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スレ主がダンジョンアタックする話  作者: ゲスト047562


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132/159

第132話 終末点ターミナル駅・2駅目

電車から降りると、電車はすぐさま上を目指して消えて行った。

代わりに、目の前には既に新たな電車が鎮座している。


「うわ、見て下さい。中は既に満員ですよ」


“きっしょ”

“中の影全部敵なのキツいな”

“きもE”

“ラッシュ時の山辺(やまのべ)線みたいだぁ”


「因みにこっちの電車に乗ると入口に帰れます。

この敵を全部倒さないと駄目ですけど」


話している内に、中から影がズルリとのたうちながら這い出て…。


「いやデッカ!?これシャドウミストスライムだ!」


黒い霧の様な体躯の中にコアを二つ持つコアモンスター、シャドウミストスライム。

他のモンスターを押し退ける程の巨体だが、守るべきコアが丸見えの為、強さはそれほどでもない。

コイツもそうだけど、ゴースト系のモンスターは全部、身体を一部分だけ実体化させる特性を持っているから、スキルの合間に実体化した身体を差し込まれたら面倒だ、な…っ!?


「うおぉぉおおっ!?」


シャドウミストスライムに押し退けられていた他のモンスター達が次々とホームに降りてきて、濁流の様に俺をホームから押し流そうとしてきた。

通常は実体が殆ど無いと言っても、モンスターはモンスター。反射的に距離を置こうとして、気付けばホームの端、断崖絶壁にまで追い込まれていた。


「ふんっ…!!」


雪崩の如く押し寄せるアーストゥワイルシャドウ。ソイツ等の服に指を引っ掛け、纏めて《《沈める》》。


「とうっ!」


その背後から飛んできた黒く小さな針の雨、シャドウミストスライムの『スピットレイン』をジャンプしてかわす。


“いやコッワ”

“おい押すなって!”

“え、これ試練型だよな?迷宮型じゃなくて”

“降りますって言ってるだろうが!”

“出口前に突っ立ってんじゃねえ!!”

“スマホ見てねえではよ降りろやカス!”

“人出てる時に乗ろうとしてくんなボケェ!!”

“社畜ニキ魂の怨嗟”

“スイッチの心配は?ww”

“割とガチの恨み言で草生えますよ”


着地した地面が、急に黒く固まって俺を捕える。

ホームに身体を這わせたシャドウミストスライムが、その巨躯を実体化させて、他のモンスター諸共俺を体内に取り込もうとしていた。

更に、俺を取り囲む多数の影が、マジックスキルを連射してくる。


“アカン(アカン”

“四つ星ってこんなやべーの?”

“ボケてる場合じゃなくて草。いや草じゃないが”

“怖すぎる…”











「シッ…!!」


手に持つ新たな武器で、俺を呑み込む霧を打ち払い、マジックスキルを叩き落とす。


「強くなる為のその一!力加減を覚える!」


ブンブンと振り回している新武器……ヌンチャクを見せつける様に担ぐ。

そのまま『纏魔気鱗』を発動してヌンチャクまで纏わせ、シャドウミストスライムへ突っ込む。


「ハイイイイィッ!!」


霧が実体化するより早く、コアを打ち砕く。

シャドウミストスライムは身体を縮小させ、アーストゥワイルシャドウの群れの中に逃げて行くのを見届け、改めてヌンチャクを構える。

最初の戦いでは、鈍ってないかの確認だけだったからな。今度は、自分の力を少しずつ制御しながら進んでいこう。


“ヌンチャク!?w”

“唐突に何か出て来たw”

“まーた違うOWだよ”

“壊すなよー?w”

“どんだけあんだマジで…”


それに『武芸十八般』というコモンスキル。何となくその武器の使い方が分かるだけじゃ、全然駄目だ。自分で色んな武器を使って、長所や弱点を見極めなきゃ、今以上に先は無い。

円を作る様にヌンチャクを回し、マジックスキルを次々と振り払う。返す刀でヌンチャクにマナを送り、棍棒の部分を長く伸ばし、敵のコアを打ち抜いていく。


「はい!ガーランド・ウェポンズ最新作、オーバードウェポン、間も無く発売!多分!!」


“おおおおおおおおお”

