第47話 続・吸魔の墓B1
「とりあえず、わたしが良しと言うまでマジックスキルと纏魔気鱗、極光星鎧の使用は禁止。普通のコモンスキルのみで戦ってもらう。そもそも吸魔の墓の特性上、マジックスキルの連打は控えるべきだけどね」
「素の身体能力だけで戦うって事ですかね」
「その通り。正直、君にこのダンジョンは役不足だ。だが、練習台としてなら丁度良い。コアモンスターも豊富にいるからね」
“三つ星ダンジョンが練習台って”
“改めてやべえなこの戦力”
“たった2人でトップパーティの座を掴んでいた不動の立場が…w”
“鬼に金棒じゃなくてユグドラシル持たせてる”
“草”
「それに、さっきは誰もいなかったから良かったものの、近くに人がいれば巻き込んでしまう恐れもあるからね」
「あ、そうですね。分かりました」
言われてみればそうだ。俺達以外のダンジョンアタッカーだって、まだこの層を探索してる可能性も考慮すべきだよな。迷宮型は、他の人が近くにいる事も考えて動かないと駄目だな。
気持ちを新たに、装備の感触を確かめながら進んでいく。すると、前方から気が飛んでくる。
「ふっ……!」
飛んできた物体をしゃがんでかわし、一足で近付く。待ち構えていたフォグマミーの右胸付近にあるコアを、鉄槌で鎖骨から尾てい骨まで一気に叩き壊す。
“ファッ?!”
“何や!?”
“何か飛んできたと思ったらフォグマミーがバラバラにされてんだが……”
“スロー再生しなきゃ…”
第二射をガントレットで防ぐ。軽い音と共に、飛んできた物体が地面に落ちる。
「……針か。って事は…」
「ポイズンスティングだね。暗がりから毒針を連射してくるから気を付けるんだ。小柄で俊敏だから、普通のダンジョンアタッカーなら苦労するだろうね」
「ありがとうございます先輩」
“サンキュー先輩”
“サンキュー先輩!”
“このダンジョン毒攻撃ばっかで嫌い”
続けて針がライトの届かない暗がりの向こうから飛んでくる。一気に近付こうにも、先程の様にフォグマミーが待ち構えている。苛立ちでマジックスキルを連発すれば、吸魔の墓のせいでマナの枯渇を早めてしまうことになる。
なるほど、確かに嫌なダンジョンだ。コアモンスターしか出ないから、というだけじゃない。不用意にマジックスキルを撃てず、向こうは遠距離から引き撃ちし続ける。こちらはマジックスキル以外の遠距離への対処法を持たないと、ジリ貧になって負けるしかない。三つ星ダンジョンに指定されるだけの事はあるな。
「コレをスキル無しでかぁ」
「難しいかな?」
「いえ、楽しくなってきました」
“イカれてる奴は言うことが違うぜ”
“まあOWあるしいけるやろ”
“OWって何だよww”
“オーバードウェポン、略してOWか”
再びダッシュ。今度は壁を蹴り、フォグマミーの上を抜ける。すれ違いざまに、コアは無いが頭を蹴り砕き、攻撃出来なくしておく。
「スイッチ君、余裕があればオーバードウェポンにマナを流してくれ」
「マナを…?分かりました!」
障害物を越えた先に、子犬程の大きさのコウモリの翼を持った蜂ーーポイズンスティングを見つける。
先輩に言われるがまま、空中でガントレットにマナを流すと、ガントレットの前腕から何かが飛び出した。
「!?これ……」
「放てッ」
咄嗟に、ガントレットを横殴りに振るう。飛び出した得物……マナで構成されたワイヤードナイフが、経路上の壁と敵を斬り捨てた。ポイズンスティングのコアも、その軌道上で切り裂かれる。
“うおおおおおおおお!!!”
“カッケエエエエエ”
“その隠し武器はエッッ過ぎやろ”
“スイッチ は 飛び道具 を 手に入れた!”
「おおおおおおお!!カッコいいいいいいいい!!」
「どうだい?マジックスキルを基盤に開発した、マナウェポンは」
「最高です!!」
“ママー僕もあれほしー”
“それじゃあ五つ星ダンジョンアタッカーになろうねー”
“ハードル高過ぎで草生える”
“良いなー俺も使いたい”
凄い。先輩凄い。興奮し過ぎて、それ以上の言葉が出てこない。こんな武器まで開発出来るなんて、やっぱり天才なんだなぁ。
そりゃそうか。将来ガーランドウェポンズを継ぐか、副社長くらいになるような人だ。格というか……俺とじゃ、住む世界が違うってハッキリ分かる。
「あ、先輩。このダンジョンだと、マナウェポンは使いにくいですね。壁を斬った時に、やっぱり吸われちゃいました」
「それも踏まえての試験であり、特訓だからね。やはり、マナウェポンでも吸魔の墓で吸われる対象になるのか。これは要対処だね。それと、これまでと今の戦いを見て思ったのだが、君はまだマジックスキルを撃ち慣れていないね?」
「え?」
“え?”
“は?”
“あの飛刃が、撃ち慣れてない……?”
“まだ進化出来るの?!”
マジックスキルを……?どういう事だ?マジックスキルはマナと気を使って放つスキルで、マナと気を上手く融合させる事で強くなる…っていうのが、俺の流気眼で視た結論なんだけど…。
「マジックスキルは、マナを集めて放つだけじゃまだ半分なんだ」
「えっと……どういう事でしょうか?」
「マナを集めた後に『どういった形で』放つのか。これが出来て、初めてマジックスキルを扱うジョブは一流と言われるんだ」
“へー”
“知らんかったわ”
“嘘だろ俺半人前だったのかよ…”
「そうなんですか……」
話していると、再生の終わったフォグマミー、それと様々な武器を持った骨だけのコアモンスター、スケルトンが大量に湧き出してきた。
「丁度良い。私がアドバイザーとして実演してみせたいんだが、構わないかな?」
「えっ!良いんですか!?」
“伽藍堂叶の戦い見れんの!?”
“ワクワク”
“伽藍堂シスターが戦う所なんて初めて見るわ”
“めっちゃレアだぞこの配信”
“凄えええ!!先輩そこまでしてくれるのかよ!”




