ある少女の一幕
初めて描いた作品となります。
どうか御一読お願いします。
また、やってしまった。
どうして私はこうなんだろう。
私は同じ歳の子達と遊びたいだけなのに、生まれついて魔力の高いせいで仲良くなりかけていた子に怪我をさせてしまった。
「大丈夫よ。大きくなったら、自然と身について来るから魔法の勉強を頑張りましょうね」
おばあ様は私にそう言い聞かせてくれている。
魔導士学院を運営しているおばあ様は私に期待してくれている。
お父様も、お母様も、おばあ様とは考えが違っていた、2人とも魔法とは無縁の将来を見出してほしいと言うのが両親の願いだった。
私の両親は、弟が産まれてしばらくして居なくなってしまった。
「私達を守る為にお星様になったのよ」
おばあ様に尋ねてみたら、悲しそうな顔を浮かべながら教えてくれた。
だからなのかな? 魔力の高い私に期待はしてくれているけれど、未だ使いこなせていない生まれついての力を私は嫌いだと思ってしまう。
両親を早くに亡くした私は魔法の訓練が上手くいかない時や失敗した時に気晴らしついでに、弟を連れて生家の魔導学院を出て近くの商業区や港区まで遊びに行っている。
弟は会話ができるような歳になるとすぐに魔法防御の手段を覚えてくれた。
簡単に言えばマジックシールドと言うやつだ、あげればキリがない程に魔法防御の手段だけど、初歩中の初歩なマジックシールドを早々に覚えてくれたお陰で弟との生活だけは魔力に対する気を使う事がない為、孤独を覚える事なく過ごせていた。
「おねえちゃん。またやっちゃったの?」
港区に遊びに連れてきた弟は心配そうに私の顔を覗き込んできた。
仲良くなった友達と離れた場所で遊んでいた弟のファルトは、いつのまにか友人達と別れていたのだ。
「へへっ。またやっちゃった」
私は蒼い髪をファルトが良く見えるように髪を整えながら幼い彼を心配かける事なく微妙な笑みをこぼしながら舌をペロッと見せたが、弟の顔は晴れやかにはならなかった。
「がんばってレイアおねえちゃん! 1人にはゼッタイしないから大きくなったらボクがケッコンしてあげるからダイジョーブだよ」
「ふふふっ、ファルトったらドコでそんなことおぼえたの……そうね。イイ男がいなかったらファルトにお願いしちゃおうかな」
オマセな弟のセリフに私も少し背伸びした言葉で返しながら彼の黒い髪を端によせ、自分のヒタイを彼のオデコにコツンと音が出そうな強さで重ねる。
例え弟と言っても、ファーストキッスはあげられない。
まだ会った事もない、白馬の王子様にお渡しするんだから大事に取っておかないとね。
「なにをみてるんだ、オマエ」
微笑ましい言動をした弟をあやしていると耳障りの悪いセリフが聞こえてきた。
声のする方へ顔を向けると、腕組みをしながらこちらを見下している茶色い髪の少年が立っている。
「なによ、あなた! たびの人みたいだけど、よそモノに弟との時間をじゃまされたくないわね、あっちいきなさいよ」
歳の頃は私と同じ8歳くらいなのだろう、私のおでこ一つ分くらい背が高かった男の子に小動物を払うかのように手をひらつかせて、ならずものから顔を逸らす。
「ほんとうになにも見てないんだな、だいじな弟がケガをしててもかまわないってのか」
「なにを言ってるのよ! こんなにキレイな顔してるのに……あら?」
私は不届きモノを睨みつけ、弟の姿を確認を始めた。
いつも転んだ時は顔から地面に激突して泥だらけになるのだけど、その様子は微塵も見られず、ファルトを頭の上から膝まで視線が下がった時に見慣れない布切れが弟の右足に巻かれている事に気がついた。
「ファルト、どうしたのコレ……って血が出てるじゃないの」
痛みを我慢した笑顔を浮かべる弟の脚に巻かれた布切れから、血が滲み出ているのを私は見逃さなかった。
「さっきね、あっちでコロんじゃってさっ、ナいてたら、このおにいちゃんがたすけてくれたんだよ」
「おいおい。ギャー、ギャー泣いてないからセーフだろう。ちょっと、あぶなかったけどなっ」
ファルトに向けて親指を立て、ニカッと笑いながら私の弟に「良く泣かなかったな」と言わんばかりの訂正と援護を送ってくれている。
なんという事だろう、私は弟が怪我をした事に気がつかずに落ち込んでいたなんて……。
よくよく恩人の彼を見ると旅装束の代名詞とも言える外套の裾部分が破り取られていて、ちょうどファルトの右足に巻かれている布切れと同じ色彩と形をしていたのだ。
「ごっ、ごめんなさい! 弟をたすけてくれた人にしつれいなコトを……」
「へぇー、ちゃんとあやまれるんだな。カワイイトコあるじゃん」
などと言いながら少年は握手を求めてくるように手を差し出してきた。
そんな上から目線で対応してくる男の子に対して「なんなのコイツ、こんなヤツ強風に吹き飛ばされちゃえばイイのよ!」と心の中で強く思いながら手を差し出そうとした瞬間に風魔法のエアスラスターが発動してしまった。
