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スレ主がダンジョンアタックする話  作者: ゲスト047562


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第55話 周心輪の迷走

「嘘……エリカ…嘘だよ………!!」


「マジかよ………」


福平のスタンピード……ダンジョン災害は、大惨事だったらしい。福平の街は地図から消え、住んでいた人達は皆入院しているそうだ。日本一有名なパーティ『至強』も、半分以上のパーティメンバーが死んでしまったらしくて、リーダーの三鶴城礼司さんが慰霊碑の前で黙祷を捧げていた。


「…………」


「心輪、大丈夫?」


「今日は学校行かなくて良いからな。お父さんの所も色々あり過ぎて、帰るの遅くなる………辛い時に傍に居てやれなくて、ごめんな」


「うん……ありがとう。お母さん、お父さん」


DAGでエリカさん達のお葬式に参加して、気付いたら自室にいた。自分がどうやって帰ったかも分からず、自室のドアに背を預けてへたり込む。


「………」


国は『今世紀最大最悪の災害』として、今回のD災の復興支援を始めてるらしい。でも、福平の惨状は復興なんて望めないってDAGから聞いた。多分、殆どが被災者の支援や義援金に充てられるそうだ。

アタシより前から友達だったカズヤさんとモモカさんは、ショックでダンジョンアタックは少しお休みするらしい。当然だと思う。昨日まで一緒に笑い合っていた友達が、片足しか残ってなかったんだから。


「……ぅ、グスッ…!ぅぁ……、ぁぁぁぁああアアアアアアアアアアアアッッ……!!!」


助けられなかった。あの人みたいに、誰かを助ける為にダンジョンアタッカーになったのに。

強くなったと思っていたのに、大事な時に何も出来なかった。『アタシじゃまだ誰も救えない』と、遠回しに拒絶されてしまった。

悔しくて、悔しくて、悔しくて。あの時みたいに泣きじゃくる事しか出来ない自分がいて、情けなくなった。






「え。ここって……」


もっと強くなる為に、ソロでダンジョンアタックは続けていた。そんな時、モモカさんから連絡が来た。

「もう大丈夫だから」って文面と一緒に、「久しぶりに、三人でダンジョンアタックしないか」っていうお誘いがあった。二人が前を向こうとしているのに、アタシだけエリカさんの事で足踏みしている訳にはいかない。勿論OKした。


でも、やってきたのはアタシが初めてダンジョンアタックを成功させた一つ星ダンジョンだった。


「何でまたここに?アタシなら大丈夫ですよ。この前DAGからソーサラーのジョブも貰って…」


「あ、あー。ごめんね?俺ら久々のダンジョンだからさ、楽な所で肩慣らししときたくて」


「そうそう。ちょっとだけ付き合ってくれる?」


「……そう、ですよね。分かりました」


でも、その日以降のダンジョンアタックも、一つ星ばかりで、段々と二人が『安全に終わらせよう』としてるのが分かってきて。

アタシの知ってた、勇気のある強い二人は、もういなくなってしまった。






DAGから、宣伝の為のPR動画に出てくれないかと打診があった。D災以降、ダンジョンアタッカーになりたい人が激減して、人材の募集に必死らしいのは知ってたけど、自分に関係無い事だと思ってた。


「良いんじゃない?お金も出るらしいし、ダンジョンに潜るより安全だもの〜」


「お父さんも賛成だな。でも、無理そうだと思ったらすぐに相談してくれ」


両親の承諾もあって、PR動画を作成。テレビやムーブでアタシが前面に押し出された動画が流されるようになった。


「え。ムーブで配信して欲しい……?」


「はい。DAGに周さんについての問い合わせが多く……宜しければ、引き続きDAGへの宣伝としてダンジョンアタックの様子を配信していただければと…」


あの映像は予想以上に反響が大きかったらしい。でも、相変わらずダンジョンアタッカーの数は減ったまま。そこで、DAGの全面協力の下で、アタシにムーブで配信活動をして欲しいって連絡が来た。

DAGの為になるなら、とアタシは今度はカズヤさんとモモカさんとも話し合って、ムーブで配信する事にした。


「流石に、本名をそのまま使うのは良くないですよね…?」


「そうだねー。俺はゼッターのアカウント名そのまま使うわ」


「私も。周ちゃんは?」


「あ、アタシは……」


周心輪、あまねころん、あま、ねこ、ろん……


「あ、あまにゃんで」


「ブハッ!良いねー可愛いじゃん!」


「あはは!じゃあよろしくね、あまにゃん!」


そして、DAGの宣伝の為に三人で配信活動を始めた。

ムーブの配信は大成功。アタシ達のチャンネルの登録数も順調に増えていった。でも、DAGからしたらメインはアタシで、二人はおまけ扱い。段々とそれに気づき始めて、アタシ達のパーティは少しずつおかしくなっていた。


「心配すんなって!あまにゃんは《《俺が》》、守ってやっからさ!」


「あ、ありがとうございます」


カズヤさんは、アタシを贔屓する様にひたすらアタシの前でタンクのアピールをしてきた。モモカさんは、段々とアタシを避けるようになって、あんまり喋らなくなった。






「いい加減にしろっ、この屑野郎!!」


モモカさんとカズヤさんが喧嘩した。というより、アタシに手を出そうとしてきたカズヤさんから、モモカさんが守ってくれた。


「ごめん、ごめんね周ちゃん……ッ!」


事情聴取の為に来た警察の前で、モモカさんがアタシに泣いて謝ってくる。


「そんな、モモカさんのせいじゃないのに…!」


「違うの……ムーブで配信始めてから、周ちゃんの人気に嫉妬してた私が悪いの。カズ君の事だって、私がちゃんと見ておけば防げたのに……ごめん、ごめんなさい…ッ!」


泣きじゃくるモモカさんに、アタシは何も言えなかった。

今回の件で、カズヤさんはダンジョンアタッカーの免許を剥奪。モモカさんは情状酌量の余地を鑑みて免許停止処分になった。けど、モモカさんはDAGに資格証を返却して、ダンジョンアタッカーを引退してしまった。

本当はムーブの配信も止めようと思ってたけど、心配の声をくれるファンの人達を裏切る様な気持ちがして、結局ズルズルと続ける事にした。


「……どこで間違っちゃったのかなぁ」


ダンジョンアタッカーになるのが夢だった。けど現実は、大切なパーティメンバーを守れず、メンバーの不和を招いて解散に追い込んで、ネットではアイドルの様に振る舞う日々。


「アタシ、何でダンジョンアタッカーになったんだっけ…」


誰か教えて欲しい。アタシがダンジョンアタッカーでい続けても良いと言えるような理由を。

強くて、カッコよくて、皆が憧れる様なダンジョンアタッカーを教えて欲しい。

アタシの心は、もう限界だった。


そんな事だけ考えながらダンジョンアタッカーを続けていたある日、誰かがソロで配信しているのを見つけた。


「初配信なのに、結構同接いる……」


無名の人が配信で同接を稼いでいるという、ほんの物珍しさ。それだけの理由で、その配信画面を開いた。









『オラアッッ!!』


アタシの憧れた『強さ』が、そこにあった。

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