あなたの幸せを願いたいのです
ホラー回です。苦手な人は退避をお願いします。
「私はあなたが苦しむのを見て居られないのです。その自己欺瞞に付き合わせることを謝罪します。私はあなたの幸せを心の底から願っているのです。あなたには幸せになって欲しい。だから許してくださいね。あなたを幸せにすることを。」
「あ、ありがとうございます。」
「お礼はいいのです。許してさえくだされば。許してくださいね。私はあなたの幸せを願いたいのです。」
その言葉を聞いた瞬間、自分の腹に刃が食い込んだ。
「許してくださいね。あなたを幸せにしたいだけなのです。」
そういうと彼女は膝から崩れ落ち、ポロポロと大きな瞳から雫を零した。
「許して…。許して…。」
彼女の泣き声が遠くに聞こえる。何が起きたのかわからなかった。
この世は苦しみに満ちている。仏教では一切皆苦というらしい。やはり、この世は地獄なのだ。救わないといけない私が。全てのものを救うことはできない。でも近しい人なら仲良くなった人くらいなら救える。
できるだけ多くの人を救うためには捕まるわけにはいかない。いつものように処理すると、茶葉を入れお茶を飲む。温かく適度に苦い苦みが私の心を落ち着かせてくれる。
「また一人になってしまった…。」
寂しさが込み上げてくる。また選別をしないといけない。私が救いたいと思う人を探さなければならない。
大学で物凄く可愛い女の子とお知り合いになった。気分は最高潮だ。ヒャッホー。
出会いはドラマチック。廊下ですれ違ったときにハンカチを落としたところを拾ったら、ものすごく感謝されお礼に食事に誘われた。
食事の席でも楽しく会話して、連絡先を交換して別れた。
LINEで連絡を取り合っているが、気を使えるすごい良い子だ。こちらの気持ちを考えて寄り添ってくれる。映画館、水族館、デートを重ね告白したら、涙ながらに私でいいの嬉しいと喜んでくれた。最高の彼女ができてしまった。
そして、今日、彼女の一人暮らしの部屋にお呼ばれしている。準備は万端だ。有頂天になりながら待合場所に迎い、彼女と合流して彼女の家へ案内してもらう。
今日は彼女の家に泊まる。胸が高鳴る。
「幸せにするからね。」
と彼女が花も綻ぶくらいの笑顔でいった。だから俺も返した。
「それは俺の台詞だよ。絶対後悔させないから。」
胸もあそこも膨らむ。
ここだと言われて着いた家はお世辞にも綺麗とは言えないボロいマンションだった。その一階の扉に鍵を差し込み扉を開ける彼女。部屋に入るとそこは女の子らしくない簡素な部屋だった。ポツンと隅に置かれたベッドだけが印象に残った。可愛い彼女とはイメージが違った。しかし、今はそんなことは些細なことだ。
座ってて準備するから。と言われソワソワとした気持ちで待つ。彼女が言う。
「許してくださいね。あなたを幸せにしたいだけなのです。」
振り返ると手にした包丁をこちらに向け泣きそうな顔した彼女がいた。
料理を作ってくれるのか?と思ったが雰囲気がそんな甘いものではなかった。
「私は皆が幸せになってほしいと思っています。だから許してください。」
包丁を持って駆け寄って来る彼女をすんでのところで避ける。
「許して?あなたを幸せにしたいの?」
顔だけ振り返った彼女の顔が泣いているのか笑っているのかわからなかった。
俺は恐怖で彼女を突き飛ばし部屋を飛び出し、そのまま警察に駆け込んだ。
これが所謂、ヤンデレというやつなのだろうか?
通報を受けた警察が彼女の部屋に押し入り彼女を取り押さえた。
事情聴取をした警察により彼女の犯行が明るみになり、何体もの行方不明者の遺体が彼女のベッドの下の地下から発見されることになった。古くなった彼女の両親の遺体もそこにはあった。
俺は数日恐怖で震えたが、友達に相談した。
「ヤンデレ怖すぎんよ!」
「いや、それヤンデレじゃなくて犯罪者だから」
彼女がなぜそんなことをしたのか俺には理解できなかった。
後日、刑務所内で彼女は刑務官からお勧めされた禅の本を読んでいた。
『任運自在』
---すべて自然の流れにまかせきって、はからいをしないという意味。
ありのままでいいのだという言葉を見て、彼女は微笑むと静かに涙を流した。
お読みいただきありがとうございます(*'ω'*)
※この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません。




