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スレ主がダンジョンアタックする話  作者: ゲスト047562


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第27話 RE:vsオークキングⅡ

さて、まずは下拵えだ。


「ふんっ」


バッグから取り出したのは、白い塊。


“獣脂?”

“どうした?”

“何で急に獣脂?”


そして、イジェクションボアの牙4本。獣脂を牙で切り刻み、牙を脂塗れにする。


“きったね”

“草”

“まじで急に何してんねんww”


俺が他に気を取られているのを好機と見たか、オークキングが肩から突進してくる。


そっちから来てくれるならありがたい。


「シッ!」


イジェクションボアの牙を剣の様に使い、再びオークキングを切り裂く。左肩が左右に分断されるも、超再生を前提にしているのか意に介さない。


だが、その超再生が今は仇になる。

イジェクションボアの牙を、再生途中の肩にぶち込む。そして、異物混入したまま再生したオークキングは、蹴りを繰り出そうとしてバランスを僅かに崩した。


「そこぉっ!!」


バランスを崩して浮いた脚を手刀で切り飛ばす。再び超再生する前に、イジェクションボアの牙を脚に。


「……!?」


「みっつぅ!」


崩れ落ちるオークキングの腹目掛け、3本目を突き刺し、背中まで貫通させる。すぐさま超再生。イジェクションボアの牙が取り除けなくなる。


“ファーーーーーーーwww”

“牙をどんどん身体に打ち込んでいくぅ!!”

“楔かな?”

“後一本はどこ刺すんや?w”


「ラストぉッッ!!」


「ガッ……!」


最後の1本は、仕返しの意味も込めて、右腕に掌から深く埋め込んでやる。

あ、コア壊れた。


身体の異物感を抜く事が出来ないオークキングの動きが、明らかにおかしくなる。今までの洗練された動きが消え、ガチ…ガチ…とまるで錆びた機械みたいに一歩踏み出す事さえ難しそうだ。


“すげええええええ!?”

“オークキングの動きが遅くなったww”

“超再生って、こうやって攻略するんだぁ……w”

“さっきスイッチから学ぼうとしていた一つ星君、これ出来る?”

“無理です!”

“良い返事”

“草”


「さて、と」


バッグから、今度は魔猪の兜を取り出して、獣脂を塗りたくる。それを……


「ダンクッ!!」


オークキングの頭に、前後を逆にして被せてあげる。オークキングは他のオークよりも大きいけど、兜も大きいし平気平気。


あ、脱げない様に兜をもっと凹ませておこう。


「ヨシっ!」


“何がヨシなのか”

“ひっでぇwww”

“オークキング君、もう前見えないねえww”

“スイッチ、割とエゲツないな……w”


視界も塞がれ、身体中のバランスがおかしいオークキングの体がグラつく。そこを見逃さず、腹部を蹴り飛ばす。衝撃で腹部が破裂し、その部分が再生する前に、バラバラに切り刻んだ獣脂を腹部に詰め込む。


これで、準備はOKかな?


「オラアッッ!!」


オークキングの脚を掴み、思い切りぶん投げる。投げた先には、煌々と燃え盛る篝火。


「ーーーッッ!!」


篝火に触れた途端、オークキングの身体が一気に燃え上がる。大量の獣脂を持った肉体が、面白い様に焼けていく。


“脂を切り刻んでたのはこの為か!”

“もっと燃えるがいいや!ww”

“脂ってこんな燃えるのか。こわ”

“汚ねえ花火だ”

“これもう勝ったろww”

“やったぜスイッチ!”

“俺はお前を信じてたぞー!!”


コメント欄が盛り上がっている。しかし、魔眼は篝火の中でも消える事のないマナを、未だ捉えている。


「……凄えな」


やがて、壊れた篝火の中から、肉体の炭化と再生を繰り返すオークキングが現れた。火の粉を纏いながらも、体から伝わる戦意には衰えが無い。

だが、完全に無事とはいかなかったようだ。5つあったコアが、残すは一つだけとなっている。


“マジ!?”

“あれ生きてるのか”

“火だるまになったのにもうほぼ全快やんけ”


すると、オークキングが自身の右腕を掴んだ。何をするかと警戒していると、いきなりその右腕を引きちぎった。


“は?”

“え?”

