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第157話 『至強』というパーティ

「えー……はい。話し合いの結果、親父ギャグは『高度な言葉の掛け合い』という事で。よろしいですね?」


「ああ。伝わってくれたようで何よりだ」


“お、おう”

“何で勝ち誇った顔してんwww”

“必死過ぎて可哀想になってきた”

“顔ツヤツヤで草。ずっと話したかったんやろなぁ”

“段々扱いが雑になってんのウケるw”

“リーダー良い顔してんなw”

“あまりに反論がガチ過ぎて引いた”

“winner:今の時間は何だった?”

“化けの皮を自分で剥いでいくスタイルは感心したぞ”

“リーダーの親父ギャグへの信頼なんなの?”


「はい!無駄な時間を使ってしまいましたが「え?」、本題に戻りましょう!さっきまでは普通のパーティの説明でしたけど、『至強』は少し毛色が違うんですよね?」


そう話を振ると、三鶴城さんは顔つきを真面目に戻してフリップを取り出した。


「コホン。ああ、皆も知っての通り『至強』はメンバーが多い。だから、パーティの中でさらにジョブによって部隊を分けている。こんな感じだな」


前衛隊ソルジャー・ナイト

遊撃隊モンク・レンジャー・サモナー

殲滅隊アーチャー・ソーサラー


「そして、この部隊を更に細かく編成していく」


総長(三鶴城礼司)

    ↓

副総長×五名(五つ星)

    ↓

大隊長×十名(四つ星以上)

    ↓

中隊長(四つ星)

    ↓

小隊長(三つ星以上)

    ↓

小隊五名(一〜三つ星)


「この様に、各隊のバランスを見ながら部隊が編成されていく。更に、緊急時において様々な人とスムーズに連携を取れるようにする訓練の一環として、この小隊はローテーションされるんだ」


「うわぁ……これ凄いですね。普通、ダンジョンアタッカーは三つ星までいけば一人前って言われるんですけど、そんな人でも一番下の小隊になるんですか」


“層の厚さヤヴァイ”

“うおっでっけぇ”

“真似できるかこんなん!”

“規模インフレし過ぎやろ……”

“叡智ね……”

“分かる”

“分からない”

“三つ星ワイ、井の中の蛙だった模様”


スレ民も大体俺と同じ感想みたいだ。

国内どころか、世界でもここまで厳格に組織化されたパーティは無いだろう。

確か三鶴城さんは、伽藍堂さんと違って一般家庭出身の筈。唯の一般人が、国内最強のパーティを作り、多くの人を率いる立場まで上り詰める……改めて、ダンジョンアタッカーの理想を体現した様な人だと実感する。


「私は今、人手の足りない小隊の数合わせや、後輩の指導をしている事が多い。『至強』のパーティメンバーは、全員ダンジョンを共にした大切な仲間だからな」


「指導までしてるんですね。『至強』がここまで大きくなった理由が分かる気がします」


“気がするだけな?”

“知ったか乙”

“winner:だがそこが良い”

“草”

“分かってなさそう”

“強い(確信”

“ボロクソに言うスレ民おって草”


「煩いスレ民は後で分からせてやるからな。覚悟しとけよ?けどこれだけ大きいなら、こんなビルみたいなパーティハウスも必要ですよね。確かパーティハウスって、DAGが六割負担してくれるんですよね?それでも凄い金額ですけど……」


「ああ。このパーティハウスは、全て自腹だ」


「は?」


“は?”

“え?”

“ん?”

“winner:は?”

“一番やばい事言ってる”

“え?嘘でしょ?”

“パーティハウスじゃないやん”

“えぇ?”

“先輩も驚いてるのやば”


「え?え?じゃあこのビルの所有権はDAGじゃなくて、三鶴城さん?」


「そうだ。だから私が死んでもDAGには帰属せず、『至強』がそのまま使う事が出来る。メンバーからは一室の家賃と光熱費、そしてビルの維持費を貰っている。維持費の方は彼らの収入の一割だが、それだけで充分賄える金額だ」


「はああああああああああああ!?」


何だこの人!規格外過ぎるだろ!?

土地代を知らない俺でも、都心の土地が高い事は知ってるぞ!?なのにこんな立派なビルを、全部自腹?


