第10話「介入」
「平和っすねー」
「ここ2日間は出動要請ないからねぇ…」
百瀬と護が拠点の屋上でくつろいでいた。
2人が下を見ると、ジェシカとこはねが02を洗車していた。
「ああいう風景見ると心が和むよねぇ…」
そんな平和な雰囲気を壊すようにブザーが鳴る。
『消防本部ならびに高速道路パトロール隊から入電!彩ヶ口IC4.5kmポスト付近で小学生を乗せた観光バスが走行車線上に停止したとのこと!緊急事案に認定!HETの出動要請あり!』
「よしいこう」
旗野が屋上から格納庫まで階段を下る。
「HET01、02、出動準備完了です!」
「OK、おつかれ!」
「HET出動します!」
本田の誘導のもと拠点を後にする。
「鈴木、状況は?」
「えっと彩ヶ口インター付近で小学生が乗ったバスがエンジントラブルでストップ。それが走行車線上に停止。現在東南自動車道パトロール隊が交通整理をしているとのこと。」
「バスかぁ…しかも走行車線上って。クルマもビュンビュン走ってる。小学生をバスから降ろして路肩につれてくのは危険だな…」
「とりあえず、現場を見て判断しましょう」
旗野の目の前にバスが止まっているのが見えてきた。
「本当に道のど真ん中に止まってるな」
「今、警察が東南自動車道に通行止めできないか掛け合ってるそうです。」
「02は後続車の誘導を。俺達でとりあえずバスに近づきます。」
『了解』
01がバスに横付けする。
昇降口が開いており、運転手と思わしき男性がいた。
「HETの旗野ですー!運転手さんですかー?」
「そうです!」
「そこを動かないでください!危険ですので!」
「中に何か疾患を持っているこどもなどはいますかー?」
少し車内を伺うような素振りを見せたあと
「そのような児童はいないです!」
「わかりました!すぐに救助するので待っていてください!」
「チーフ、東南自動車道のこの区間、通行止めにできました!」
「OK、じゃあすぐに救助しよう」
そう言って車両を降りたときだった。
突然旗野の目の前に黒塗りのクルマが止まる。
「なんや、こいつ…救助の邪魔や…」
「消防庁です!消防庁は貴方がたHETが従来の消防、救急のシステムの存在を揺るがす危険因子と判断しました!そのため、HETの車両、機材を押収という形で活動停止処分を下します!」
「はぁ?何いってんスカ?」
「そうだそうだ!」
「あなた達はね、国から認可されていない未認可の医療組織なんです。ですから、私達が何か考えればすぐに活動を停止させることができるんです!」
それを聞いていた旗野が指示する。
「帰るぞー」
「え」
その旗野にとりあえず続くようにメンバーが歩き出す。
「待て待て。なんで助けないんだ?すぐそこにバスがあるのに」
消防庁の職員が旗野を止める。
「だって、私たちの機材はすべて押収なんでしょう?なら私達に救助する権利はなくなる。それにあなたがたは消防庁の関係者。救助方法くらいはこ存じでしょう?」
そう言って旗野が歩き出す。
その時、赤城の電話が鳴った。
「もしもし」
『国交省の高田だ!君たちは高速道路の人命救助には欠かせない組織だとこちらで判断した。消防庁の判断など聞かなくていい。我々国土交通省が、君たちHETの活動を一時的に認可する!』
「わかりました」
赤城が電話を切る。
「旗野チーフ、国交省から一時的に認可が下りました。活動できます」
「まってましたぁ!」
旗野は再びバスに駆け寄る。
「今から、このバスごと、路側帯に移動させます!ですので、しっかりと子どもたちにシートベルトをつけるように指示してください!」
「鈴木、01をバスの前へ!牽引ロープで一気に引っ張るよ!」
「了解!」
01がバスの前に止まる。
「オーライ!オーライ!」
「はいOK!」
トランクからロープを取り出し、バス側のフックにつなぐ。
「OK!」
「行きます!」
鈴木がアクセルを踏み込む。
しかし。
このエリア一帯に響くのはタイヤのスキール音のみ。
「くっそ…進まねぇか…」
その時、有村が何かに気づいたように02に戻っていく。
「01だけで動かないなら、02で押せばいいじゃない。」
WRXのエンジンがかかる。
「こちら有村、バスを後ろから押します!」
『鈴木了解。お願いします!』
02がバスの後ろにつく。
「押すよー!」
WRXが後ろからバスを押し始める。
「お!進んでる!」
外から旗野も見守る。
「旗野チーフ、代替のバスももうそろそろ到着予定だそうです!」
「ナイスタイミングだね。」
バスが路側帯に退避する。
その直後、バスが到着した。
「よし、じゃあ、子どもたちを降ろしてバスに乗せましょう!」
「はい、おいでー!1列でねー!」
「やっぱ、こはね小児科医なだけあるな〜。」
「ですねー。子どもの扱い慣れてる。」
乗り換えが終わる。
「本当にありがとうございました!」
バスの運転手と先生が頭を下げる。
「いえいえ。私達は当然のことをしただけですよ。高速道路上で起きたトラブルに迅速に駆けつけて解決する。これが私達の部隊の目的ですから!」
彼らはまだ知らない。
この後HET最高難易度のミッションが起こるなんて。




