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第三話 転機

「で、どういう設定?」


少女が夕飯?を食べ終わってから切り出す。食事を食べて満足そうだった顔が少し真剣みを帯びる。


「設定・・・・ですか?」


「そう。設定。君のキャラクター性とか世界観とかいろいろ。俺もなんかアニメの影響でそういうのにあこがれてた時期があったし。興味あるなって思って。」


「え、キャラクター・・・・・そんなこと言われましても」


「そっか。あまりメタいのは答えたくないのかな。それじゃ自己紹介をお願いしてもいいかな。って、こっちからが礼儀だよね。俺は西方拓海。年齢は25歳。隣の県でサラリーマンしてます。今日は仕事が休みで時間を潰しにここに来ました。趣味はアニメ、インターネット、たまにドライブってところですね。」


「ありがとうございます。それではこちらもですね。私の名前はイリアナ・マルタ・シュベルフィンといいます。親しい方はリアやイリアって呼んでくれてますね。生まれはドリアルージュ帝国の帝都で生まれました。職業はシスターです。皆様からは聖女と呼ばれることもありました。ここには多分、反対勢力にかけられた転移術式で来たのだと思います。気が付いたら目の前におにいさんがいました。趣味は・・・・お昼寝ですね。たまにシスター長に怒られますが」


「なるほど・・・。ちょっとまってね」


会話をしながらスマホで出てきた名前と地名を検索にかける。なにも出てこない。少なくとも小説やアニメとかではないようだ。ということは自主創作か?結構設定には凝ってそうだし、パワーがすごいな。


「あの・・・・そちらの板は何でしょう?」


「ん?これ?スマホ。スマートフォンって言ってインターネットを通じてなんでも調べたり遊んだりできる便利グッズ」


「なんだかよくわからないですが、すごいんですね。」


「大体の人は知ってるはずなんだけどね。ところで聞きたいことあるんだけどいいかな?」


「はい?どうぞ?」


「えっと。ドラゴン?帝国だっけ。から来たのになんで会話が成立してるか分からないんだけど、どういう仕組み?」


「ドリアルージュです。多分こちらの世界ではないと思うので、ちゃんと覚えなくても良いですが…。で、会話が成立する理由ですが単純に魔法です。伝えたい意思を相手にそのまま伝える魔法です。受け取る時も相手の意志を受け取ります。言語を介しない意志をそのまま伝達できるので言語化の必要が無いんですよ。」


「へー。便利なんだねー。でも、さっきから口動いてるけど・・・」


「あぁ!これは演出ですよ?初対面の人が口を開かずに会話を始めたら怖いじゃないですか。なんなら口を閉じましょうか?」


「ほんとに?やってみてよ」


冗談混じりに言ってみる。


「分かりました。閉じますね?」


そう言ってイリアナは口を閉じた。


「聞こえますか?」


声が聞こえてきた。確かに口は閉じている。でも先程と寸分違わぬイリアナの可愛らしい声が聞こえる。さすがに腹話術じゃ無さそうだ。ん?まって。どゆこと


「あのー?聞こえてますよね?しかめっ面してどうしたのですか?返事して欲しいのですがー」


イリアナは割とニコニコした表情でまだ口を閉じている。口をもごもごしている訳でもない。えー。うーん。


「超能力?」


「あー。スキルでは無いですよ。ちゃんと魔法です。」


どうやら能力という概念もあるらしい。世界観は完全にファンタジーだ。ともあれ


「うん。理解出来んな。正気度チェック案件かこれ」


「恐らくこの世界じゃ魔法とかスキルはなさそうですね。でも魔素はちゃんとあるので助かります。」


「どう考えても魔法を使ってるように見えるんだけど手品なのか?コスプレなりきりにしては力入りすぎだよな。」


「おにいさーん。聞こえてますか?理解できました?決して好きな衣装を着てキャラクターになりきってる訳じゃないです」


「うん・・・。聞こえてるよ。理解出来てないだけ。あの、他にも魔法って使えるの?」


「使えますよ?割となんでも。ここで使えるのはなんでしょう・・・おトイレが近くなる魔法とか」


「勘弁してください。てかもうちょい分かりやすいやつないの?」


「あるかなぁ・・・。目立たない方がいいですよね・・・。分かりました。手を出してください」


「ん?こう?」


俺は言われた通り、右手をイリアナの方に差し出す、その手を


「失礼しますね」


両手で握ってきた。あったけぇ


「いきます」


次の瞬間。イリアナの手が氷のように冷たくなった。


「冷たっ!」


「離さないでください。まだいきます」


反射で手を離しそうになるが、イリアナの手が許してくれない。そのまま冷たい手に捕まっていると次は熱湯のように熱くなった。


「待って、熱いって!」


「良かったです。では繰り返しますね」


それから数十秒間、イリアナの手は冷たくなったり熱くなったりを繰り返した。傍から見ると手を取り合ってるバカップル(片方は何故かシスター)で、しかも少し大きな声を出してしまった手前、かなり恥ずかしい。


