気になることがあるっしょ【ギャルとオタクくん】
放課後。
いつも通りの授業が終わり、校舎には帰り支度をする生徒のざわめきが満ちていた。
金髪にピンクメッシュのギャルが、指先で髪をくるくる弄びながら言う。
「ねー、あーし気になってることあるんだけど」
「なーにー」
ギャル友がスマホを見ながら間延びした返事を返した。
「オタクくんについてっしょ。」
ギャル友はニヤついた笑顔を隠すことなくいった。
「どうしたー?」
一拍間を置いて神妙な顔でいった。
「髪伸びすぎっしょ。」
上がった口角がしおしおと下がるとギャル友は棒読みで答える。
「……たしかにー」
ギャルは立ち上がると、オタクくんの席まで歩み寄る。
「髪切るっしょ」
「……か、髪でござるか?」
突然声をかけられ、オタクくんは明らかに動揺する。
「伸びすぎっしょ」
オタクくんの前髪は目を覆い、襟足は肩を越えていた。
彼は少し考えてから、真顔で言う。
「そうでござるな。“春来れば草自ずから生ず”。春になれば草木が自然に芽吹くように、髪も伸びるでござるよ」
「そういううんちくはいらないっしょ」
ギャルはため息交じりに言うと、
「ついてくるっしょ」
と言い、歩き出した。
何が始まるのか分からないまま、オタクくんはその背中を追う。
学校を出て電車に乗り、数駅離れた賑やかな商店街を抜ける。
そして、とある家の前で立ち止まった。
「ここ、あーしんち」
「ギャル殿の家でござるか?」
「そうっしょ」
扉を開けると、そこにはサロン用の大きな鏡が壁一面に並び、等間隔に置かれた椅子。
清潔な店内に観葉植物が映えている。
オタクくんは思わず呟いた。
「…お家が美容院でござったか」
「そこ座るっしょ」
ギャルは奥にいる美しい女性に声をかける。
「ママー、借りるよー」
「はーい、好きにしなー」
軽い返事とともに、ギャルは美容師道具の入ったポーチを腰に巻く。
そこからハサミを取り出し、オタクくんに問いかけた。
「で、どんな感じがいいっしょ?」
オタクくんは目を丸くし、驚いた声を返す。
「ギャル殿が切るでござるか?」
ギャルが不満そうに眉を寄せる。
「あーしじゃ、や?」
オタクくんは即答した。
「そんなことないでござる!むしろ光栄でござる。お任せでお願いするでござる。!」
ギャルは満足げに頷くと、迷いのない動きで髪を切り始めた。
オタクくんは真剣な顔で自分の髪を切ってくれるギャルの顔を鏡越しに見つめていた。
やがて、小さく呟いた。
「“春来れば草自ずから生ず”…でござるな。無理に何かを変えようとしなくても、時が来れば物事は動き出す」
その言葉が彼女に届くことはなかったが、それでよかった。
それは彼自身に向けた言葉だったからだ。
オタクくんは噛みしめるようにうんうんと頷いた。
「動くなっしょ!」
ギャルに注意され、慌てて姿勢を正す。
「す、すまないでござる!」
けれどその顔は、どこか嬉しそうに笑っていた。
お読みいただきありがとうございました(*'ω'*)
私事で恐縮ですが、別の連載話を書き始めましたので本作品は不定期更新になります。
ここまでありがとうございました。
ギャルオタは、最終回だけはもう書き切っているのでいつかはあげると思います。
それでは皆様今までありがとうございましたm(_ _)m




