第131話 終末点ターミナル駅・質問タイム
「スキルなんですけど、レベルアップで取れるスキルって殆どランダムなんですよね。だから、何万とか何十万くらいあるスキルの中から、自分が欲しいスキルが取れるかっていうと……まあお察し下さいとしか言えないんです」
“それはそう”
“昇華とか進化とかあるけどそれもランダムらしいしな”
“一応、その人の経験が反映されてるんじゃね?的な事は言われてるけどね”
“先輩も説明してたな”
“電車どんどん上昇してるな”
窓から見える景色を眺めながら、改めて説明の続きをする。
コアモンスターが全部降りてきたから、実に快適に進んでるなぁ。電車に乗った事なんて殆ど無いし、少しワクワクしている自分がいる。
「それに三つ星まで行った人って、既にジョブとかも貰って自分の戦い方を完成させてる人が多いんですよ。そこに今までのやり方を一変させる様な強力なスキルが取れても、馴染まない場合が多いんですって」
“へー”
“スイッチが真面目に解説している…!?”
“分かりやすいのがムカつくな”
“まさか今更スイッチから教わる時が来るなんて”
“確かにモンクがいきなりソーサラー系の強力なレベルアップしてもあんま意味無いか”
“スイッチに教えられるなんて…”
“低く見られすぎておもsゲフンゲフン可哀想”
「おいどういう意味だコラ。俺はDAGの客寄せパンダとしてずっと頑張ってるんだが?」
というかスレ民は色々事情知ってるよな?最初の方からDAGの為にずっと解説して……して……あっ先輩がやってくれてましたねハイ。
“草”
“それで何で今日はソロなん”
“スイッチに良い顔ばっかさせらんねーぜ!次の質問いこーぜ”
“↑畜生過ぎて笑うww”
“うーんこのスレ民ども”
“監視は?”
“近くに羽場さんいねーの?”
「あー、そういえば……何か、監視対象じゃなくて保護観察って形になったらしいです。だからずっと近くにいなくても良くなったって、羽場さんから聞きました」
羽場さんも、急に伝えられたと首を傾げていた。
だから、『学校を除く長時間の外出や、東城から出る場合』を除いて、事前に行き先を告げれば羽場さんの帯同無しでも行動出来る事になった。
けどまあ、やる事自体はそこまで変わらないし、羽場さんが自由に動ける様になったのは良い事だ。羽場さんもずっとソロで挑み続けているダンジョンがあるみたいだし、暫くそこに通い詰めになるのかな?
「なので、羽場さんの邪魔しちゃう事は無いので安心して下さいねー。俺はこれからも、ソロでダンジョンアタック続けていきます。あ、けどクラスの皆とはいつかダンジョンアタックしたいですね」
“ええやん”
“青春しろよ”
“いつでもおk”
“実際青嵐高校ってどれくらいダンジョンアタッカーいんだ?”
“それも配信して♡”
“第三世代が半分くらいだっけ?”
“第三世代でもダンジョンアタッカーやってない奴もいるしマジで分からん”
実は俺も、学年どころかクラスで何人がダンジョンアタッカーなのか知らない。
唯、少しだけこちらに殺気……いや殺気なのか?オークキングや数多さんと比べると蚊の様な、小さな敵意を飛ばしてくる生徒はいた。
前に会った四つ星ダンジョンアタッカーの人も敵意を向けてきたし、東城流の挨拶なのかなと思って、俺も挨拶代わりに『えいっ⭐︎(当社比)』と殺気を返したんだけど、それから近づいて来てくれないんだよな。
「まあその時はまたスレで話します。あっそうだ、最初に説明し忘れたんですけど、このダンジョンの敵は『ゴースト系』って呼ばれてて、実体化してる部分を攻撃しないと効かないんですよね。モンクやソルジャーは相性悪いし、最終的にはコアも狙わないといけないしで、厄介な奴なので気を付けましょう」
こういった説明も、普段の配信では先輩がしてくれてたんだよな……やっぱり頼りきりになってる現状は駄目だな。早く独り立ちしないと。
“あれは再生じゃなくて普通に効いてなかったのね”
“お前力押しだったやんけww”
“セオリー無視して纏めて消し飛ばした人が何か言ってる”
“これは魔王の風格ですわw”
“さっきのシーンが無ければ含蓄ある言葉なんだが”
“説得力無さすぎて草”
“怪力だけで片づけてそれは無い”
「いやいや!俺はちゃんと『纏魔気鱗』と『飛刃』使ってましたよ?」
“はい?”
