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【書籍1巻発売中!】スレ主がダンジョンアタックする話  作者: ゲスト047562


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第128話 卑きメイドに新たなジョブを2

「では本題に入らせていただきます。私、実は自身のジョブに不満を抱いておりまして。鏑矢様に、新たなジョブを作っていただきたいのです」


「新たな、ジョブ?」


「はい。ジョブという制度は、パーティにおける役割を表すものですが、そのジョブの振り分けには、スキル以外にも理由がある……と私は愚考致します」


不意に、目の前のデスクが光り、中空にビジョンが投影される。


「は?」


鏑矢から思わず声が漏れる。

その映像に映っていたのは、13号の牙と大鎌とデザートイーグルを携えたダンジョンアタッカー。

それは戦いと呼ぶにはあまりに一方的で、13号の牙は一矢報いる事すら出来ず消し炭となり、映像は途切れた。


(馬鹿な……成り立てとはいえ、三つ星級のダンジョンアタッカーだぞ!?しかも奴は、良心の呵責なく人殺しの成果を自慢する様な、頭のネジが外れた男の筈だ!それが……)


「例として、ソルジャーを挙げましょう。ソルジャーのジョブを持つ方は、唯ソルジャーに選ばれる為のスキルを所持しているだけではありません。ご存知でしょうか?未踏のダンジョンや初見のモンスターに対して最も生存率の高いジョブは、タンクに続きソルジャーなのです」


亜継は気にもせず、人が人を殺す映像を資料として流し続ける。


「いわば、『万能』こそがソルジャーの特性。あらゆる局面に対応でき、身体の延長の如く武器を自在に操り、全距離に隙のない、圧倒的な汎用性。それを認められた者が、ソルジャーに選ばれると私は考えます」


映像が次々と切り替わり、様々なダンジョンアタッカーが戦っている映像が幾つも映し出される。


「この他にも、タンクが持つ圧倒的な防御力、モンクが備える並外れた速度等、ジョブにはそれぞれ特性があります。そしてDAGは各人のこの特性とスキルを鑑みて、ジョブを決めている。その様に考えた次第でございます」


「……なるほどな。つまりお前は、自分の特性とジョブが一致していないと?」


「はい。私はソーサラーのジョブを拝命しておりますが、ソーサラーの特性は、味方をも巻き込みかねない圧倒的な攻撃範囲にございます。しかし残念ながら、私はその様な強力なスキルは持っておりません。私が持つのは……」


亜継が言葉を区切り、カーテシーの動作を行う。


「『サモン・コーリングワーム』」


摘まれたスカートの中から、人の腕程の大きさの虫が大量に現れた。


「……ギッ……!!?」


「この様な、サモン系統のマジックスキルばかりなのです」


まるで下半身が虫になったかの様に、大量の虫を足下に這わせる亜継を前に、悲鳴と吐き気が込み上がる。

それを必死に押さえつけ、鏑矢は恐怖に震える声で亜継に話しかける。


「ば…馬鹿な……!サモン系統のマジックスキルは、ダンジョン内でしか使えない筈…!」


「それは誤りでございます。サモンを覚えているダンジョンアタッカーは希少ですから、その様な認識になってしまうのも仕方ないことですが。事実は、本人のマナと純度の高い魔晶を触媒とすれば、ダンジョンの外でもモンスターを召喚出来るのです。どうやらマナをより多く保有する触媒から消費されるらしく、それがダンジョン以外では使えないという誤解に繋がったかと」


(つまり、コイツは一人で強力な軍隊を作れるという事か!?大量の魔晶を持たせれば、牙何人分の戦力を補充出来る?モンスターをダンジョンの外に持ち出し、且つ操れるのは《《理想的》》だ!D災の実験は失敗だったが、向こうからより良い逸材が来てくれるとは!)


鏑矢の思考が加速していく。脳から快楽物質が溢れ出しているのか、《《痛みにも似た快感》》が足下から押し寄せてきて、自然と口角が上がってしまう。

自分を制御出来なくなったかのように、鏑矢の声が大きくなっていく。


「そ、その特性はっ!?お前の作ろうとしているジョブには、どんな特性があると考えている!」


「私の考えるこのジョブは、ソーサラーの様な制圧力はありません。しかし、私が操る蟲達には、私の持つスキルや五感を味方と共有したり、又蟲の持つスキルも使ったりする事が出来ます」


「スキルの共有!?前代未聞ではないか!使い方によっては、『勇者』すら凌ぐ程の代物だ!」


「寡聞なお言葉、痛み入ります。サモンは今までマジックスキルに区分されておりましたが、今や新たな系統スキルの一つに数えて良いかと。そして」


「ソそれらを使う者達の為のジョブがあれば、ダンジョン攻略の幅が更に広がる訳だ、ダナ」


(な、何だ?上手く喋れない。私が考えるより先に言葉が発される。いやそんな……そんな事より、《《どんどんこの方に魅入られていく》》……身体が内側から作り替えられていく様な、心地良い痛みが、目が合う程どんどん……)


「このジョブの特性は、圧倒的なサポート力。名前を『サモナー』と呼称したく存じます」


「よし分かった、すぐに手配しよう。ホ他に私に出来ることはあるrrりますか?」


「おや、よろしいのですか?なら、事後承諾となってしまいますが……鏑矢様のお身体に私の蟲を住まわせていただきたく」


「ああ構いませんとも!いくらでもこの身体を使ってください!」


(何と甘美な声だ……聴くだけで脳が蕩けてしまいそうだ……言葉の意味など最早どうでも良い。もっと、もっと、この方の役に立たなくては…私は、この方に仕える為に《《喚ばれた》》のだから)


鏑矢の様子を見て、亜継は柔らかく微笑む。


「良かったですわ。ナーヴスイーターは、宿主の神経を食べて、自分がその神経に《《成り代わる》》性質を持つのですが、人に使ったのは初めてで。上手くいったみたいですね」


「亜継様、どうか私にもっと命令を……何とぞご慈悲を…」


鏑矢の拘束が解かれるや否や、鏑矢……否、鏑矢だった肉体は、亜継の前に縋り付く様に平伏した。

亜継は満足気に頷いて部屋を出て行き、鏑矢が光に群がる蛾の如くそれに従い動き出す。


「では、引き続き現在の地位より私達にご協力を。既に鏑矢様の内臓は《《蟲に置き換わっております》》ので、いつまでも働くことが出来ますよ」


「素晴らしい。私の様な木偶をお使いいただき、ありがとうございます。亜継様の寛大な御心のままに、使命を果たして参ります」


何処へ続くとも知れぬ道を、全身を蟲に支えられた人形は一人で歩き出す。

それを見送り、亜継は去っていく鏑矢へ一礼する。


「永遠に働き続けなさい。私が貴方の死を良しとするまで」


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