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聖夜の贈り物  作者: 葉 立夏
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少年は黒い森のけもの道をただただ彷徨い歩き、

迷ったかと思えるほど長く歩き回った末に、ようやく賢者の家らしきものを見つけました。


扉の前で用向きをとなえると扉がゆっくり開き賢者が現れました。

賢者は少年の話を静かに聞くと、ついてくるようにと手招きしました。

賢者は部屋の奥の変わった形の重い扉を押し開け、暗く狭い階段を地下へとそろそろと降りて行きました。


そこには見たこともないような不思議なものばかりがありました。

透明な天球儀、古いどこかの国の地図、不思議な動物の剥製、

刺激的な匂いの青銅の香炉、そして色とりどりの壷、壷、壷。

賢者はその中から一つの青い壷を大事そうに抱え、少年の前に差し出しました。


「あなたが捜しているものは、ここに入っているものに近いのかもしれない。

中にあるのは燃やされてしまった灰でしかないが、

もしかすると希望を感じることはできるかもしれない。これをあなたにあげましょう」

そう言って、賢者は一人、階上へ去ってゆきました。


少年が壷の蓋をねじると、思いのほか軽く簡単に開きました。

ただ、中に入っていたのは賢者の言うように、灰でしかありませんでした。

ちりちりとして軽い灰にはなんの跡も残っておらず、なんの手がかりもありませんでした。

少年は祈る思いで、何かの痕跡を捜そうと手にとって灰を眺め、匂い、

舌で味わってみさえしました。

しかし、そこに「希望」を見出すことはできませんでした。


少年はあきらめきれずに、壷を抱き、灰から何かを感じようと試みました。

少女の望む「希望」とは何か、考えれば考えるほど少年はわからなくなってゆきましたし、

必死になればなるほど、「希望」を少女に捜してみせることは不可能なことに思えました。

そして哀しみにくれた少年はすっかり失望したまま、壷にすがりついて眠り込んでしまいました。



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