時間を惜しむ
目を開けると真っ白な空間にいた。光り輝く女性が現れ、優しい声で言う。
「あなたは時間を守らず、人に多大な迷惑をかけました」
胸が痛んだ。確かに約束を守るのが苦手で、何度も人を待たせてきたのだ。
「あなたにこの言葉を贈ります。『寸陰是競』。わずかな時間すら惜しんで大切にせよという意味です。なぜそうなのか、考えなさい」
「寸陰是競……」
そう呟いた瞬間、女性が指を鳴らした。
パチン
(信号機の音)
目を覚ますと、俺は信号機になっていた。電流が体を流れ、赤と青を切り替える。田舎町の片隅、車も人も少なく、誰も俺を気に留めない。自分の存在意義を問い続ける日々が続いた。
そんな中、一人の女性だけは必ず信号を守ってくれた。彼女のために俺は存在しているのかもしれない。秒単位で働き、規則正しい時間を刻むことに誇りを覚え始めた。
ある日、その彼女がスマホを見ながら歩いてきた。赤信号で立ち止まったまま画面に夢中。そこへ車が猛スピードで近づいてくる。
俺は必死に体中の電流を操り、信号を無理やり青に変え、爆音で警告の音を響かせた。
(信号機の音)
彼女は顔を上げ、車に気づいて慌てて渡る。直後、車が彼女の立っていた場所へ突っ込んだ。
救われた。救えた。良かった。
彼女を見送りながら、俺は思った。――俺は命という時間を守っている。その尊さを噛みしめた瞬間、再び意識が遠のいていった。
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