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スレ主がダンジョンアタックする話  作者: ゲスト047562


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第82話 伽藍堂結城の憤慨

伽藍堂結城がまずした事は、自身のスペックに磨きをかけ、周囲に認知される事だった。

どれだけ優秀だろうと、彼はまだ小学生。出来る事は限られている。故に彼は考え、一つの結論を得た。





《《自分が、他の誰よりも優秀になれば良い》》。そうすれば、誰もが自分を無視出来なくなる。最初は多いであろう伽藍堂兄妹へ向けられる視線も、いずれ伽藍堂結城個人に向けられていくだろうと。


それから彼の努力が始まった。人脈を持つ為、社交性を身に付けた。元々顔も良かった事もあり、彼が笑みを浮かべて挨拶するだけで、火に群がる蛾の如く主に異性が寄って来るようになった。彼女達を相手に、彼はコミュニケーション能力を鍛えた。





まだだ。


勉学は目に見えるステータスだ。全ての教科は当然のように満点を取り続けた。それと並行して、複数の外国語を独学で勉強した。祖父が運営するガーランドウェポンズは、国内外で有名な会社だ。海外では、次期社長になるであろう両親とパイプを持とうと考えている者も多い。彼等との会話に付いていく為にも、彼は必死に海外の政治も調べた。





もっと自分に注目しろ。


『素晴らしい!神童の名に偽り無しだ!』


『この年齢でここまで出来るなんて、君は正真正銘の天才だ』


『はは、ありがとうございます』


成長するにつれ、周りからの賞賛の声も大きくなる。別に努力をひけらかすつもりは無いが、無神経に投げかけられる『天才』という称号には、無性に腹が立った。





結城が高校に上がる年齢になる頃、成長した妹は贔屓目抜きに美少女へ進化した。それに加え、兄にも負けず劣らずの才覚を目覚めさせていった為、周りの豚共が更に放っておかなくなってしまった。

結果、妹は更に人見知りを拗らせてしまった。家族に対しても疑心暗鬼に陥る程、心が摩耗していくのを見て、結城は更に彼女を守ろうと躍起になった。


今社会で注目されているのは、やはりダンジョンだ。パーティを組むのが煩わしい為、ダンジョンアタッカーには高校入学後になる事にした。



『伽藍堂、結城……!』


『おーすげ。同い年のダンジョンアタッカーだ』


鳴り物入りでダンジョンアタッカーになったのは自分だけでは無かったらしい。《《あの》》羽場童剛の娘も、自分と同世代な上に東城まで出てきてダンジョンアタッカーになっていた。何も知らない奴が一人いたが、それ以外の面々は自分達を早くも『黄金世代』だと囃し立てた。


その数時間後、彼は三つ星へと上がった。

翌日には四つ星、そして一週間の内に彼は世界最速で五つ星ダンジョンアタッカーになった。


それは、伽藍堂結城という存在が他とは別格だと確信させるには充分な衝撃だった。瞬く間にDAG界隈は伽藍堂結城の話題で一色に染まり、『黄金世代』は『結城世代』へ一瞬で遷移した。


『叶!お兄ちゃん、五つ星になったんだ。五つ星って……』


『知ってる。おめでとう』


『ぁ……』


妹は思春期に入り、特に男を寄せ付けなくなった。クールビューティーに育った彼女も愛らしいが、話しかけても相手にしてくれないのは少し……そう、ほんの少しだけ、悲しい。結城は悲しみを知った。






まだ足りない。誰も映らなくなる程の光を。


自分のブランドを絶対的なモノにするには、誰にも成し遂げられていない事をするしかない。

ダンジョンやスキルについては、未解明な部分も多い。結城は自分の身体を実験に使い、体内にマナを生成する器官が作られている事に気付き、それを『マナ臓』と名付けた。


『今回のマナ臓の発見は、DAGのこれまでの発見の中でも、一際大きな一歩だと確信しています』


『ダンジョンは人類に未知の資源を齎してくれました。しかしそれだけではありません。ダンジョンは、我々人類の新たな可能性なのです。僕はこれからも、皆さんの新たな可能性を模索していきます。どうかよろしくお願いします』


まだ足りない。もっともっともっと。









数年後、妹がムーブに出ていた。


『綺麗ですね』


『結婚かな?』


「は?」


結城は激怒した。必ず、邪智暴虐なる男配信者を除けばねならぬと決意した。結城には人の心がわからぬ。結城は、伽藍堂叶のお兄ちゃんである。自分を磨き、妹の盾となるべく生きてきた。故に妹に近付く害虫に対しては、人一倍に敏感であった。


「何故ぽっと出の男が、叶に好かれているんだ……まさか、洗脳!?」


違う。しようとしているのは、寧ろ妹の方である。


「叶ぇ!?お兄ちゃんにはそんな笑顔した事ないのに、そんな男や画面の前の豚共に投げ売りしちゃ駄目でしょ!?」


自らも豚の仲間入りをしている兄が発狂しているが、それを止める者も止められる者も存在しなかった。


「男に耐性のない叶があんな事するはずが無い!!きっとこの男に弱みを握られてるんだ!僕の目は誤魔化せないぞ!!」


彼の目は節穴のようだ。《《見覚えのある姿の青年》》が、頭からすっぽりと抜け落ちてしまう程に。


「スイッチ……いや、戸張照真……コロス」


伽藍堂結城。

妹の為にひたすら努力し続けた天才は、妹が絡むとどこまでも馬鹿になってしまう悲しい生き物に成り果てていた。

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