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【書籍1巻発売中!】スレ主がダンジョンアタックする話  作者: ゲスト047562


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第143話 恐怖!料理配信

ええ……おかしいな。聞き間違いかもしれない。

困惑しながら、鍋に火をかけようとしていた手を止め、先輩の元へ。


「あの、すいません。今変な言葉が聞こえた気がしたんですけど」


「タネを作ろうとしたら、炭になってしまった」


「何で???」


何で???

その手に乗ってる黒いのって、まさかタネ(炭の姿)なんですか?

あまにゃんさんが「マジかコイツ」みたいな目で見てる。多分俺も今同じ目をしてる。


“何で!?”

“ふぁーーーーーwwww”

“炭www”

“どういうことやねんwww”

“料理下手とかいう次元じゃねえ!!”

“握ったら炭になるとか化け物…”

“マジモンの化け物に何言ってんだ”

“うーんこれは超越者”

“ヤバいwww”


「ッスー……あの、ちょっ……と、もう一回タネを作ってもらって良いですかね」


「あっ……そんなに見つめないでくれ。だがしっかり見ててくれ」


「いやちゃんと見てますよ。見ないと何が起きたか分からないんで」


先輩が何故か頬を赤らめながら、再び材料を手に取る。

うん、ちゃんと手順を守ってくれてるな。包み込む様に小さく整形したら、タネが……。


「炭になってると」


「何でぇ???」


“ちゃんと見てても分からないの草”

“草草草”

“腹痛えwww”

“怖スンギねぇwww”

“いや何でやねん”

“まるで意味が分からんぞ!?”

“本当に意味が分からないのやめろ”


「……あの、先輩。何でこうなるんでしょうか」


「可能性を挙げるとすれば、生まれながらの超人が、生まれて初めての作業で力の制御が出来ず、無意識に手に力を込めてしまった結果……かな」


「可能性というか殆ど正解言ってますよね!?先輩、今日は料理禁止!!」


「なっ……!?私が、禁止……だと……!?」


「食材だって無限じゃないんです!代わりに食器の配膳をお願いしますね!」


「あ、アハハ……確かに、流石に擁護出来ないですね」


これ以上の食材ロスを減らす為、先輩を厨房から離す。

呆然とした様子の先輩は、俺の手に誘われるがままに、椅子にポテンと座り込んだ。そのまま悔しそうに、俺と握っていた手を握りしめる。


「私は……無力……!」


今まで挫折とは無縁の生活だったのか、『厨房出禁』の指示は相当に堪えてるみたいだな……いやこんな事で挫折を感じないで下さい、ホントに。


「さて。じゃあ改めて、あまにゃんさんタネ作りお願いします」


「分かりました」


“これガチ?”

“ガチでやってるとしたら面白過ぎる撮れ高だろwww”

“生まれながらの超人をパンピー出身と同じ括りにしてはいけない(戒め”

“厨房からの戦力外通告は草”

“アカン炭が出来る部分ガチで笑うwww”

“腹筋攣った”


思いがけない先輩の欠点というアクシデントはあったが、それ以外は問題も無く調理を進めていく。


「で、このキャベツを茹でたお湯はそのまま味噌汁にしちゃいまーす。この為に、野菜をちょっと残しておいたんですよ」


「台所に立つエプロン姿……これは、中々良いね」


「ん?」


「ん?」


「あ、あまにゃんさん、鍋を見ててもらって良いですか?焼くのは俺がやるので」


「はーい」


“この感じ新こn”

“まるで夫h”

“先輩とあまにゃんの一瞬のやり取りが怖すぎるんよ”

“キーボードが操作受け付けなくなったんだが”

“指が震えてきた”

“ヒエ…”


「さて、最初はピーマンの肉詰めから焼いていきまーす。ピーマンを半分に切って、中をくり抜いたピーマンにタネを入れて、また一つに戻す。これで弱火でじっくり焼いていきましょうね」


ピーマンの肉詰めを、弱火で蒸し焼きにしていく。

肉と野菜の焼ける音、味噌汁の香りがご機嫌な音楽の様にお腹を刺激する。

よしよし、良い感じに焼けてきてる。順調だな。


「……おう」


「あ、おはようございます羽場さん」


おや?昼食の香りに釣られたのか、羽場さんが寝室から眠そうに出てきた。

今日は昼にここで配信するって伝えた筈だから、既に家を出てると思ってたけど……まさか、ずっと寝てたのか?


“羽場娘!?”

“ファッ!?”

