第四話 出発
「さすが聖女様。とても助かります。こちらこそよろしくお願いします」
俺たちは握手して、今後やることを考える。
「よーし。それじゃ、服買いに行くか」
「え?服ですか?」
「そう。普段着から寝間着まで。とりあえず2セットは揃えとこうか。うん。楽しくなってきた」
そう言って、俺は店員さんを呼んで、ハンバーグとライスを頼む。先に夕飯を食べてしまおう。
「食べるんですね」
「あぁ。今日できることはやっておこうかなと思って。とりあえず今後やることなんだけど、イリアナさんの日用品を揃えて、家に生活必需品だけ運び込んで寝る。で明日は届出終わらせたり、ガスとか電気を通したり荷物運び込んだりかな?ざっくりだけど」
「わぁ・・・ちゃんと考えてるんですね・・・」
「そう?割と大雑把なんだけどね。忙しいけど頑張るわ。とりあえず明日は仕事休まなきゃ」
上司から小言言われるかもしれないけど諦めよう。半分もうどうでもいいやと思ってきている。
暫くするとハンバーグとライスがテーブルに並ぶ。
「いただきます」
食べ始めるとイリアナがこちらをじーっと眺めていた。
「あの・・・・・そんなに見つめられたら食べにくいです・・・・・もしかして作法が違いますか?」
「ふふ。それさっき私が言いましたよね。特に他意はありませんよ。何となく見つめているだけです」
「んー。そっか。ごめんね。忙しくなりそうだから夕飯食べておこうと思って」
「分かってますよ。お構いなく」
なんかよくわからない。だがハンバーグは昼に食べたオムライスより美味しく感じた。
黙々と食べ終わり水を飲む。
「よし行くか」
「はい。お願いします」
俺たちは席を立ち、会計を済ませてから店を出る。
目的地はもちろんフニァクロだ。
「とりあえずカジュアル系で服見繕うわ。余程嫌とかサイズ合わないとかあったら言ってね?」
「え!?はい?分かりました?」
分かってなさそう。まぁそれはそれで勢いでおしきれるし楽だろうと、黒系とベージュ系でそれぞれ1セット服を選ぶ。あと上下スウェットの寝巻きセットを2つ。合計4セット。あと靴とかその他は適当に見繕う。下着も選んだ。目測だからサイズがあってなかったら申し訳ないが、とりあえずはなんとかなるだろう。試着して会計を済ませる。イリアナにはベージュ系をそのまま着てといてもらう。修道服は一緒に袋に入れて俺が持っている。
店を出て歯ブラシとかコップを探しに雑貨屋に向かう。歩きながら話しかける。
「よし。かわいいな。これで人目を気にしなくても良くなりそう」
「あの・・・いいんでしょうか・・・頂いてしまって。私このような服装をした事が無いのでよく分からないのですが」
「大丈夫。俺の感性がおかしくなければ似合ってるよ。修道服を脱いで嫌かもしれないけど、そこは我慢してくれると嬉しい。あ、諸々のサイズ感大丈夫だった?一応試着したから問題ないと思ってるけど」
「いえ、そこは問題ないです。でも結構な人に見られてる気がします」
確かに周りの男性はイリアナのことをチラチラと見ては目を逸らしていた。ヒソヒソと話をしていたりもする。
「あー。それはー・・・・。多分可愛すぎるからかと・・・・思うな?」
イリアナはいまベールを脱ぎ、目立つ綺麗な長い白めの銀髪を下ろしている。服はベージュのスウェットにブラウンのロングスカート。アウターは白めのボアブルゾンにスニーカーを履いている。イリアナの可愛らしい顔によく似合っている。俺の見立てだが悪くないと思う。
「そんなことは無いでしょう。おにいさんの見立てが良かったのでは無いですか?」
そんなことを言っていたら雑貨屋に到着する。中に入り適当な品をポイポイとカゴの中に入れていく。
「いや、もしかしたらあるかもだけど、それは素材がいいからだよ。それかよほど俺のセンスがないかのどっちかだ。正直自分の感性なんて周りからどう思われてるかなんてわからん」
「それはそうでしょうね。でも私は気に入りましたよ。だからおにいさんにセンスはあるのでしょう。満点を差し上げます」
イリアナはニコニコだ。流そう。惚れてまう。
「それはどうも聖女様。とりあえず俺のも合わせて生活にいりそうなものは買ったか。他に欲しいものとかある?布団とかはさすがに今日は買わないけど・・・」
「どういたしまして。特に今欲しいものはないですよ。欲しかったらまた買いに来ましょう。・・・・・・・ふふっ」
やはりニコニコだ。他になさそうなのでレジに持っていく。
「ないならいいけどさー。なんかおかしいことあった?」
「ないですよ?ありがとうございます」
「そうですかー」
会計を済ませて店を出て車の置いてある駐車場に向かう。
「あのー。すみません?」
イリアナが言いにくそうに話しかけてくる
「ん?どうした?欲しいものまだあった?」
「そうではないのですが・・・少しお花を積みに・・・・」
俺の思考が一瞬ショートする。
あーね。気を使ってなかったわ。聞いてなかったねそういえば。しかたないやん。こちとらここのとこ、数年女子とデートみたいなこと無かったんやもん。気を使えない男で申し訳ない。ところでどうする。俺。
脳内で言い訳し、その後結論を出す。
「ちょっとこっち来て」
イリアナの手を引いてお手洗いに向かう
「え!?ちょっと・・・!?」
イリアナの声など気にしない。気にしていては動け無さそうだ。俺はそのまま手を引き多目的トイレの中にイリアナと入り鍵をする。
「あの・・・なにを?」
「よし。入れたし、とりあえず大丈夫と思おう。ここにあるものが何かわかる?」
「いえ、あまり・・・」
セーフだな。
「わかったそれじゃ説明するね。」
それからトイレの使い方、手洗いの使い方とかとかを全て説明して、俺だけトイレから出て外で待つ。
「はぁ〜・・・・・・・・・。精神すり減ったわ」
ため息とともに独り言が出る。まぁしゃあないわな。少女とトイレにいるなんて事態、普通はない。結構恥ずかしかった。勢いでやらなきゃあんなことできない。
「おまたせしました。おりがとうございます・・・」
「どういたしまして・・・。まぁ異文化だもんね仕方ないよね。とりあえず行こっか」
今度こそ改めて駐車場に向かう。
車の前まで来て、イリアナが
「これに乗るんですか?」
「そうだよ?とりあえず乗ってもらってシートベルト締めといてもらったらあとは任せといて」
「わかりました」
了承を得たので車に荷物を載せ座ったのを確認してから車に乗る。
これから親に説明するしなきゃいけない訳か・・・・・
しょっぱなからボス戦だなこれは
俺は魔王城(実家)に向けて車を走らせた