「ふぅ。わかってもらえました?」


「うん。わかったわかった・・・で、恥ずかしいから手を離して?」


「あぁ、失礼しました。でもあまり地味で目立たない魔法ってなくて・・・」


手を離される。かなり恥ずかしくて気が回ってなかったが、あれほどの寒暖差を生身で再現する人間はいないだろう。たぶん。手品だったらほんとにこの世の全てを疑いそうだ。


「ひとまず。わかりました。魔法はあるのでしょう。多分。で、先程の説明は全て本当だったと」


「むぅ。あそこまでやってまだ信じきってませんか。固定観念が強いのははあまり宜しくないと思いますよ?で、私は最初から嘘は言ってません」


「はいはい。ごめんね頑固者で。なるほど。じゃあ今日はどうするの?家にも帰れないと?」


「そうですねぇ。幸い慣れていますので野宿しようかなと考えてます。見知らぬ土地で道具もありませんがなんとかなるでしょう」


「何そのサバイバルこわいんだけど」


「でも仕方ないでしょう?知り合いもいませんし、明日から生活基盤を整えるために頑張ります」


「本当なら届出とかめんどそうだなぁ・・・」


そう言って俺は暫く考える。

イリアナは魔素あると言った。という事は俺も魔法を使える可能性があるという事だ。ゲームとかの知識で言うと。なんだそれやってみたい。ただ、そのためにはイリアナとここで別れる訳には行かない。本当だったらこんなに俺向きで楽しそうなとこは今後無いかもしれない。


「ごめん質問。他にはどんな魔法が使える?」


「ほか・・・ですか。例えばですが攻撃でしたら、雷を落としたり極高温の炎球をだしたり、周り一体を氷漬けにしたり出来ますね。補助ですと運気を上げたり傷を治したりできます」


「なるほど。その魔法は俺でも使えるようになりますか?」


「努力次第ですね。こちらの世界でも普通に使えそうなので知識と技量さえあれば可能です。機会があれば教えますよ?」


「是非お願いしたい。大好物です」


さて、可能らしい。賭けてみるか。これがただのコスプレ少女なら完全にアウトな案件だが聞いてる限り本当なような気がする。希望的観測ではないことを祈ろう。


「分かった。イリアナさん。家に来ませんか?」


「あなたの家に・・・ですか。」


イリアナは少し考え込む。


「はい。嫌かもしれないけど、俺と二人暮しだ。その間、魔法とかを教えて欲しい。生活に必要な費用もいらない。君の話が嘘なら完全に俺が捕まる案件だが、そうでないなら悪くない条件じゃないか?」


「いえ。嘘ではありません。確かに好条件だと思います。教えることに抵抗もないですし、おにいさんも悪い人のようには思えません。ただ・・・・おにいさんがそこまでしてくれる利点が分かりません。身体目当てなら流石に考えます」


イリアナの目線が厳しくなる。まぁそりゃそうか。


「そりゃそうだよね。大丈夫。身体目的じゃない。なんなら完全に魔法目的だ。少し話すね。

俺は最近なんの変化もない日常に嫌気がさしててさ、何か楽しいことが無いかなー。無いよなー。ってそれを繰り返す日々だった。そんな時にさ、遊びに出てきてた魔法が目の前にあって、しかも使えるかもしれないってなるとさ。ワクワクするじゃん?それに賭けてみようかなって。お金稼ぎに使えるかもしれないっていう打算もある。必死に働きたくもないしね。あと実家で暮らしてるんだけど、そろそろ出たいしさ。うち一軒家が余ってるから、そこを貸しに出してるんだけど、そこを使えれば住めるよなって実は前から考えてたんだ。

まぁ、そんな感じ。俺の我儘と打算と賭けだよ。良かったら俺のために手伝ってくれないかな?」


「そー・・・・ですか・・・・。はい。そういう言い方をされると聖女ですからね。わたし。断りづらいんですよ・・・・。分かりました。お手伝いさせていただきます。これからよろしくお願いします」


そういってイリアナは先程と違い片手を差し出し、握手を求めてきた。


「さすが聖女様。とても助かります。こちらこそよろしくお願いします」


俺も手を出し、これまでの退屈とサヨナラできるように祈りながら握手をする。


ここから俺の第2の人生が始まる。



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