“winner:超再生にモノを言わせて、イジェクションボアの牙を取り除いてるんだね。コア破壊の懸念をしていないところを見るに、恐らくコアは残り1、2個だろう”

“サンキュー先輩”

“サンキュー先輩!”

“サンキュー先輩!”


続けて左肩、脚、腹と、イジェクションボアの牙が埋め込まれた場所を無理矢理千切り取る。

マナで作られたモンスターとはいえ、痛覚はある筈だが、オークキングは堪えた様子も無く淡々と自分の身体を破壊していた。


「マジックスキルは無し。自分の肉体と大量のコモンスキルだけで、王と呼ばれる程に強くなったのか……」


なんて武骨で、愚直で、そして王道な敵だろう。心から感心する。

相手も武器を持ってこそ対等だ。真っ向勝負で打ち負かしてこそ王だと言わんばかりの自尊心に、俺も本気で応えたくなった。


「ふぅ……」


息を整える。早鐘を打つ心臓に手を当て、自分が生きている事を感じる。

まだ、俺はここにいる。


「纏魔気鱗」


“キターーーーー!!”

“おっしゃああああ!!”

“全開で行くぜ!!!”

“ーーついてこれるか?”

“え、何そのスキル知らない”

“エクストラスキルか!?”


自分の身体を巡るオーラを見つめる。青と黄色の光が、俺を護る様に追従する。

混ざり合い、しかし完全に交わる事のないその二色の間に存在する『境界線』を、消す。


「マナは気、気はマナ」


“え?”

“おん?”

“マナと気?”

“今度は何してるんだ?”


手を打ち合わせる。片手に気を、もう片方にはマナを込める。


「色は二つ。オーラは一つ」


「なら、その二色に違いは無い」


魔眼で気とマナを初めて見た時、そして纏魔気鱗で覆われた身体を見た時に思った。

まだ、これは《《不完全》》なんじゃないかと。気とマナをどれだけ融合しても、青と黄色は決して一色にはならなかった。でもそれは、気とマナを同じモノとして扱おうとしていた俺が、『気は気』『マナはマナ』と、心の何処かでそう考えていたせいだ。


手に集めた気とマナが溶け、一つの色となっていく。

魔眼で気とマナを視ていた分、余計に分かったつもりになっていた。だから、俺の思考が不純物となって、いつまでも青と黄色のままだったんだ。


「……おお」


纏魔気鱗が一つのオーラとなり、オレンジ色に変わった。そこは緑じゃないのか。


“スイッチが光ってる!?”

“何かオレンジのオーラ見えるんだけど、錯覚かこれ?”

“winner:纏魔気鱗を更に錬磨しているのかな?それによって、我々の目にもはっきり分かる程に気とマナが具現化された…?”

“サンキュー先輩”

“サンキュー先輩”

“つまり……スイッチ、戦いの中で更に強くなってるって…こちょ……?”


ゴトン、と音がする。見ると、魔猪の兜が地面に落ち、オークキングに新しい頭が生えていた。

コアがある限り死なないっていうのは知ってたけど、自分で頭捩じ切って即再生は流石に化け物だなぁ。


「お互い、手の内は出し尽くしたよな?」


強かった。誇張や謙遜なんかじゃない、本当に強かった。そして、その強さがあったからこそ、今の俺がいる。

敬意、感謝、殺意。万感の思いを込め、構えをとる。オレンジの纏魔気鱗が全身に巡り、重力が無くなったかのように身体が軽くなった。

俺の構えに呼応する様に、奴も同じ構えをとる。奴の全ての力が、右腕に集まっていくのを、魔眼が捉える。


「これで終わりにしよう」


僅かな静寂、永遠にも感じる刹那の時間。オークキングが動いた。

突進。そして全力の右ストレート。俺はそれを身体で受け止めーー


「ーーフッ………!」


渾身の右ストレートが胸を貫き、最後のコアを打ち抜いた。


“え?”

“は?”

“瞬きしたら位置入れ替わってんだけど!?”

“何が起きた?”

“winner:オークキングの攻撃を受け止め、カウンターでコアを砕いた。時間にして0.2秒程の刹那の攻防だったよ”

“サンキュー先輩”

“サンキュー先輩”

“ってことは……”


「………ありがとう、オークキング」


右拳を、天に掲げる。











「勝ったのは、俺だ」

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― 新着の感想 ―
[良い点] ネギマ、もしくは金色文字の闘法。こんな早くだすとは、品切が心配です。
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