「頭おかしいんですか?」


「正常だが」


「一般庶民の金銭感覚は!?俺とスレ民と組んだ一般人同盟はどうなっちゃったんですか三鶴城さん!」


「もう……忘れてしまったよ。私は、今やおやつを三百円以内に収める事すら出来なくなってしまったんだ」


“本音漏れてるwww”

“草”

“マジでノリ良いなこの人”

“いつの間に同盟組んでたんだよ”

“頭はおかしいやろ”

“この二人相性良いだろww”

“どっちもおかしい”

“まあ自己犠牲にも限度があるぞガチで”

“理由がパーティの為なのが怖いこの人”


「さあ来ると良い。広くて涼しい部屋に、お茶菓子食べ放題も付いているぞ」


「イヤーッ!感覚を狂わされるうううううう!!」


“winner:もっと狂って良いんだよ”

“先輩!?”

“嘘だろ先輩ww”

“先輩がリーダー側なのウケる”

“※唯の内覧会です”

“スイッチが楽しそうで何よりです”


「む!私の金銭感覚、棒《《金戦》》法並に揺らぎ無し!どうだ?」


「は?」


“は?”

“は?”

“winner:吠えるな”

“ヒエ…”

“あのさぁ”

“そういうとこやぞ”

“急に寒くなってきたな”

“辛辣で草。残当”

“至強のメンバーも頭抱えてますよ”


「」ズーン


あの、ボウキン戦法って何ですかね……。


     ◇



「以上、『至強』のパーティハウスの紹介でしたー。どうだったでしょうか」


正直、『至強』のパーティハウスは想像以上だった。まさかプールが併設されたジムやリラクゼーションルーム、果ては部屋にある風呂とは別に温泉まであるなんて……施設の充実内容で言えばDAG以上だ。まあDAGは遊びの場じゃないんだから当然か。


“住みたい”

“ビルから出なくても大体あるの神やろ”

“こりゃ至強に人殺到するわって内容でしたね”

“ダンジョンアタッカーになればここに住めるってガチ?”

“至強ワイ、ニチャァ顔”

“↑きっっっsy”

“一年分の備蓄もあるのはベネ”


「良いですよねここ。俺もそろそろ引っ越しを考えてましたけど、こういう物件に住みたいって思いましたもん」


“winner:は?”

“ん?”

“今住んでる場所もええとこやろがい!”

“ええ?あの部屋で何が不満なん”

“引っ越すの?”

“一緒に住む?”


「そうなのか?」


「はい。元々東城に来た理由が身体検査でしたし。それが終わったから、多分今の部屋から追い出されるんじゃないかなって」


部屋を借りるには、契約書を書く必要があるらしい。けど俺はそんなの書いた覚え無いし、DAGが手を回してくれてたんだろう。

つまり今の部屋の契約者はDAG。身体検査を終えた俺はお役御免という訳だ。


「まあ俺の住居探しは良いんですよ。野宿なら慣れてますし。そんな事より三鶴城さん、今日はありがとうございました」


「ああ。こちらこそ感謝する。今日は楽しかった」


「あはは、良かったです」


“winner:良くないが?”

“野宿は草”

“嫌なもんに慣れてんなw”

“まあリーダーのイメージアップが出来たなら……”

“出来たか?(クソ寒親父ギャグ”

“まあ合わせればギリギリプラスにはなるし……(震え声”

“それでもギリギリなのかww”


我ながら、今回は三鶴城さんの人柄を多くの人が知るきっかけとなる、良い配信だったんじゃないだろうか。少なくとも、この配信を観た人が威圧感と肩書きで彼を敬遠する事は無くなるだろうし。


「では三鶴城さん、何かシメの一言願いします」


「もうそんな時間なのか。そうだな……」


三鶴城さんは深呼吸を数度すると、ドローンのカメラではなく何故か俺に身体を向けた。


「言っておかなければならない事があるとすれば、君にだ」


「ん?俺ですか?」


何の事か分からずにいると、彼はその場で膝をつき……。


「ってえええええ!?ちょちょと待って下さい!何してるんですか!?」


“は?”

“何土下座させてんねんスイッチ”

“お前勇者に何させてんだよ”

“何で?”


「いや、私はこうしなければならない。本来ならばもっと早くにするべきだったのだろうが、私の心が弱くこんな時まで延ばしてしまった」


ふざけている訳じゃない本気の声音に、思わず身体が止まる。













「D災の時、福平の皆様を救えず……申し訳ありませんでした」


強い後悔と共に絞り出された声に絶句する。

そのまま、彼はポツポツと語り始めた。






=====


『スレ主がダンジョンアタックする話』10/17発売されました。


特典ショートストーリーを書かせていただきました。

メロンブックス様では『こうして呪物は出来上がる』

ゲーマーズ様では『支部長にスレッドが見つかってしまったお話』

ブックウォーカー様では『とあるリスナーの話』

が付いてきております。手に取っていただけると嬉しいです。


あ、Xも少し始めてました。宜しければ見ていって下さるとありがたいです

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