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プロローグ


ある屋敷の最上階の最奥におじいさまの書斎がある。不思議な植物や実験道具が置かれ、床には壁一面の本棚から溢れた本が積み上げられている。


おじいさまはとても穏やかな人で、右目にいつも片眼鏡(モノクル)をしている。そして、貴族ではないもう一つの顔がある。



日が沈んで就寝時間を過ぎた頃、そっとドアを開けて廊下へ出る少女の影。この屋敷に住む伯爵貴族ベリル家の末っ子、ブローディア・フォン・ベリル。忍び足で階段を上がり向かうのはおじいさまの書斎。

コンコンコン…

「どうぞ」とおじいさまの声がしてからドアノブを回す。室内に入るとソファに腰かけて本を読んでいたおじいさまが顔を上げる。

「やあ、こんばんわ。良い夜だねブローディア」

彼がベリル家初代当主、カーチェス・フォン・ベリル。


「ここは‘人間界’、人間という種族の住む世界。けれど、私と君は人間ではない」


そう告げられたのはいつのことだったか。きょとんと首をかしげると優しく笑いかけて続ける。


「そうだね、いきなりは難しいだろうから噛み砕いて説明しようか。まず、君の祖父である私は‘魔界’に住んでいる魔力を持つ魔族という種族で、わけあってこちらの世界で暮らしているんだ。

祖母のおばあさまは人間でその息子、君の父様には魔族の血と人間の血が流れている。そして母様は人間だから子供の兄様と姉様と君にも少しの魔族の血と人間の血が流れているのだが…。

魔力というのはねその血が濃ければ濃いほど強い力を持つんだ。あまりに薄いと魔力は効力を持たないし、私は意図的に呪い(まじない)をかけたから君達には伝わらないはずだったんだ。現に兄様や姉様、父様でさえ魔力を持たない普通の人間だ。

しかし君は…。恐らく純血族の私以上の魔力を持った魔族なんだ」


おじいさまは薄い皮の手袋をはめた手で私の頭を撫でた。


「ただ、その力は正しく扱わなければ周囲の人や自分を傷つけてしまうから君は魔力を制御できるようにならなければならない」


そうして普通の女の子としての短い生活は終わり、魔力と隣り合わせの日常が始まった。


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