“え何してん”

“今どっから出てきた?”

“パジャマ姿なの草”

“え?同棲してる?”

“私もスイッチと同棲したい”


「あの、今配信してますけど、大丈夫ですか?」


「ん、ああ……」


まだ寝ぼけてるな……羽場さんから微かに酒の臭いが漂ってる。

そういえばこの前、大吟醸を大事そうに抱えてたな。

『貰い物だ』と言って、頑なに渡そうとしなかったアレを自室に隠してたのは覚えてるけど……もしかして、深酒してたからこの時間に起きた、なんて事は無いだろうな?


「酒臭いですよ。今日は休肝日だからって、前日にたらふくお酒飲んで良い訳じゃないんです。分かってますよね?」


「ああ……煩いぞ。何か良い匂いがする。つまみか?」


「今作ってるのは昼飯です、おつまみは夜だけって言ったでしょ」


「昼飯か……寄越せ」


「いただきますって言わない人にはあげませーん」


“オイオイオイ”

“完全に新婚夫婦のノリだってこれww”

“目が!目が!”

“おいあまにゃんと先輩の前でそれ止めろ”

“あの、お二人の顔が……”

“止めろスイッチ!二人が覚醒してしまう!!”


ん?コメント欄が爆速で動いてる。今は火を使ってて手が離せないから、何に対してのコメントなのか見えないけど。

まあ良いや。それより、羽場さんをちゃんと起こしてあげなきゃ。


「丁度ピーマンの肉詰めが出来たところですよ。それで?掛け声は?」


「……イタダキマス」


「良く出来ました。はい、あーん」











「「は?」」


“は?”

“は?”

“ええ”

“あーーーーーーーーーーん”

“叡智ね”

“分かる”

“めっちゃ手慣れてるやん”

“私にもあーんして”


熱を冷ましたピーマンの肉詰めを爪楊枝で刺し、羽場さんの口にそっと入れる。

ソースはまだ作ってないけど、眠気覚ましには充分だろう。


「んぐっ……!?これピーマンか……」


「好き嫌いは駄目ですよー。ちゃんとハンバーグも詰めてるじゃないですか」


「ちょ、ちょっと待ってくれ。スイッチ君、何を……」


「ん?伽藍堂叶、何故いる。それに……」


「いや、今日あまにゃんさんと先輩と一緒に配信しますよって言いましたよね?」


「……ああ」


「すいません先輩。羽場さんは寝起きが悪いみたいで……」


「そうじゃない。な、何故そんな軽々しく『あーん』なんて……」


「ん?料理作ってる時につまみ食いしようとするの防止対策ですけど」


“先輩が動揺している、だと…!?”

“声ブルブルで草”

“スイッチお前…”

“飼われてる……”

“つまみ食い防止www”

“あーんにガチも思ってないなコイツww”

“まあスイッチだしな”


ん?先輩もあまにゃんさんも、何で目を見開いてるんだ?そんなに変な所でもあったのか?

あ、あまにゃんさん。味噌汁吹きこぼれそうですよ。ちょっと火止めますね。


「……あ!そういえば、配信には映りたくないんでしたね。羽場さんのご飯は後で用意しますね」


「……いや、どうせもう映ってるんだろ?今は良い、ついでに食う」


「え?」


配信中は画面内に入らない様に気配を隠してたのに、珍しいな……いやこれ面倒臭がってるな。腹の虫が鳴いてるし、腹減ってるだけだ。

まあ、羽場さんが良いならそれで良いか。もうすぐ料理も出来上がるし。


「羽場さんが良いなら……良いですか?先輩、あまにゃんさん」


「あ、ああああ。私は構わななないよ」


「何で声震えてるんです?」


「アタシモ大丈夫デスヨ。スイッチサンガイイノナラ」


「機械音声?」


“動揺してるwww”

“こんなんNTRやんけー!”

“でも同棲してるの知ってましたよね?”

“実際に同棲してる間柄でしかやらない様な事されて理性がバグってる”

“あまにゃん壊れた!!”

“スイッチ責任取れ”


何故か突然動きがぎこちなくなったあまにゃんさんと共に、残りの肉詰め野菜も焼いていく。

茹でたキャベツだけは焼かずに、小さめのハンバーグをロールキャベツみたいに巻いて出来上がり。

食器を四人分──先輩とあまにゃんさんは自分で持って来てた──用意して、テーブルに並べていく。

それにしても、まさか羽場さんも参加するなんて。量を多めに作って正解だった。


「はい、色んな野菜の肉詰めが出来ましたね。仕上げに、ウスターソースとケチャップ、それと肉汁の混ざった油を混ぜてソースの出来上がり!これをかけて完成でーす。先輩、あまにゃんさん、お手伝いありがとうございました」


「ああ、うん……」


「イエイエ、アタシハ何モ」


?さっきから二人の様子がおかしいな。どうしたんだ?

