水に生まれた私の使命
「水到渠成、水到渠成」
私は水だ。何を言っているのかと思われるかもしれないが、事実、水なのだ。
いわゆる転生というやつで、私は水に転生した。
しかも、ただ流れるだけの水ではない。私には使命がある。
「よし、また来れた」
もう数え切れないほど通った土の中。微細な隙間を縫うようにして進み、ようやく洞窟の天井に辿り着く。
一滴の雫となった私は、ついに目的の場所へ――ポチャン。
下に落ちるその一瞬、私の体は粉々に砕ける。しかし間もなく、また私は水となって構成され、長い旅が始まる。
山から染み出し、川へ流れ、海へ出て、蒸発し、雲となり、そしてまたこの山へ雨となって落ちる。
地下を進み、洞窟へたどり着き。
そして再びポチャン――目的の鎖へ。
「水到渠成、水到渠成」
それは長い、気の遠くなるような繰り返しだった。
けれど私の水は、確実に、あの鎖を蝕んでいた。
長い時を過ごしながら思い出すのは人間だったときの記憶。
変わった友人と楽しく過ごした日々だった。
幾億回か分からないほどそれを繰り返したとき――
ガチャ。
音がした。思い鉄が地に落ちる音。確かに“外れる”音。
ようやく、鎖が切れたのだ。
水到渠成――水が自然に流れれば、やがて溝を成す。
すなわち、努力を重ねていれば、自然と道が開けるということ。
目を見開いて鎖を見下ろすドラゴン。それが外れたと理解した瞬間――。
「GYAOOOOOOO!!」
咆哮が洞窟に響いた。
これでいい。ごめんね、待たせたね。
自由になっていいんだよ。
また好きなリンゴでも食べて、元気にね。
もう人間に捕まっちゃダメだからね。
「GYAOOOOOOO!!」
歓喜の声が聞こえた。
水の私から、水が出そうになった。
飛び立つドラゴンを見上げながら、私は満ち足りた気持ちで意識が消えた。
お読みいただきありがとうございました(*'ω'*)
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