまはまんまと騙されちゃったの♪ そうだよねえ。男の人って女の子に優しくされるとすぐ舞い上がっちゃうもんね。くぷぷ」


 自分のことばかりだ。

 すでに勝ち誇っている様はあまりに隙だらけ。


 カプノスはもう少ししゃべらせようと、追い詰められたフリをしつつ、こっそりグリップに手をかける。


「────笑顔に真実なんてない。真実がなくても、笑顔になれる。そして、そんなラナフィーちゃんに人は騙される。今こうしてる間もね」


 まだまだ未成熟な肉体のラインを撫でるような所作をしながら、カプノスに悪意の笑みを向ける。

 この瞬間を、カプノスは逃さなかった。


 片膝をついた状態からの早撃ち。

 タイミングは完璧。だが、ラナフィーの嘘はまだ続いていた。


 ────キン!


(なに!? 手を振り上げた瞬間、弾丸が……いや、あれは!)


 彼女の手には1枚のトランプがあった。

 端の部分が鋭利になっている。


 指と指に挟むことで、半ばカミソリに変化していた。


「じゃじゃ~ん☆ ラナフィーマジック! ラナフィーちゃんはトランプ使う系強者なのでした! なんてね」


「この……ッ!」


 ファニング・ショットによる連射。

 それに合わせるようにカミソリトランプをいくつも出して飛ばしてきた。


 カプノスは5発。

 対するラナフィーは散弾式。


 とてもではないが躱しきれなかった。


(このガキ、あのふたりと圧倒的に悪意のレベルが違う……そうだ。そうだった。これが本来の持ち主の性なんだ。傷つけずにはいられない)


「アハッ☆ なにをやっても全部裏目って顔してるね~」 


「チィ」


「んふふ、ラナフィーちゃんのことブッ殺したいって顔……。いいよ。もっとラナフィーちゃんのことを考えて? そのたびに強く鋭くなっていくの。それがラナフィーちゃんの力、『オーディン』」


 曰く、『不吉』と『狂気』を暗示する残虐非道なるエネルギー。

 触れたもの、もしくは挟んだものをカミソリに変換。

 防御無視の圧倒的斬れ味を誇る怪能だ。


「さぁさぁどうします? 人が来るのにどれくらいかかっちゃうだろうな~。その前に手足バラバラになっちゃったり? キャー!」


「君も、それはそれで甘いんじゃないかな?」


「はい?」


「銃声をここまで響かせたんだ。気づくよ」


「アハ、おじさま切羽詰まってますね。でも、おじさまの声も姿も、誰も認識してないですよ? だって昨日の昇降口でもだーれも反応してないんだから」


「彼らはね」


「……?」


 怪訝な顔のラナフィーは一瞬考えたのち、勢いよく周囲を見渡す。

 こちらへ向かってくる気配がふたつ。


「まさか、ウソ、協力者!?」


「考えなしにあんな無駄撃ちするわけないだろ」


「だったらそうなる前に!」


 カミソリトランプの投擲動作。

 カプノスもまた神速のリロード。

 

 だが一手ラナフィーが勝るか。




「アトラス!」


「がっ────!?」


 轟音とともにクレーターへと沈んだラナフィー。

 後方から駆け付けたのはルヴィアだった。


「遅くなり申し訳ありません」


「ありがとうルヴィア」


「やはりあのとき殺しておけばよかったのですよ。でも、そういう先生の甘いところも私は大好きです」


 そんなルヴィアをよそに、カプノスは撃鉄を下してクレーターに向けながら回り込む。

 

「ひどいじゃないですか~。身体中バキボキだよぉ。骨折れちゃってるぅ」


 砂煙から聞こえる声と、肉体が高速で再生していく音。

 認識した直後にまた銃撃を浴びせた。


 だが、ほぼ同時に例のトランプが宙にバラまかれる。


 キン、キン、キィン!


 放たれたいくつもの弾丸を乱反射気味に弾き、それぞれをカプノスとルヴィアに跳ね返した。

 カプノスは回避したが虚を突かれたルヴィアの胸に被弾する。


「舐めたことしてくれちゃって~。もう許してあーげない。バラバラに斬り刻んで飾ったげる♪」


 クレーターから出てきた彼女の眼光は、より鋭利なものとなった。

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