風魔法の中級クラスに位置するエアスラスターを彼のような少年が受けては多少のケガでは済まないのは明白だった。
私はギュッと目を閉じて「また、やってしまった」と心の中で思い、大惨事を予見していたが、予想を大きく外れて信じられない光景が起きていた。
彼にとって脅威と思われていたエアスラスターは、まるでそよ風が吹いているかのように何事もないように彼は立ち尽くしていた。
エアスラスターではなく別の小規模の魔法が作動したのかと思っていたけど、周囲の人達は突然起きた強風に被害を受けないように堪えている。
「どうしてヘイキなの? けっこう強いまほうをつかっちゃったのに」
「僕は生まれつきまほうにつよくてね、大まほうくらいじゃないとしんぱいナシだよ」
驚きの事実だった、私のように生まれつきの特異体質は自分だけと思っていたし、私に対抗できるような強い魔法耐性の特異能力が備わっているとは衝撃的な事実だ。
「ちょっ……。なんでなきだすだよ! 僕、キミにひどい事されたおぼえはあっても、ひどい事したおぼえはないんだけどっ」
この少年は何を言っているのだろうと思うよりも先に私の目からは涙が溢れ出していた。
「あなたみたいな人もいるのね。よかったら、わたしの……いいえ、わたしたちのおともだちになってくれませんか」
私は涙をながれている事も忘れて、自分と弟の友情関係の契約を求めていた。
彼のような友人が居れば、私は自分の特異能力に悩まなくて済むし、ずっと一緒に過ごして貰えるような存在になってもらえれば、夢みがちな少女のお決まりな幻想に憧れ続ける事はないのかも知れないと楽しい未来を思い描いていた。
「手をにぎってくれてるんだから、もうともだちにキマってるだろう」
私は無意識のうちに彼の右手を両手で握っていた。
それはまるで一番のたからものを見つけたように満面の笑みを浮かべながら。
「そうだ、キミなまえなんていうの? ファルトくんのおねえさん」
「私はレイア・ウォレアスっていうの。人になまえをきくときはジブンからいうモノじゃないのかしら?」
いつの間にか人見知りの弟が自己紹介していたようで少しの悔しさ混じりの疑問を投げかけた。
「ごめん。そうだよね、いつもコレでおばあ様におこられるちゃうんだよね、ぼくは……」
「トレアス! 船の時間ですよ! どこに行ったのかと思えばこんな所でお友達と遊んでいたのですね」
彼が名乗ろうとした時、少し離れた場所から旅装束を身に纏った老女が男の子を呼んでいた。
「いけねっ! もうそんな時間なんだ。レイアちゃんゴメン、またね! ファルトもつぎは、すごいまほうをおしえてくれよな」
「トレアスくん。せっかくおともだちになれたのに、もうおわかれなの?」
まるで聞き分けのない子供が言いそうな事を言って彼に笑いかけた。
「だいじょうだよ。僕、ここの学院に入学するよていだから、また会えるよ」
私の両肩に優しく手をのせて彼は笑いかけてくれた。
「やくそくだよ。私もいろいろなまほうをおしえてあげるから、ぜったいに入学してきてね」
胸の高さで手を祈るように組みながら懇願した私の目には再び涙が浮かんできていた。
彼は優しく微笑むと右手の人差し指を軽く曲げ、涙を拭うと顔を寄せてきて、ファルト以上のオマセな行動をしてきた。
私の憧れていた事、一生に1度の楽しみにしていた事が思わぬ形で奪われてしまった。
行為を終えたトレアスは再び微笑み、サッと走り出した。
「こらぁー! このヘンタイ! 学院にこなかったら、ゆるさないんだからねっ」
「つぎはキミからしてくれたら、うれしいなっ! まったね」
イタズラっぽい笑顔を浮かべながら手をふる彼に、再会を願い微笑みながら手をふりかえした。
「レイアおねえちゃん、トレアスくんとケッコンしちゃうの?」
ファルトが涙混じりの顔で尋ねてくる。
「そうね、ファルトがトレアスくんをグーでなぐってくれたら、かんがえなおしてもイイかな」
私は弟に目線の高さを合わせて笑いながら答えた。
「ホント? じゃあボク、おおきくなったらはマトウカになるね。それでトレアスくんをおもいっきりなぐるね」
ハシャギながら自分の将来を公言する弟に私はトレアスのいない時に恐ろしいアドバイスをした事に気がついてしまった。
でも、その心配は杞憂に終わる。
なぜなら、その後3、4年経っても彼は入学してくる事はなかったのだ。
だが、彼とのひと時を忘れかけていた頃に、私は思いもしない場所でトレアスと再会するのだけど、それはまた別のお話ということで……。
読了ありがとうございました。
この作品は近い将来にアップしようと思っている長編のスタート前の作品となります。
長編の前に自己紹介を兼ねて創作しました。
もしも、気に入っていただけたなら幸いです。
当作品は未完成版となっており、完成版『魔道士少女の憂鬱な悩み』も合わせ読んでいただければ助かります




