表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖夜の贈り物  作者: 葉 立夏


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/5

2

町の市場は人で賑わっておりありとあらゆるものが並んでいました。

隅のほうで不思議な模様の衣を身にまとった旅人がござを広げてアクセサリーを売っていました。

ひときわ目をひく美しい白い貝のネックレスに、少年は心惹かれました。

手に取ると壊れてしまいそうな繊細なネックレス。

でも、よく見ているとただの冷たい貝でしかないように思えてくるのでした。


一人の老人が、大通りで素晴らしい手つきでアメ細工を仕上げていました。

老人の手馴れた技を見ようと人々が群り、固唾を呑んで見守っていました。

つやつやした黄金色の見事なアメ細工は沈んだ少年の心も浮き立たせるほど輝いて見えました。

ですが、それにもまた、よく考えてみた時、口に入れれば溶けて消えてしまうような虚しさをおぼえるのでした。

花売りの美しい少女が薦める珍しい高原の青い花も、恰幅のいい商人が広げてみせる豪華絢爛な織物も、古びた店の片隅に置かれた精巧な銀細工も、少女の望んだ希望とは何か違っているような気がするのでした。


少年は「希望」を求めてあてもなく彷徨い歩きました。

あてもなく歩きまわった少年は疲れ果て、大きな木の下に座り込みました。

丁度、馬に飼い葉を食べさせている旅人に気づいた少年は、ふと、「希望」について聞いてみようと思いつきました。


「あの…」

 おずおずと少年は旅人に向かって口を開きました。


「僕は『希望』を探しているのです。どこにいけば見つけることができるでしょうか?」

 旅人は驚いたように少年をまじまじと見ました。そしてしばらく考え込んだあと、こう言いました。

「わたしの『希望』はちょうど我が家で待っているところだ。

赤ん坊が産まれたという知らせが届いて商談を切り上げて急ぎ帰るところなのだ。私の『希望』は産まれたばかりの赤ん坊だよ」


 少年はなるほどそれは希望に似ていると思いました。

ただ、それは少女が求めているものとは違うことはわかっていました。

そして、赤ん坊の誕生を祝福し旅人に別れを告げると、また歩き始めました。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