前フリ
ブザーが鳴った。
このブザーがなると我が社の業務は、一旦終了だ。
ブザー後は基本、後片付けとかの時間と決められている。
「笹森飲み行かないか? カナエちゃんもくるからさ」
「……」
正直、俺は酒が強くない。
だが、今日の夕飯を悩んでいたこともあり、そこで食べれば余計な悩みもなくなるか、と思った。
「うん、じゃあ行こうかな」
仕事の後片付けが終わると、俺は声を掛けてきた右田と一緒にチェーンの居酒屋に行った。
席に通されると、カナエちゃんは座って待っていた。
「おつかれ」
掘り炬燵形式で足を下に入れる座敷だった。
「久しぶり」
俺はカナエちゃんの正面に座った。
飲み会が始まると、早々に俺は酔っ払っていた。
「笹森は酒弱いな」
「……んなことタァ、どうでもいいの」
カナエちゃんは苦笑いしていた。
「お酒飲むと寿命が縮むって、あんなに怖がってたのに」
「この国の人間は長寿なんだから、少しぐレェ酒飲んでもね」
「酔うのは勝手だけどな、笹森は逆方向だから送っていけないぞ」
俺は右田をみた。
「ムム。なんでそんな酷い事を言うんだ。このさきで『邪神』にあったらどうするんだ」
「またそれ? 自分で言っといて臆病ね」
俺はカナエちゃんを見た。
「笹森さんの説明だと、この国にの人間は、宗教フリーでいろんな神を受け入れちゃう。それに、論理的思考も欧米に比べて劣っているから、外国の小説にあるように『邪神』と出会って気が狂うことはないって、豪語してたじゃない。大丈夫大丈夫」
右田が付け加える。
「そもそも、そこら辺の道を歩いてて、邪神なんかにあうわけないだろ」
俺は急に眠くなった。
「おい、寝るなって」
「あっ、こんな時間」
「カナエちゃん待って」
右田に叩かれながら、俺たちは居酒屋を出た。
フラフラと歩く俺を二人で支えてくれた。
「この電車でいいんだな?」
「……ん。俺が言うんだから間違いない」
「笹森さん、駅降りるまで寝ないでね」
「ん。大丈夫」
二人は俺を座らせると車両を出ていった。
思えばフラグだったのかもしれない。