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【書籍1巻発売中!】スレ主がダンジョンアタックする話  作者: ゲスト047562


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168/168

第168話 雨降って

「…………ぅ」


“起きろーーーー!!”

“生きてるううううううううう”

“winner:流石私の後輩だね”

“あ、ッスー……”

“そ、そっすね”

“田中ヨルフィ@打倒GW‼︎:流石私のお兄ちゃん”

“わっつ?”

“何それ知らん……怖”

“winner:は?”

“G並にしぶとさ定評のある男”


どうなった……?俺は、確か三鶴城さんに……そう。攻撃の衝撃で何も見えなくなって、そのまま吹き飛ばされたのか。


「まだ、まだぁ……!」


身体が壁に埋まっていた為、無理矢理這い出る。下を望む様な場所で埋まっていた俺が見つけたのは、同じ様に地面に仰向けに埋まっている、所々鎧の剥がれた三鶴城さんの姿。


“嘘だろ”

“もうやめとけ”

“いや限界やろ”

“無理無理無理”


「ぉ……ぉぉぉおおおおあああああああああああああああああ……!」


動け。動け動け動け。

悲鳴をあげる肉体を無視して、がむしゃらに突っ込む。

背面のブースターを起動して起き上がった三鶴城さんが、剣を構えようとしたその時。


『スト〜〜〜〜〜〜〜ッップ!!そ、そこまでですそこまで!!』


「へふぁっ!?」


「む」


突然の言葉に驚き、空中で姿勢が崩れてしまう。

それを見た三鶴城さんが両腕を広げ、地面にダイブしそうになった所を見事にキャッチしてくれた。


「大丈夫か?」


「アッハイ。ナイスキャッチデス」


“草”

“親方!空からスイッチが!”

“問題ない。撃ち落とせ”

“草草の草”

“へふぁ?www”

“さっきの情けない声何だよwwww”

“叡智ね”

“分かる”


『もう結界張れる人いません……我々も限界です』


「……だ、そうだ。勝負はお預けだな」


「……いやぁ。どう考えても俺の負けですよ」


三鶴城さんの腕の中で脱力しながら、先の戦いを反省する。

確かに、俺の身体は今までで一番の《《キレ》》があった。けどそれは、【勇者】というバフありき。もっと対等な条件で戦ってたら、結果は散々なものだっただろう。

うーん……やっぱり悔しいなぁ。経験の差とか武器の性能とか以前に、単純に手数が違いすぎる。俺なんてマジックスキル二個しかないしな。【吸魔】は……まあうん、触れなきゃ意味無いし。

溜め息を吐きながら伸びをする俺の濡れた前髪を、三鶴城さんの指が優しく掻き上げる。


「そんな事は無いさ。君は行動で皆に……私にさえ希望を見せてくれた。それは君にしか出来なかった事だ。誇って良い」


「……映画のワンシーン?」


“ギャルゲーのイベントスチルかな?”

“的確で笑う”

“キャーッ!綺麗な薔薇よ!”

“ギャルゲの女性版じゃねえかwww”

“乙女ゲーな”


腕の中から抜け出し、身体の傷をチェックする。

あ、ライフポーション?ありがとうございます。けど実は俺も持ってるんですよこれが。それに傷は少ししたら塞がりますから……いやホントに気にしないで下さい!体質!そう体質みたいなもので!


「り、リーダー……」


その時、シェルターの入り口から声がかかる。

振り向くと、俺と同じくらい服をボロボロにした男性が、涙目で俺達を見つめていた。


「あの、だい……」


「スイッチイイィィィ!!」


「リーダーああああああああ……っ」


「ぅおうっ!?」


男性を押し退けて別の人が。更にその奥から沢山の人が雪崩れ込んでくる。

リーダー呼びから『至強』と分かる彼らは、目を腫らしながら俺達を取り囲んで感謝や謝罪の言葉を口に出している。中には泣きながら周りの言葉に頷いている人も。


“何や何や”

“winner:結界系のスキルは許容量を超えたダメージを受けると本人にフィードバックされる。恐らくシェルターに結界を張っていた一人だろう”

“サンキュー先輩!”

“サンキュー先輩!”

“これ全員至強かww”

“まあ本拠地だし、こんな凄い戦いしてたら来るわ”

“田中ヨルフィ@打倒GW‼︎:凄い”

“凄いね”


「……皆」


「……どうですか、三鶴城さん。《《届きましたか》》?」


この戦いをした意味はちゃんとあった。彼らの表情が、それを雄弁に物語っている。

俺と同じ……いや、それ以上に届いてほしかったのだろう。三鶴城礼司という、あまりに孤高すぎる生き様を持つ人に、『自分達はここにいるぞ』と。

三鶴城さんはやや慌てた様に皆を見ていたが、俺の言葉に笑みを浮かべた。


「……ああ、《《届いたよ》》。君のお陰だ。本当に感謝している」


「三鶴城さん、次は俺とやりましょう!」


「いや私とお願いします!」


「これからもずっと付いて行きます!」


ああっ!三鶴城さんがどんどん囲まれて、姿が見えなくなっていく!

