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【書籍1巻発売中!】スレ主がダンジョンアタックする話  作者: ゲスト047562


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第114話 続・【済】黄昏樹海最奥

「……ホントの敵?」


「そうだよー。やっと聞く気になったかー?」


再び喧嘩のゴングを鳴らそうとする前に、数多さんの言葉で手が止まる。

世界がおかしいとか言い出したり、ホントの敵がいるとか言ったり、さっきから何が言いたいんだ?この人。


「オメーが馬鹿なのは分かったから「オイ」分かりやすく説明してやるよー。全ての物事には理由があるってのは知ってるなー?」


「うん?あー……まあ」


「雨が降ったり草木が生えたり、何かが起こるのには、必ず理由や原因があるんだよねー」


「当たり前だろ」


「じゃあさー。《《何で銃器や戦車みてーな危険なモンが発展してんだー》》?」


「………は?」


言葉の意味が分からず、思わず聞き返す。

何故武器が発展しているか?そりゃ当然、《《戦う》》為だろ。ダンジョンが現れる前から人類が……。


「………あれ?」


「気付いたかー?いねーんだよ、そんなに強力な装備を必要とする敵なんてなー。それに、国の軍隊は何と戦う為にあんな過酷な訓練してんだー?」


「……人?」


「そーだよなー?奴らのやってる内容は、明らかに対人用だしなー。でもさー、国が成立する前の昔ならともかくよー、近年じゃ大規模な戦争……《《世界戦争とでも言う様なでけー戦いなんてしてねーんだよねー》》」


言われてみれば、確かに不自然だ。

軍隊の訓練や武器も、明らかに人に対して使う事を想定している。けど、《《実際に使用された例は無い》》。戦車や爆撃機なんて、作られたところで倉庫で埃を被ってたりする程度に、この世界は平和だ。

じゃあ何でそんな物が製造、そして使ってもないのに後継機なんて生まれてるんだ?


「それだけじゃねーぞー?更に過去を遡れば、《《突然文明が開花したり、技術が飛躍的に進歩してたりするんだよねー》》。俺達の住む世界は、何の理由も無く技術が独り歩きしてきてんだよー。まるで、《《何かにテコ入れでもされてる》》みてーになー」


「……何か、って何だよ」


「例えばだけど、安っぽい言い方すりゃー……










神とかー?」


静かに心臓が高鳴る。そんなのあり得ない、なんて言える世界じゃない。既にダンジョンという、俺達の常識を根底から覆す存在があるのだから。


「もしかしたら、ソイツが《《こうなる》》様に世界を創ったんじゃねー?人の道とかも操作してテキトーに決めてさー」


「……ホントに、そんなのいるのかよ?」


「知らねー。でも割と良い線いってると思うぜー?何の理由も無く技術が進歩して、因果の糸車を無視してダンジョンが現れる……そんなありえねー現象を操れるなんて、それこそ神ぐれーの存在しかいねーだろー?」


そう語る数多さんは、言葉こそ緩い口調のままだが、その顔は真剣だった。

……ふざけて俺を揶揄おうとしてるんじゃない。本気で言っている。『神』なんて不確かなものの存在を。


人類が今まで進んできた道のりに、不自然な進化があったのは確かだ。なら……もしかして、ホントにそういう奴がいるのか?


「あくまで可能性の話だけどなー。でも間違いなく言えるのは、『現象には必ず理由がある』っつー事だよー。《《オメーの身体の件も含めてなー》》」


「……ッ!」


「マナ臓を持つ人間は、普通の奴らよりも自然治癒力が高い。でも出来た傷は数分じゃ再生しねーし、損傷した肉体を一瞬で治すスキルは存在しねー。それは《《モンスターの特長だからなー》》」


「……そうだな」


数多さんの言葉通りだ。彼に付けられた傷は、既に塞がっている。

傷口が塞がる瞬間に見えた(あお)いモヤ。アレは、モンスターがマナで身体を修復する時に出るものと同じだった。

やっぱり、俺の身体は人よりもモンスターに近いんだろうな。

けど……いや。


「《《だからこそ》》、俺は最期まで戸張照真(おれ)であり続ける。先輩に教えてもらったようにな」


「ヒハ、じゃー俺から言う事は何もねーなー」


数多さんは俺の答えを聞いて、満足そうに頷いて立ち上がる。


「俺もそろそろ行くかー」


「いや、そんなボロボロの状態でどこに行くんだよ。骨折は一つ星ポーションじゃ治せないだろ」


「ヒヒハハ、ケジメ付けに行くんだぜー?この程度、寧ろハンデに決まってんだろー」


彼は笑う。その笑みは、初めて見た時よりも自然で、柔らかかった。


……ああ、思い出した。この人、何か似てると思ったら、魔猪の塔に挑んだ時の俺と雰囲気が同じなんだ。

全てがどうでも良くなって、何もかもが嫌になって、命を捨てる為だけに嗤っていたあの時。俺も彼みたいに、こんな雰囲気で死んで(生きて)いた。


そんな彼が今、楽しそうに笑っている。俺にだって分かるくらい、過酷で困難な道を行く筈なのに。


「……そっか」


だったらもう、俺に何かを言う資格なんて無いよな。数多さんも、覚悟を決めて生きていくんだから。


「じゃあ約束しようぜ。今度会ったら、またアンタの武術を教えてくれよ。今度こそ勝ってやるからな」


「良いよー。じゃー俺からも一つ頼むぜー?もしオメーがこんなクソッタレな世界を創った奴に会ったらよー、俺の分まで殴っといてー」


「あはは!それがアンタの言うホントの敵って奴だな?良いぜ、乗った」


「おー。《《じゃーなー》》、戸張ー」


そう言って、彼は十字槍を杖にしながら消えていった。あ、名前で呼んで……









………十字槍は折れてねえのかよ!最後使わなかったくせに!

クソ、騙された……次は絶対勝つ!!とりあえずムカつくから追いかけてブン殴ってやる!

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