禅語を使ってフラれた件について
今日から3日間3話ずつ投稿します。その後、1か月毎日投稿に挑戦します。基本的に12時20分に投稿しようと思っています。1話から見る必要はありません。気になるタイトルのお話を覗いてみてください。後半になるに連れて文字数が増加します。
「もう嫌い!別れましょう」
彼女はそう言って背を向けた。
日差しが気持ちいい日曜日の公園。
二人の大学生くらいの男女が連れ立って歩いていた。
彼氏は慌てて自動販売機に走り、お茶を2本買って戻ってきた。
「まあ、お茶でもどうぞ」
ぎこちなく差し出す。
「……は?」
「知ってる?“喫茶去”って禅の言葉で──」
彼女はぴたりと動きを止めた。
「そういうとこ、大っきらい」
お茶を受け取ることもなく、そのまま去っていった。
残された彼氏は、静かにペットボトルのフタを開けた。
一口すすって、ぽつり。
「……渋いや」
【禅語解説】
「喫茶去」は、禅の言葉で「まあ、お茶でもどうぞ」という意味。
疲れていても、うまくいってなくても、どんな人にも「とりあえず一杯どうぞ」とお茶をすすめる。
それは、今ここを一緒に味わうという、あたたかい心の表れ。比べず、裁かず、ただお茶を飲む。それが、禅の優しさ。
いつでも相手に通じるとは限らない。
お読みいただきありがとうございます(*'ω'*)




