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スレ主がダンジョンアタックする話  作者: ゲスト047562


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65/159

第65話 受け継がれるもの

「ぁ……?」


腹部に鋭い痛みが走り、思考が強制的に中断。思わず膝をついてしまう。

今のはエアバレットか。思考が鈍っていたし、考え事をしていたせいで反応が遅れてしまった。

けど、何で今のマジックスキルが、俺の身体を抉れたんだ?コイツにそこまでの強さは見えなかったのに。いやそんな事よりも。


“そりゃ魔猪を統べる者を取ってからでしょ”

“魔晶食ってからじゃねえのかよww”

“魔晶食う前からかもしれないって事?”

“あー確かに普通は魔晶を食べようなんて思わないわな”

“どした?”


『ォォオオオ……』


「はっ、はっ…!嘘だろ、いつから…?」


思い返せば返すほど、自分が分からなくなっていく。

D災の時五体満足で生き残れたのは何でだ?病院をすぐ退院出来た理由は?運が良かったから?スキル『覚醒』を持っていたから?身体が強かったから?










俺がモンスターだったから?


“スイッチ?”

“おいどうした”

“あまにゃんと先輩が戻ってんぞw”

“大丈夫かー”

“動け動け”


思考がぐちゃぐちゃになっていく。目の前に倒さなければいけない敵がいるのに、最悪な考えに思考を埋め尽くされる。


もし、俺がホントにモンスターだったら。


俺の父さんと母さんは?


二人は間違いなく人間だった。


俺は?


もし俺がモンスターだったら……












両親の記憶は偽物だったのか?


あの愛も、偽物?


「…ェエ"ッ」


吐いた。吐瀉物が撒き散らされ、地面を汚す。

次の瞬間、地面から岩の槍が飛び出し、俺を吹き飛ばした。


“!?”

“おい!!”

“スイッチ!?”

“何された!?大丈夫か?!”

“二人が戻ってるぞ!頑張れ!!”


受け身を取る力も無く、地面を転がる。

気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い。

父さんと母さんがくれた愛情は《《人間の》》戸張照真に与えられたもので……じゃあ俺は?《《モンスターの》》戸張照真は一体何なんだ?ホントは最初から俺はモンスターで戸張照真という人間を……


「ッア……ェエ…!」


お腹がグチュグチュと煮える感覚がして吐き気が止まらない。口から黄色い液体が出ていくのを見ながら、今度は冷たい感触が横から飛んできる。ハンマーで殴られた様な衝撃が響き、ゴロゴロと地面を転がる。


『ォオオオオオオオオオオ!!』


黒い牙が抉れた腹部に突き刺さり、身体が浮く。頑強さを誇る俺の身体を、黒い牙は簡単に食い破った。


「ガッ、ハ……!」


“うわああああああああああ”

“え、これヤバい?”

“スイッチが攻撃をまともにくらってる!?”

“スイッチ何があった?!”


嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。手放したくない。あんなに温かいモノを失くしたら俺が俺でなくなってしまう。いやそもそもそれは本物の戸張照真のモノじゃないのか?じゃあ俺は?俺には何も……

自分という存在が崩れていくのを感じる。視界が明滅し、世界が色を変え続けている。それに目を背ける様に敵に攻撃された事を思い出し、自分の身体が動くか確認する為に、腕へ目をやる。













俺の右腕が、白いブヨブヨの皮に変貌していた。


「うぉぉアアアアアアアアアアアア!!!」


「危ないッ!」


腕を切り落とそうと振り下ろした手刀を、誰かが掴む。そして万力の様な力が、俺を拘束した。


「解毒剤を!」


「はい!」


次いで、口に何か押し込まれる。思わず飲み下してしまった途端、世界が正常な色を取り戻した。


「ぅあ……!?」


「……うん、眼の色が正常に戻った。幻惑の毒が消えたね」


「はっ……はっ……せん、ぱい?」


耳元で囁かれる甘い声に振り向くと、先輩が俺の身体に密着していた。どうやら、さっきの拘束は先輩がしたものらしい。


「あれ、何で……」


「スイッチさんが危ないって、コメントで教えてもらったんです」


解毒剤の空き瓶を持ったあまにゃんさんが、俺を抱き起こす。そのまま俺を胸に抱き締め、両腕が優しく包み込む。


「ファンの皆さんが、スイッチさんが本当はモンスターなんじゃないかって言ってました。最初からモンスターだったから、こんな目に遭ってるんだって」


「………」


心が深く沈んでいく。もう自分が何なのか、それすらも分からない。

やっぱり、俺は……。


「でも、アタシはスイッチさんは立派な人だって知ってます」


「ぅえ……?」


思わずあまにゃんさんを見上げる。彼女は優しく微笑んで、まるで赤子をあやす母親の様に俺の頭を撫でていた。


「アタシを救ってくれた人が。アタシに勇気をくれた人が、人を危険に晒すモンスターなんかじゃないって事は、《《アタシが1番》》知ってます「あ"?」。スイッチさんのファンの皆さんも、それを分かってるから応援してくれてるんだと思います」


“いい加減米に気付けスイッチ!”

“出すもん出してスッキリしたか?”

“毒?何で効いたんだ?”

“お前はある意味モンスターだけど聞き分けのある良いモンスターだぞ”

“スイッチそこ代われ”

“あまにゃん代わってくれ私が抱く”

“↑おいばかやめろ”


言われて、コメント欄を見る。スレや配信で俺を知ってるスレ民の人達が、相変わらず揶揄い混じりに俺を応援……応援?まあ声を掛けてくれていた。


「……でも…」


「アハハ、これだけじゃ難しいですかね?それじゃあ、今度はアタシが教えます」


あまにゃんさんが俺を放す。足に力が入らない俺の身体を、今度は先輩が支えた。

一瞬、あまにゃんさんと先輩の視線が交錯した。火花が見えたような気がしたのはまだ毒が抜け切ってないからか?あまにゃんさんは踵を返し、さっきまで俺が戦っていたイレギュラーと対峙する。


「あ、あまにゃんさん……」


「スイッチさんが教えてくれた生き様は、偽物なんかじゃありません。スイッチさんの家族への想いも、アタシ達に与えてくれた希望も!全部貴方が教えてくれた《《本物の気持ち》》です!」


“そうだそうだ!”

“俺はお前が何だろうと気にしないぞ”

“お前はお前のままでええんやで”

“三鶴城礼司:人の為に泣ける君は、モンスターなんかじゃないさ”

“BOT!?”

“三鶴城礼司も見てるぞ!”


「皆、貴方を独りぼっちになんかさせません。それでももし、貴方が自分を疑ってしまうなら……」


ヴァルカン・ロッドの中央に嵌め込まれた魔晶が光を放ち始める。五つの花弁がロッドから外れ、ファンネルの様に彼女の周りを回る。











「アタシが貴方を信じます。そして信じてます。貴方から貰った生き様と勇気は、こんなイレギュラーなんかに負けないって」

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