第124話 その言葉を理解した時に出た第一声がこれです
「ウソッ!?マジでスイッチじゃん!?」
「スイッチさん!?うわっガチ!?」
「えっえっ!ちょっとちょっと……スイッチ君いるよ!しかも伽藍堂先輩も!」
「おはようございまーす」
教科書を見ながら歩いていた生徒達がチラ見からの二度見、オマケに声を上げるお陰で周りに騒めきが伝播していく。
あ、結構俺の事知ってくれてるのか。もしかしてスレ民の人達かな?だったら嬉しいな。そんな思いを込めて、挨拶と共に手を振りながら進んでいく。
「それにしても、ダンジョンアタッカーの育成に力を入れてるって言ってましたけど……意外と普通ですねー」
改めて校内を見てみても、雰囲気も含めて何処にでもある様な公立高校だ。
違うところを挙げるとすれば、建築素材にダンジョンの素材が使われている部分だろうか。天井は照明器具が無いのに淡く光り、壁はそれ自体がモニターみたいになっており、案内図や階層が表示されている。
「外観や内装は、一般的な高校を参照しているからね。だが勿論、他にはない特徴も存在する」
隣で一緒に歩く先輩……いや伽藍堂先輩が、目線を他へやる。
そこにあるのは、パンやおにぎりの搬入をしている購買……いや、隣に何かあるな。
「……DAGショップ?」
「このDAGショップは、学生のダンジョンアタッカー用に割安で武器やアイテムが販売されてるのさ。校内にダンジョンがあるから、放課後は皆ここで準備を整えてから挑むのが、この高校の日常風景だね」
「へー!ここってダンジョンがあるんですか」
「ああ。青嵐高校には、二つ星ダンジョンがあるんだよ。そこは学生のダンジョンアタッカーなら星数に関係無く利用出来るんだ。学外のダンジョンアタッカーは申請が必要だが」
そういえば、ダンジョンガイドブックに載ってたな。国内唯一のダンジョンが存在する高校、だっけ。その時は、魔猪の塔以外に行く意味も無かったからスルーしてたけど、ここの事だったのか。
三つ星の俺でも入れるなら、機会があれば友達と一緒にここでダンジョンアタックしてみたいな。あ、高校の中って配信して良いのか?
「着いたよ。ここが職員室だ」
「あ、ありがとうございます。朝からありがとうございました、伽藍堂先輩」
「…何、気にしなくて良いさ。これからは学校でもよろしく頼むよ」
そう言って先輩は踵を返す。心なしか、その肩はやや落ちているようにも見えた。
うーん……流石に、いつもお世話になってる人のお願いを無下にするのは嫌だな。
「伽藍堂先輩!」
周りに誰もいない事を確認する。やや大声で呼び止め、先輩が振り向く前に彼女の整った耳元へ素早く口を寄せる。
「この呼び方は、近くに俺達しかいない時だけにしますね、《《叶》》先輩」
「え?」
そう囁いて、すぐさま離れる。そして再び周りの確認。
……ヨシ!誰もいないな!名前で呼び合うって恋人みたいだし、勘違いされたら困るからなぁ。伽藍堂先輩にこれ以上の迷惑をかける訳にはいかない。
「ありがとうございました、《《伽藍堂》》先輩!」
先輩に頭を下げ、職員室の扉をノックする。
「失礼します。今日から編入する事になる、戸張照真です。よろしくお願いします!」
「叶……叶………ふ、ふふ…!」
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担任になる男の先生から簡単な説明を受けた後、一緒に教室に向かう。
「2-A、ここが君の教室だ。《《大変な時》》に来てしまったが、頑張りなさい。先生も出来る限りサポートするから」
「はい、ありがとうございます」
大変?何かあったっけ?
……あ、俺の身体の検査まだだったな。何故か未だに日程が決まらないからなぁ。いつ呼ばれるか分からないのは、確かに大変って言えるのかもしれない。
にしても、良く俺の事知ってたなこの人。
「先生、もしかして俺が配信してるって事知ってます?」
「この学校じゃ知らない人の方が少ないと思うぞ。先生がどうぞって言ったら、教室に入って下さいね」
「あ、はい」
チャイムの後に、先生が教室へ入っていく。
久しぶりの学校だなぁ。クラスの皆と仲良くやれるかな。
不安を隠す様に、そっと教室の様子を聞き耳する。
「えー、既に知ってると思うが、今日から転校生がこのクラスn」
『|ウォオオォォオオオオオ《キャァァァアアアッッ》!!』
芸能人でも来るのかな?たかが転校生にテンション上がり過ぎでしょ。
「静かに!知ってるなら良いや、入ってきてー」
「おはようございまーす」
「スイッチガチだ!」
「ホンモン!?」
「このクラスで良かったー!」
「ぶっちゃけ受かると思ってなかったわー」
「裏口入学じゃね?」
「おい最後の奴等聞こえてるからな。俺にそんな頭と金があると思うなよ」
クラス中が笑いに包まれる。好意的な反応ばかりで、少し嬉しくなる。
「えーっと、戸張照真です。知ってる人も多いみたいだけど、スイッチって名前でmoveでダンジョンアタックする配信をしてます。これからよろしくお願いします!」
大きな拍手が、俺を迎えてくれる。
うん、良かった。このクラスの皆となら、楽しく過ごせそうだ。
「戸張君の席は、窓際の一番後ろの席ですよ。早速で悪いんだけど、そろそろ時間が押してるから説明は後でね」
「はい、分かりました」
先生に促され、未だ興奮している皆とハイタッチしながら自分の席に向かう。
今日からまた勉強の日々かぁ。そういえば、時間割を確認してなかった。一応教科書は全部持ってきたけど、一限目は何から…
「じゃあ少し遅れたが、中間テストを始めますよ。あれだけ騒いだんだから、当然準備は出来てますね?」
……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………???????
「……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………ィエッ」