コメント欄にいるスレ民も、何か料理に関係無い事ばかり言ってるし……今の流れおかしかったか?それとも皆腹減ってる?


“あの伽藍堂妹がなぁ”

“今のやり取りは火力高いっすよ”

“俺にもあーんしろスイッチ”

“私もアーンして欲しい”

“あーん……叡智ね”

“分かる”


「ん?スレ民もあーんして欲しいんですか?仕方ないですねー」


「「え?」」


「皆さんはここにいないので、代わりに先輩と……あ、あまにゃんさんはファンの人が五月蝿いと思うn」


「は?」


「……うんですけどね!良ければ皆平等にやりましょうか!ね!?」


“危機回避!”

“スイッチここで神セーブ!”

“背筋凍るわ今の声”

“唯の食事で何でこんな緊張感あんだよwww”

“おかしい俺はスイッチの収益化記念の料理配信を見にきた筈…”

“いかん!スイッチが調理(意味深)されてまう!”

“これスイッチがデザートだろwww”

“スパチャ出来ねえじゃねえか!”

“おい収益化記念なのにスパチャ出来ないのはどういう了見だ”

“このコントって有料コンテンツじゃないの?”

“収益化と同時にエッッなコンテンツに代わる配信者がいるらしい”

“スイッチが墓場に入るまでのオワコンだぞ”

“これがジ・エンドコンテンツ”


「おい終わらせるな。俺達の戦いはこれからだぞ」


「スイッチ君、早く食べようじゃないか」


「そうですよ!温かい内に食べないと」


あれ?いつの間にか二人が着席してる。

というか、何で椅子が四つもあるんだ?いつからこんな増えてたっけ?


「分かりました。じゃあ今回の締め括りとして、後少し喋らせて下さい。俺のチャンネルの収益化ありがとうございます!スレ民の皆さんや先輩、あまにゃんさん、羽場さん等、色々な人に助けられてここまで来れました。ホントに感謝してます」


“おめでとう!”

“感慨深いなぁ”

“急に改まってどうしたんや”

“ホントかぁぁぁぁあ?”

“スイッチが真面目だと何か違和感あるな”

“真面目に聞け”

“スイッチよりスレ民が真面目じゃない定期”

“じゃあスイッチもスレ民だから真面目な訳ねえな!”


「これからも頑張っていきますので、よろしくお願いします。いつかスレ民の皆さんとも、一緒にダンジョンアタックしたいですしね」


「「アタシ()達と、ですよね()?」」


「あ、ッス……はい!では皆さん、手を合わせて」


圧が……圧が強すぎる……!『いやお二人とはパーティじゃないでしょw』という軽い言葉を寸前で止めた俺を褒めて欲しい。

二人の視線を払うように、大きく音を立てながら手を合わせる。それに倣って、皆もそれぞれ手を合わせてくれる。


“飯前なのにすげえ緊張感だ…”

“食事は温かいのに食卓は冷える寸前だったな”

“でも今にも炎上しそうですよ?”

“そしたらまた絶対零度まで下がるべ”

“温度の乱高下激しいなここ”

“※スイッチのスレ民はよく訓練されてます”

“最終的にスイッチが全部焼き尽くすぞ”

“スレ民の連携と語彙力どうなってんだwww”


「これまでとこれからの感謝を込めて!いただきます!」


『いただきます』


皆で箸を取り、ご飯を食べる。


「スイッチ君、はい」


「はい、どうぞ。あーん」


「美味しい……」


「(モッキュモッキュ)」


“イチャイチャしやがってよ”

“公然といちゃつきやがって……もっとやれ”

“俺も腹減ってきたな”

“羽場娘口に詰めすぎやろwww”

“あーーーーーーーーん”


ああ、良いな。懐かしい感じがする。

父さんと母さんと、一緒に作った料理を一緒に食べる。

唯それだけで嬉しくて、唯それだけが幸せだった。そんな日々が甦って……少し、涙が出てしまう。

叶うなら、今の幸せが、今度こそずっと続きますように。












“で、結婚しないって話はどうなったの”


「「あ?」」


あ、終わった。

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