第27話 最上くんは疑惑をもたれる
蘆毛フミカと最上ガモンが一緒に下校しなくなってから二週間が過ぎた。
フミカは、最上と話す機会がめっきりと減り、それが当たり前のことだと感じられるほどになっていた。
そろそろ文化祭の準備をはじめる時期になった。
フミカたち一年生は、はじめての文化祭に期待がふくらんで、みんなそわそわと落ち着きがなくなっている。
ホームルームの時間にクラスの出し物を決めるためのミーティングが開かれた。
侃々諤々《かんかんがくがく》の大激論、すったもんだの末、多数決で決着をつけることになった。その差はわずか一票──男子勢の情熱に女子勢が屈するかたちでクラスの出し物は『メイド喫茶』に決まった(決まった瞬間、教室内が歓喜の男子と大ブーイングの女子の地獄絵図になったことは言うまでもない)。
「もう時間がないので担当決めは次回に回します。あと、部活の出し物と掛け持ちする人はこのあと私に申し出てください」文化祭委員の生徒がいった。
ホームルームが終わってもいまだに喧々囂々《けんけんごうごう》としている教室で、数人の生徒が文化祭委員の元へむかった。テニス部は出し物はやらないのでフミカは席に座ったままでいると、最上が文化祭委員のところへ行き、なにやら話していた。
(え? 最上くんは部活やってないはずなのに……どういうこと?)
今日一日の授業がすべて終わり、部活が休みだったフミカはヒナとユズハと下校するべく、玄関ロビーへとやってきた。三人はそこで衝撃的なものを目撃することになる──
下駄箱の前には最上がいて、いままさに靴を履き替えようとしているところだった。
「あ、最上くんがいるじゃ──」とヒナはいいかけた言葉を途中で呑みこんだ。なぜなら最上の傍らに女子生徒の姿があったからだ。小柄な女の子で背中にギターケースを背負っていた。
三人はおもわず物陰に隠れてしまった。
「ちょっと、なんで隠れてんのよ、あたしたち」と小声のヒナ。
「なにいってんスか。ヒナ氏がまっさきに隠れてたッスよ」と小声のユズハ。
「……」
フミカの瞳が揺らいでいた。
「まあまあフミカ、男なんかさ、星の数ほどいるらしいからさ」
帰りの電車のなかヒナがフミカを励ます。
「あの女子は1年3組の遠野ナギちゃんッスね。ある界隈ではああいうサブカルミニガールが刺さる輩が多いッスからね」
「たしかに。日焼けした色黒ゴリラ女よりちっさかわいいリスちゃんのほうがいっかあ」
「ちょっと! だれが色黒ゴリラ女よ!」
さっきまで口数が少なくなっていたフミカもさすがに怒った。
「それに」フミカはつづける。「なんか勝手にわたしがフラれたみたいになってるけど、告白されたのはわたしのほうだし、最上くんとはべつに付き合ってるわけじゃないし」
「ええ! まだ付き合ってなかったの。そのほうが驚きだわ」




