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スレ主がダンジョンアタックする話  作者: ゲスト047562


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第73話 地獄の欠片

苦しい。全身が圧迫されて潰されそうだ。

何かに包まれてる?いやそんな生優しいモノじゃない。頭の先から足の爪先まで、生暖かいブヨブヨのナニカが、俺の身体を丸ごと覆っていて、身動きが取れない。


これは……壁?でも何かおかしい。壁にしては不自然に柔らかいし、生理的な不快感を感じる。鼻にツンとくる臭いのせいで吐き気までしてきた。


『…ー……ッぅ…!』


声が出しづらい。ここは何処だ?息が出来ない。酸素が欲しい。何でここにいるんだ?

目だけを動かして壁を良く見れば、それは生き物の様に蠢いて、俺を更に奥へ押し込もうとしている様に見える。


何かの体内?喰われて呑み込まれてる?でも何で……。


『………………ぁ…』


そうだ。スタンピードが起きて、父さんと母さんが俺を隠した後に…それで……あれ?














父さんと母さんは?


『……ギ、ゥァアアアアアアア!?』


突然、身体の右側が焼け付く様に痛みだし、思わず苦悶の悲鳴をあげる。肉が溶ける不快な臭いと共に、右肩から先の感覚が無くなる。


『ヒッ…!ヒィ……!?』


痛い痛い痛い痛い痛い。もがこうとしても肉の壁に圧迫され、身動きが取れない。それどころか、俺を逃すまいと更に密着してきて、今にも圧死してしまいそうだ。


『父、さ……かあ……!』


助けて。その言葉が出かけた時、自分の置かれた状況が走馬灯の様に甦る。

そうだ。俺はあの白い化け物に見つかって、何も出来ず呑み込まれたんだ。化け物の体内を壁だと思ってたのか。じゃあまさか、俺は今コイツに消化されてるのか!?


……待て。コイツが出てきた所って。


『…ぁ"あ"?』


おい、テメエ。











父さんと母さんに何しやがった……!!


『…ごろ"、じて……やる……!!!』


ふざけんな。俺の大事な人達を食い殺したってのか。もしそうなら許さねえ。殺してやる。

身体の痛みなどどうでも良くなった。俺を呑み込んだ化け物に復讐する為、必死に身体を動かす。

感覚が残る左手を、肉の壁に突き立てる。爪が剥がれ、指が折れる。でも関係ない。肉に指をめり込ませ、抉り出す様に肉を掻き回す。

顔に激痛が走り、視界が半分見えなくなる。どうでも良い。口を開け、肉を噛みちぎる。普段の3分の1くらいしか噛み跡が付かなかった。それでも肉を食い続ける。


『…ぉ…ろずぅ…!』


殺す。殺す殺す殺す殺す殺すコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス。


テメエラ全員皆殺シニーー


















「………知ってるヤクザさんだ」


「ふざける余裕があるなら、怒る時間を増やしても良さそうだな」


「ごめんなさい」


気付いたら、白い部屋で羽場さんから見下ろされていた。見慣れない状況で、思った言葉がつい出てしまった。

ここは……DAGの医務室?何でこんな所に?確か俺は、吸魔の墓でダンジョンアタックを始めて、先輩とあまにゃんさんに会って、イレギュラーが現れて……あっ!


「先輩!あまにゃんさん!」


辺りを見渡し、他のベッドに二人がいないか確認する。しかし、医務室のベッドを使用しているのは、俺一人だけだった。


「彼女達は何ともない。怪我らしい怪我をしたのはお前だけで、お前と共に戦った方は一つ星のHPポーションで治癒出来る程度だったぞ」


「あ、そうですか……良かったぁぁ…」


身体の力が抜け、へにゃへにゃと姿勢を崩す。あ、痛みが無い。俺の傷も治ってる。


羽場さんから顛末を教えてもらった。俺が配信を終えたと思ったら、実はボタンを押し間違えていたようで終わってなかった事。怪我で気絶した俺を、先輩とあまにゃんさんが運んでくれた事。二人は明日学校があるから、つい先程帰った事。


「そう、だったんですね……あー、お礼言えなかった。羽場さんもすいません、迷惑をかけちゃって」


「別に迷惑ではない。お前……いや、お前達はダンジョンアタッカーとしてするべき事をしただけだ。それを評価し、監督するのも仕事の一環だからな」


まあそうだよな。羽場さんは後見人と支部長としての責任があるから、義務感でここにいてくれてるだけか。

問題は二人だよなぁ。怪我のせいとはいえ、まさかダンジョンで寝落ちしてしまうなんて……しかもお礼も言えずに二人は東城へ戻ってしまった。東城に行った時は、ちゃんとお礼言わなきゃ。また土下座かな。


それにしても、最悪すぎる夢を見たような……。いや夢にしては、あの苦しさも痛みもリアルに感じた。奴等への殺意も。

まさか、D災の時の記憶が少し戻ったのか?チラリ、と右腕を見る。夢の中では感覚が消えてたけど、ちゃんとついてるし自由に動かせる。


……ん?


「どうした?」


「え。あー……えっと…」


右手に見覚えの無い物が見えるが、それより考えなきゃいけない事がある。俺がモンスターかもしれないという事は、周りからしてみれば、いずれ脅威になるかもしれない存在が街を何食わぬ顔で歩いているという事でもある。それを良く思わない人もいるだろう。最悪、俺の後見人であり、ダンジョンアタッカーの資格をくれた羽場さんの責任問題に発展してしまうかもしれない。


国としても、危険な存在は野放しにしてはおけないんじゃないか?その場合、俺はDAGに拘束されて研究対象にされてしまうかもしれない。その時、羽場さんに何かしらの社会的制裁を加えられてしまう事だってあり得る。


「……羽場さん。俺、モンスターかもしれないんですよ」


「知っている。配信を観ていたからな」


「あ、そうなんですか。ありがとうございます」


まあそりゃそうか。監視しとかないと、何するか分からないって思われてるんだろうな。


「それで、ですね………えー……もし俺がDAGから『危ないから捕まえろ』っていう命令があったら……」


言え。言うんだ。もうこれ以上、羽場さんやご家族に迷惑をかけるわけにはいかないだろ。


「………俺を殺すか、半殺しにした状態で、DAGに渡して下さい。そしたら、羽場さんがモンスターに何の慈悲も無いって上にも伝わると思います。それで『知らなかった』とか言えば、罪も軽くなるんじゃ……」














「いやお前を売るつもりは無いが」


「あれぇ?」


あの、今からドナドナされる覚悟で言ったんですけど。さっきの覚悟を返して?何で普通にこっちの肩持つんですか?DAGの支部長ですよね?

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