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【書籍1巻発売中!】スレ主がダンジョンアタックする話  作者: ゲスト047562


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第164話 vs三鶴城礼司

「シッ!」


姿勢を低くして正面から突っ込み、直前で右へ回る。気が散漫で隙だらけな三鶴城さんの横腹へ、小手調べとばかりに拳を放つ。


「……ッ!?」


金属と掌がぶつかり、小さく破裂音がこだまする。

お、すぐに気付いて手で防がれた。それに、少しはグラつくと思ったけど、全然体勢が崩れないな。

なら、これはどうだ?


「ふんっ!」


「なっ……!?」


拳に力を込め、下から突きあげる。三鶴城さんの身体が僅かに浮き上がったところで、すかさず蹴りを打ち込んだ。


「ぐっ……!」


“おいおいおい”

“え。ガチやん”

“マジで戦ってる?”

“デモンストレーションのレベルじゃないだろ”

“もしかしなくてもガチバトルかこれ”


俺の蹴りを、剣の腹で受け止めた三鶴城さんが吹き飛ぶ。しかしすぐに着地し、体勢を整える。


「まだまだぁ!」


更に金砕棒を取り出し、ぶん投げる。


「【飛刃】!」


すぐさまマジックスキルで追い討ちをかけ、俺自身も突進していく。

三鶴城さんが剣を振るう。金砕棒と【飛刃】が一振りで散らされるのと同時に、俺は金砕棒を追いかけ、空中でその柄を掴む。

マナを金砕棒に流し込んで形状変化。巨大なハンマーの形態になったそれを、思い切り振り下ろした。


「オラアッッ!!」


筋力と重力を乗せた質量の塊が、三鶴城さんを襲う。

受け止めた彼の身体が僅かに沈む。OWと剣がぶつかり、爆ぜる様な音と共に火花を散らす。


「……!」


押し返される感触がして、咄嗟に腕を振り上げて距離を取る。

俺の攻撃を押し返した三鶴城さんは、先程の隙だらけな姿とは打って変わって、静かに俺を見つめていた。


「……強いな。君は」


「ありがとうございます。けど、簡単に攻撃を防いでる人が言っても、説得力無いですよ」


“いやいやいやいや”

“ちょと待て”

“お前それはやりすぎやろ”

“下手したら氏ぬレベルなんですが……”

“魔王ネタとか抜きにやべえって”

“スキルとかガチで56す気満々やんけ”


「この人相手に、やり過ぎもクソもないだろ。俺は本気で勝ちにいってんだから」


しかも、あの一連の攻撃を受けてもびくともしてない。彼をその気にさせるのは、あの程度じゃ駄目って事だ。

だから、使えるものは全部使う。そろそろ本気でやろう。

オレンジのオーラ、【極光星鎧】が俺を包む。鞭のOWを取り出し、武器にもオーラを纏わせる。


「シィッ!」


鞭を振るう。オレンジのオーラが先端に集中していき、三鶴城さんの手前で引くと同時に轟音と衝撃波を巻き起こした。


「……ッ!」


オレンジの衝撃で歪む空間を切り裂き、不快そうに眉根を寄せる三鶴城さんが見える。

その両脇を挟む様に、ガントレットから伸びたマナウェポン、ワイヤードナイフが襲う。


「【レンズフレアシールド】!」


赤いドーム型のシールドが、俺の武器を弾いた。

それだけじゃない。シールドに触れたマナウェポンが、まるで熱で溶ける様に消されてしまった。

……マジックスキルを出させるのは出来たけど、《《まだ》》か。


「【ボルトブラスト】!」


指先から閃光が炸裂し、シールドに当たる。

これでもまだシールドは壊せない。だが、彼の視界を奪う事には成功した。

閃光の余韻が残っている間に後ろに回り込む。再び金砕棒を取り出し、オレンジのハンマーへと変化させ思い切りぶん殴る。


「ッラァ!!」


「なっ……!?」


“ファ!?”

“リーダーのシールドを壊しやがった”

“嘘だろ!?”

“winner:極光星鎧を無詠唱で出来るようになってるね”

“いやスイッチなら出来るやろ”

“さりげにコモンスキル無詠唱会得してる”

“極光星鎧がやばすぎる”


さあ来たぞ。三鶴城の前に躍り出て、次の一手を待つ。


「……っ」


……だが。

彼は苦しそうな顔で、剣を持つ手を緩めた。

俺を気遣う様に、俺を傷付けるのを躊躇うその姿に。


「……あ?」


ついイラッときた。

舌打ちをしながら、三鶴城さんの目の前まで歩く。


「おい」


師匠から見様見真似で教わった至近距離での前蹴りが、彼の腹にクリーンヒットする。

予想外だったのか、三鶴城さんは凄い勢いで壁に激突した。


「がはっ……!」


「戦ってんだぞ。いつまでもボケッとしてんじゃねえ」


“ええ……(困惑”

“何という理不尽”

“リーダーが手出せないのはお前のせいでもあるんだぞスイッチ”

“でも同意の上でやってる訳だしまあ”

“winner:何故彼がこの戦いを申し出たのか。その理由さえ分かれば良いのだけど”

“サンキュー先輩”

“サンキュー先輩”

“サンキュー先輩。結局そこだよな”


三鶴城さんは、俺が何故怒っているのかまだ理解出来ていないのだろう。困惑した顔で立ち上がるが、やはり攻めてくる気配は感じない。


「……は〜あ。どうせ何言っても無駄だろ?だから、アンタに俺の言葉が届くまで殴り続けるからな」


「……何を」


言葉を待たず、追い打ちを仕掛ける。

先程の蹴りで俺の脅威を感じ取ったか、今度の反応は速かった。すぐに身を翻し、蹴りをかわした。


“ヒエエ”

“あの、壁に脚埋まってるんですけど”

“耐久大した事ねえな”

“結界の防御貫通した?”

“極光星鎧はやべえって”

“そのオレンジオーラはアカンですよ!”

“生半可なシールドじゃ一瞬でお陀仏やんw”


「シッ!」


追撃の手は緩めない。ガントレットから伸ばしたワイヤードナイフのワイヤーを彼の足に巻き付け、ジャイアントスイングの如く振り回そうとする。


「おおおおおおおおっっ!!」


「くっ……!」


いち早く剣でワイヤーを切ったな。そんな事は想定内だ。

グリーヴのマナウェポンを発動させる。オーラを流し込むと側面が開き、そこからジェット噴射の如く推進力が生まれる。


「せいっ!」


流星の様な飛び蹴りが、三鶴城さんを掠めて壁に激突した。


「──ッ!?」


「チッ、外した。制御難しいなこれ」


初めて体感する外付けされた速度に、身体の反応が追いつかなかった。

まあ良いか。驚いてくれてるしな。もっと驚けぃてもらおう。


“はっっっっっや”

“何も見えんかった”

“オークキング以来のスピードじゃね?”

“winner:いや、あの時より遥かに速い”

“おい!リーダーを56す気か!?正気かよ!”

“流石にスイッチも弁えてるだろうが、今回はマジで分からん”

“どうしたスイッチ”


「君は、本気で……!?」


「最初からそう言ってんだろ。まだ《《届かねえ》》のか」


警戒を強め、更に防御を固めようとする三鶴城さん。

頑固だなぁ。だからこそ、やる気が出てくる。


「俺はアンタに聞かなきゃいけねえ事がある」


=====


書籍版1巻発売中です。手に取っていただけると嬉しいです。

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