予言を信じているなんて馬鹿みたい
「予言を信じるなんて馬鹿みたい」
留美子は2029年9月9日に人類が滅ぶと信じている。ネットで見つけたという記事には、有名な霊能力者と外国の部族、そしてNASAの関係者までもが「その日」を示唆しているらしい。
「そんなの嘘に決まってる」
私は笑った。でも、笑っているのは私だけだった。
あの文化祭の準備、留美子は誰よりも前向きだった。装飾係のリーダーとして、毎日遅くまで残って作業して、帰り道には「どうせ最後の文化祭だし、思いっきり楽しみたいじゃん?」と笑った。
あんなに冷めてた子が、体育館の天井に届くようなバルーンを吊るすために脚立に登ってるなんて、嘘みたいだった。
私はモヤモヤして、担任の先生に聞いた。
「2029年に人類が滅ぶなんて、絶対に嘘ですよね?でも、それを信じて生きてる子がいて」
先生は、机の上の湯飲みをそっと持ち上げて言った。
「留美子のことだな。禅には『一日一生』って言葉がある。今日を人生最後の日と思って生きろ、って意味だ。彼女はそれを実践してるだけだよ」
「でも、嘘ですよ?」
「嘘かどうかより、どう生きるかだよ。毎日が特別に見えるなら、それは悪くない生き方だ」
その言葉がずっと胸に残っている。
文化祭当日。留美子は、ステージで司会をしていた。緊張で声が震えていたけど、それでも楽しそうだった。
私は出し物の最中、客席の片隅でスマホのカレンダーを開いた。
2029年9月9日まで、あと──1376日。
「一日一生か……」
この日が一生だとしたら、私は何をする?
考えるより先に、私は拍手を送った。誰よりも強く、誰よりも長く。
「私も、始めてみようかな。今日という一生を」
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