表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

読切短編集

金のおのと銀のおのと婚姻届

作者: いのりん

※異世界恋愛ですが、コメディ成分多めです


〜あらすじ〜


異世界から召喚された人族の勇者は、旅の序盤にドワーフの女戦士、中盤にエルフの魔術師、最終盤に女魔族の狂戦士を仲間にして、魔王を打倒した。


王都から少し離れた湖畔。

一対の短斧を持った、一人の少女が佇んでいた。


彼女の名前はアカサ・ターナー。


ドワーフの女戦士である。

先日、世界を救ったというのに、彼女の顔は暗い。


「さようなら、私の初恋」


そう言う彼女の右手から、旅の思い出でもある金の短斧が離れる。ぼちゃん、と湖畔に沈む音がした。


「グッバイ・マイラブ」


次は左手から銀の斧。

湖畔にどぽん。




そう、彼女は初めての失恋に浸っていた。

勇者への初恋にやぶれたのだ。


ドワーフという種族は男はダンディな外見でよくモテる。しかし女は子供っぽい外見で、余り他種族に人気がない。


しかし、勇者は初対面時に今までモテてこなかったアカサの事を「可愛い」と言ってくれたのだ。惚れるには十分すぎる理由であった。


なおその後、旅の途中で勇者は色んな女性に鼻の下を伸ばしていたのだが、アカサは嫉妬つつ「言うて、最後に選ばれるのは私でしょ」と余裕こいていた。


ちなみに、ジャンル異世界恋愛でやれば即ブクマを剥がされるような愚行をしている男に何故愛想をつかさなかったのかと言えば、恋は盲目だからである。


しかし勇者は全てが終わった後、出会って二日の、ダイナマイトボディの女魔族から「これからずっと二人で愛し合おう」と告白されると鼻の下をのばして二人で旅立ってしまったのだった。




「はあ…これからどうしよう…」



ため息を、一つ。


長い旅の中で、年齢は若干行き遅れとなりつつある。


ドワーフの里に帰れば自分は英雄としてちやほやされるだろう。しかし、あまりに高嶺の花となった自分にアプローチしてくる男はいまい。


外ではやんやされ、しかし家に帰ったら一人で飯を食べ、冷たいベッドに一人入る自分を想像すると、虚しかった。




と、そこで



「君が落としたのは、金の斧かな?」



声が聞こえた




「それとも、銀の斧かな?」




もう一人いた、仲間の声が





「それとも……甘く切ない、恋心かな?」





驚きに目を見開き、ポロリと言葉が口から漏れる


「アイドさん…」



アイド・リシュ・セブンズ。エルフの国の王子様でもあり、自分の「推し」でもあった彼が、どうしてここに?



「ごめんね、勇者達が旅立ったあと浮かない顔をしていた君まで急に消えたものだから、気になって探索魔術で追ってきちゃった」


勇者よりも遥かにイケメンかつ紳士的ゆえに、恋愛対象として見るのは恐れ多すぎた「推し(かみ)」のその言葉に、アカサは舞い上がってしまう。



「あ、あはは…心配させてすみません。ちょっと心が重傷だっただけです。」


「それ僕に癒させてくれないかな。ほら、傷心への最高の傷薬は……新しい恋と言うだろう」


「え、ええ〜?!」


恥ずかしいセリフに、もっと恥ずかしいセリフを被せてくるアイドに驚きながら、顔を赤らめるアカサだった。




なんでも、一目見た時から、アカサの外見は好みだったらしい。そして、一緒に旅をするなかで人となりを知り惚れたそうだ。


しかし、アカサは勇者に惚れていて、自分とは一定の距離をとっている様子だったので脈なしと半分諦めていたとのこと。




「でも勇者達が去り悲しむ君をみてね、ここで行かなきゃ一生後悔すると思ったんだ…」


「あ、ありがとうございます。」


あの、距離を空けていたのは推しとは適切な距離感を取るべしと自重していたからで……なんて続けてゴニョゴニョいうアカサに、アイドは一枚の紙を差し出した。



「これは……?」


「エルフ秘伝の婚約契約書。魔術でお互いへの永遠の隷属を誓うんだ……アカサ、僕と結婚して欲しい。」


その言葉にアカサは心臓を撃ち抜かれた。鮮血が吹き出し祝福の鐘がガランガラン鳴り、目にはハートが浮かんだ。


「はいっ!喜んで!」


見方を変えれば、ちんちくりんな外見がすきで傷心につけ込み、いきなり魔力で縛る結婚を申し込みますというやべー申し出なのだが、アカサは全く気にならなかった。


何故なら、恋は盲目だからである。




なおその後、二人は幸せな日々を過ごすことになる。


結果オーライという奴だ。





一方で勇者達がどうなかったかと言うと





「うわあぁぁぁー!そう言えばこの(ひと)、『殺し合う』のところに『愛し合う』とかルビ振っちゃうタイプの狂戦士だったあぁぁぁー!タンマ!ちょっとタンマ!」


「問題無用!さあ、報酬を全て注ぎ込み、回復薬も蘇生薬も沢山買ったから、これから沢山、殺し合える(愛し合える)ぞ勇者ァ!」



おしまい



お話楽しかったよーと思った頂けましたら評価ボタンポチって頂けると嬉しいです。次作執筆への励みになります(*´ω`*)


また願わくば、過日作者の痛恨のミス(現在は修正済)で初動に大失敗し久しぶりにランク入りを逃した不憫な作品「壁に耳あり正直メアリー」にも、この後お付き合いいただけますと、これに勝る喜びはありません。


※下に転移魔法陣(リンク)張っており、そのまま別世界に飛べます。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
冒頭の「アカサ・ターナー」で爆笑しました。 命名センスが素晴らしすぎる…… 頑張れ! メアリーちゃん!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