“凄え。ちゃんと武器だ”

“ダイマも忘れないダンジョンアタッカーの鑑”

“多分かよw”

“そこは具体的に言ってくれ”

“はよ戦え”

“冒頭で四つ星ダンジョンの危険を説明してなかったかこいつ”

“スイッチだから”


ヌンチャクを壊さない様慎重に、しかし敵には容赦なく、コアを狙っていく。


「ちっ……!難しいな、鎖で繋がれてる先が揺れる!」


しかし、鎖が揺れるせいで微妙に狙いがズレる。

うーん、振り回し過ぎても壊れそうだな。いっそ、また『飛刃』で一掃して……いやそれじゃ練習にならねえだろ。でもこの数は流石に多いよな。こんなコアモンスターがウジャウジャいる光景はまるでアレを──










「──……………?」


ストン、と。膝が崩れ落ちた。


“お?”

“何してんww”

“見えない攻撃でも避けた?”

“何もないとこで転けてて草”

“ん?”

“何転んでんだよww”


あれ?何だ?今何を考えようとしたんだ?俺は……。


「……ッ『飛刃』!!」


目の前に突然現れた影。力の抜けた全身に無理矢理力を込めて、斬撃を飛ばす。

影が消し飛び、辺りの景色が鮮明になる。赤黒い空に、ボロボロのホーム……。


「……ブハッ!!ゴホッ、ゴホ…!」


“ん?”

“何だ?”

“急になんやねん”

“苦戦アピやめてね”

“また飛刃かな芸がないぞ”

“ネタかガチか分からん”

“スイッチはダンジョンアタッカー芸人じゃねえよ!w”

“スイッチなら苦戦する事に苦戦するレベルだろ”


「……は、はは。いやー危なかったですねー」


いつの間にか止まっていた呼吸を再開し、膝に付いた埃を叩いて落とし、崩れていた体勢を戻す。

視界に沢山いたコアモンスター達は消えている。横にあった電車も……。


「……あ」


上下に分断され、ガラガラと崩れながら下の地面に沈んでいった。


“草”

“自分で退路壊したwww”

“さ、先行こうかw”

“何かおかしくなかったか?”

“スイッチだしな”

“↑混乱するからやめーやww”


「……いや、まあまあまあ。元々先に進むつもりだったし?じゃあ電車の中でスキルカード見ていきましょうねー」


うーん?何だったんだ一体?何か、変な違和感みたいなのが……けど身体に傷は無いしな……。


“お、魔晶あるぞ”

“魔晶出てるやんけ!”

“素材ガチャ当たりじゃんwww”

“めっちゃ素材あるなー”

“お、鋼生糸(こうきいと)だ。調達クエストにあった奴”

“調達クエに載ってるのも出てるからウハウハだな”

“鋼生糸ここで出るのか”


「あ、ホントだ。鋼生糸と……霧の体液も調達クエストで懸賞が懸けられてた奴ですねー」


“魔晶は?”

“うめー”

“霧なのに体液…?”

“魔晶どうぞ”

“魔晶も落ちてるんですけど?”


「何で魔晶食うの前提なんだよ。食べるとしても、これを食べるのはマナドローン君です」


周囲を見渡し、他に落ちている素材が無いか確認する。

………うん、特に何も無いな。毒や幻系のマジックスキルが使われた形跡もしない。唯気が抜けただけか?


「んー、まあ良いか。じゃあ久しぶりにスキルカード見ていきましょう!何かレベルアップしてないか楽しみですねー」


“wktk”

“トンチキエクストラ期待してるぞ”

“魔晶食わないの?”

“純度は中ぐらいだがスイッチ的には美味しそうじゃないのか”

“食ったらまたギルマスに怒られるからじゃね?”

“そういや魔晶食ったの怒られたんだったかww”

“もっと四つ星ダンジョンの危険度を実感しろ”

“スイッチだしな”

“全部↑ので解決させるな”

“↑↑スイッチ直伝のパワープレイやめてもろて”


《《握りしめたままだったヌンチャクを仕舞い》》、俺は新たにやって来た先に進む電車に乗り込んだ。

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