“何を仰いますデビルキングコング様w”
“ん?飛刃って言ってたっけ”
“ちゃんと…?”
“魔王様、ちゃんと人類の勉強してください”
“人の心分からないはマジで王の器”
“やっぱり魔王じゃないか!マトモなのはスレ民だけか!?”
「魔王言うな。実は使ってたんですよ。この前スキルの《《練習》》をする機会があったんで、名前を叫ばなくてもマジックスキルを撃てる様にしてる所です」
口に出した方がスキルの効率が良い事は、魔猪の塔で学んだ。
しかし、それは唯の入り口でしかなかった。数多さんとの喧嘩で《《見せられた》》、数々の技術。身体の動かし方だけでなく、瞬間的な判断や気の扱い、そして《《無言で宙を駆ける》》等、全てが圧倒的な差があった事を、何度も思い返して改めて思い知らされたのだ。
あの最後の攻防も、出し惜しみしていた力以上に、あの人にはまだ刹那の戦いの中で『考える』という余裕があった。戦いの経験値という重く分厚い紙一重が勝負を分けたのだ。
あの喧嘩から得られるものはまだまだ多いが、その中でも特に必修なのがマジックスキルを無言でも放てる技術。コモンスキルと違い、体外に放とうとすると一気にマナと気が散漫になってしまうから、威力も大して出てないのが課題だ。
……あ、思い出したらまた悔しさがぶり返してきた。絶対超えてやる。
“そういや黄昏樹海で練習してたな”
“何でその様子を配信しないんですかね”
“ルーティンって奴やね”
“お前の練習見てた奴は結局誰なんだよ”
“確かにダンジョンアタッカーの上澄み連中はそういう事が出来る奴がいるらしい”
“確かにさっきの破壊痕は今ひとつだったな”
“ルーティンやらずにマジックスキル打つのクッソむずいぞ。出来る奴マジで少ない”
“ホームが全壊してなかったなそういえば”
“壊されてるのはスレ民の感覚”
“あれで…?”
「けどそうですね……やっぱり技名を叫ぶのはカッコいいし、配信中はなるべくスキルを口にしていきますか」
“お、そうだな”
“配信映えするしな”
“分かる。やっぱり必殺技は叫んでこそ”
“見栄えは大事と存じます”
“草。良いぞもっとやれ”
“四つ星ダンジョンだぞ。もっと緊張感持て”
“東城に来た目的忘れてそうw”
“そういや何で東城に来たんだっけ”
“学校だろ?”
“先輩が呼んだ”
“検査終わったん?”
“検査だよww”
「あ、いや……わ、忘れてないですよ?それなんですけど、何か延期になったんですよね。理由は俺も知らなくて、また連絡するって言われました。なので、東城に来た本来の目的は、まだ達成してないんですよ」
“へー”
“今思い出したろこいつw”
“DAG何してん?かなり重要案件の筈だろこれ”
“スイッチの事を傍に置いとく程の事があるのか?”
“思い…出した!”
“監視を緩めたのって検査終わったからじゃないのか”
“DAGは今忙しいからなー”
“今ちょっと手が離せない状況でして”
“スイッチはそのままで良いのよ”
お、現役のダンジョンアタッカーらしきスレ民もいる。何か知ってそうなニュアンスだし、割と偉い人かも……。
……いや、無いな!そんな凄い人達が、まだ三つ星に上がったばかりの男の配信なんて観てる筈無いか!三鶴城さんが例外なだけだろ!流石に自意識過剰過ぎたな、反省しよう。
頭を冷やそうとしたところで、ノイズ混じりの音楽が車内に響く。
「お、次のステージに着きましたね。早速見ていきましょう。その後スキルカードをチェックしますねー」
“お、久々やん”
“楽しみ”
“レベルアップで何が出るんやろ”
“魔晶食ってないから普通の奴じゃね”
“魔晶食え”
“魔晶食ってから言えよ”
“魔王様、お食事(魔晶)がまだにございます”
「今度はモンスターじゃなくてお前等からぶっ飛ばすぞ」
 