けど、それだけ慕われてる証拠なんだよな。やっぱり凄い人だな、三鶴城さん。

……そういえば。戦いに夢中で忘れてたけど、これ配信中だったわ。もう予定の時間大分過ぎちゃってるし、パパっと終わらせようか。


「三鶴城さーん!終わりの挨拶したいでーす!」


その言葉を聞いた瞬間、人集りが左右に分かれて三鶴城さんが現れる。


“草”

“統率取れてんなあwww”

“ヒューッ!”

“打ち合わせしてないのにこの連係は流石やw”


「そうだったな。すまない」


「いえいえ。パーティメンバーから愛されてる証拠ですよ。という訳で、スレ民の皆さん!今日は、DAGが誇る『至強』を案内させていただきました!」


“乙ー”

“楽しかった!”

“田中ヨルフィ@打倒GW‼︎:私とのコラボの時もよろしくお願いします”

“二人ともカッコよかったよー!!!”

“リーダー最高! リーダー最高!”

“winner:コラボだと”


「あれ? 田中さん、どうもです」


コメント欄に『田中ヨルフィ@打倒GW‼︎』さんがいて驚いた。

田中ヨルフィさん。俺と同期のダンジョンアタッカーで、自身もチャンネルでダンジョンアタックの配信をしている人だ。俺の配信の視聴者でもあったらしく、以前からコラボのお誘いがあったのだ。年齢は十五歳らしいけど、凄いしっかりしてる子だ。


“コラボ!?”

“いきなり初出な話題出すな!”

“打倒GWって良いのかww”


「そうそう。夏休みの間に、コメントにいる田中ヨルフィさんのチャンネルでコラボさせてもらう事になりました。その時はよろしくお願いします」


このコラボでは何と、『トライティー』という、ガーランドウェポンズとは違うダンジョン産業の会社のお膝元まで行くのだ。県を跨ぐ必要がある為、時間に余裕のある夏休みにコラボをやりましょうという事になった。

今まで実現出来なかったのは、俺の監視体制で東城から出れなかったから。それも緩くなった今、遠征出来るのは少し楽しみでもある。


「はいこの話はここまで! 今回のメインはやっぱり三鶴城さんですよ。三鶴城さん、今日はホントにありがとうございました。すいません、いきなり喧嘩売ったりタメ口になっちゃったり……」


「気にしないでくれ。そのお陰で、私は大事なモノに気付けたんだ。私の方こそ、目を覚まさせてくれて感謝するべきだろう。それに……楽しかっただろう?」


「! はい、すっごい楽しかったです!」


“トゥンク……”

“もーめっちゃ良い人!”

“っぱ至強なんよなぁ”

“相性いいなこの二人”

“至強入りたくなった”

“正直至強メンバーが羨ましい”


『至強』の皆さんが後ろで拍手してくれる。

暖かい人達だなぁ。きっと全員、三鶴城さんに救われた経験があるんだろうな。別に恩を返したくて始めた戦いじゃなかったけど、立ち直ってくれてホントに良かった。

やっぱり、『至強』ってアットホームなパーティだな。


「それでは、ここまでのご視聴ありがとうございました!良かったら是非、ダンジョンアタッカーになって俺と一緒にダンジョンアタックしましょうね!」


「DAGは、全てのダンジョンアタッカーの味方だ。新たな時代の萌芽を、いつまでも歓迎している。『至強』で待っているぞ」


『イエエエエエエエエエエエエエエイッッ!!』


「それじゃあ、バイバイでーす!!」


“バイバーイww”

“winner:また後でね”

“乙!”

“お疲れ様”

“叡智だったわ”

“分かる”








「さあ、スイッチ君。そろそろ君が住む部屋を決めようか」


「E?」


「希望はあるか? 角部屋は無いが、それ以外なら余っている」


「いや……」


「ああ、まず引っ越しの手配からした方が良いだろうか。君の荷物を配達して」










「俺『至強』に入った覚えないですけど!!??」


『ええっ!?』


「何……だと……。な、なら、あの時差し出した手を握ってくれた意味は!?」


「感謝ですよ!?」


「良いじゃないか! 流れで『至強』入っても誰も気付かないさ」


「俺の意志は!?」


「ええい。こうなったら……者共! であえいであえーい!」


『おおおおおおおおおっっ!!』


「何で俺が曲者になってんだああああアアアアアア!!?」


“はっちゃけてんなあww”

“楽しそうで何よりです”

“お前曲者っつーか魔王じゃねえかww”

“お前も至強にならないか”

“すっかり気に入られたなあ”

“いや終われや! ww”

“締まらねえなあもうww”

“ははーん。さては天然だな?”

“雨降って地スクラムを組む”


=====


書籍版1巻発売中です。手に取っていただけると嬉しいです。


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