前世知識でチート無双のはずが
「楽勝だと思ったのに……。」
俺は前世の記憶を持ったまま、この世界――Rechroniaに生まれ落ちた。
赤ん坊の頃、記憶があることに気づいた瞬間、俺はガッツポーズをした。
だってそうだろ? 知識も経験も丸ごと持ち越し。強くてニューゲーム。人生イージーモード確定だと思ったんだ。
前世の俺は会社を起こして、世界でも名の知れた大企業の社長になった。
母校で後輩たちに成功哲学を語り、本も出してベストセラー。勝ちパターンなんて全部わかってる。……そう信じてた。
でも、この世界は甘くなかった。
Rechroniaは「二周目の世界」だったのだ。住人全員が前世持ち。元勇者だの伝説の魔導師だのがゴロゴロいて、俺の“必勝法”なんて二束三文。
結果、起業はあっさり失敗。気づけば毎日バーで飲んだくれていた。
「マスター、もう一杯。」
「やめとけ。酒じゃなくて説教でも欲しいか?」
「うるせーな。俺はこれで成功したんだよ!」
「前後際断って知ってるか?」
マスターの言葉に思わず手が止まる。
「薪は燃えて灰になるが、薪が前で灰が後ってわけじゃねえ。薪は薪、灰は灰。繋がっちゃいねえんだ。過去は今に続いてるようで、実は切れてる。大事なのは“今”だ。」
説教を振り切るように店を飛び出した。だが頭の中では、マスターの声がずっと反響していた。
――繋がってない? 俺は過去の延長戦で生きてたのか?
「……“今”か。始めるのに遅いなんてことはないよな。」
夜風に吹かれながら笑う。
もう一度あのバーに行こう。次は祝い酒を飲むために。
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