雨の中ひとりぼっち。
雨が降る音が好きだ。
だけど、それはきっと、雨が優しいわけじゃない。
ただ、私の心の中で鳴るノイズを消してくれるからだ。
窓の外、アスファルトに打ち付ける雨粒が奏でるリズムに、私はただ耳を澄ませる。
まるで、それだけが今日という日の意味を教えてくれるみたいに。
雨の日って、どうしてこんなに孤独を強く感じるんだろう。
傘をさした人たちが足早に過ぎていく姿を見ていると、
誰もが「早くどこかに行きたい」と願っているように見える。
でも、私はそんな行きたい場所なんて思い浮かばない。
だから、ここでこうしてひとりでいるのがちょうどいいのかもしれない。
ひとりぼっちって、悲しい響きだよね。
でも、本当はそうじゃない。
少なくとも、私はこの孤独を自分で選んでいる。
人と話すことができないわけじゃない。
ただ、話してしまったら自分の弱さが滲み出るのが怖いだけ。
だから、ひとりでいる時間を、自分を守るための鎧みたいに纏っている。
雨の匂いは、記憶を呼び起こす。
それが良い思い出か、苦い思い出かは、その日によって違うけど。
今日はなぜか、昔の友達のことを思い出した。
笑いあった日々も、喧嘩して言葉が詰まった夜も。
その全てが、今は遠い記憶の中に溶けてしまった。
「どうして今、ここにいないんだろう?」
なんて、問いかけたところで誰も答えてくれないけど。
雨の日の空は低い。
頭上に垂れ込める雲が、まるで私の心に重なるようだ。
でも、その雲の向こうにはきっと青空がある。
いつもそう信じているのに、どうして今日の私はそれを疑ってしまうんだろう?
それとも、私が見るべき空はこの灰色のままなのだろうか。
雨音に溶けるようにして、言葉がこぼれる。
誰にも届かないつぶやきが、ただ私の部屋の中で漂っている。
「あの頃は、よかったな。」
そう思ってしまうのは、過去の自分が今の自分よりも自由だったからだろうか。
それとも、ただ懐かしさという名のフィルターで美化しているだけなのかもしれない。
雨の日は、誰かに会いたくなる。
だけど、誰かに会ってしまったら、
この気持ちをどうやって言葉にすればいいのか、わからなくなる。
結局、ひとりでいる方が楽なんだ。
だから私はこうして、雨音を聞きながら、自分の中の思いを紡いでいる。
雨は、いつか止む。
その時、私の心の中に溜まったものも、少しは洗い流されるだろうか。
それとも、乾いたアスファルトの上に取り残された水たまりみたいに、
私の中には、まだ何かが残り続けるのだろうか。
どちらにしても、私はきっとまたこの窓の前に座り、雨を待つだろう。
雨とひとりぼっち。
それは私にとって、避けられない小さな儀式みたいなものだから。




