第二話 会話
「あ・・あの~・・・・・?」
「ひっ!?」
少女からおずおずと尋ねてくる。
「あの?おにいさん??大丈夫・・・ですか?」
「え?・・・あぁ、大丈夫です・・・」
「よかったです。とても取り乱していらっしゃたようですので」
この少女はとても心優しい人のようだ。
「そう・・・でしたか。物音がしたと思って近づいてみたら、あなたが横たわっていたのです少しびっくりしただけですよ」
俺の言葉を聞いて、少女は少し思案した後に
「あぁ・・・、そういう事・・・。あいつら成功しちゃったんだ・・・・」
と呟いた。やはり何か事情がありそうだ。普段は何か面倒事を見かけても素通りしたり見なかったフリをするのが常だが、話をしてしまった手前聞かない訳にもいかない。
「あの?なにか事件とか?あった感じですか?」
「え?いや事件・・・・と言えばそうですね。ですがおにいさんが思っているような事ではないかもしれません」
答えを濁したが、大変な事情ではなさそうだ。服装は大変場違いではあるが
「あ、そうなんですね。では安心しました。ところで一人で来たんですか?友達か親御さんはどこに?」
「いませんよ」
ん?
「え?一人で来たんですか?」
「んーーーー。」
少女は再び考えをめぐらす素振りをする。そして数秒後
「一人で来たというか、連れてこられたというか」
「え!?まって!誘拐!?!?!?」
「違います!落ち着いて!誘拐とかではなくて転移させられたというか何というか」
と少女が言いにくそうに言う。
はぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーー。完全に理解した。
この子は高校生になっても、そういう設定の自分から抜け出せないタイプの子だ。なかなか服装とかにできる子は多くないと思うが、俺が高校生とかをしていた頃とは事情は少しは違うのであろう。いや分かる。あこがれてたり好きなキャラの考えや恰好、アクセサリーを真似してちょっと強くなった気になるやつね。俺も省エネとかゲームで使うキャラは絶対双剣にしたりとやった覚えがある。
「うん。うん。なるほどね。何となく事情はわかった。ところでこれからはどんな予定ですか?」
なんとなく少女の精神性を分かった気がしたので、言葉尻が少し軽くなってしまう。多分コスプレをしてモールを闊歩して満足したら帰る気だろう。
「え?えー・・・・どうしましょう。とりあえず生活基盤を整えないとなんですが、こちらの文化があまりわかっていないので、情報収取ですかね。」
「うん。そうなるのね。わかった。特に用事がないなら付き合いますよ。こちらの設定を説明できますし。でも、ここじゃなんですし喫茶店とかどうですか?」
よくよく考えなくても、よそから見たら外の木陰でコスプレ少女とおっさんだ。やばい。
俺の予定はあってないようなものだし、たまには付き合ってみてもいいだろう。やってることはナンパ紛いだがちょっと楽しそうだ。
「あ、喫茶店もあるんですね。ではそちらへ。案内をお願いしてもよろしいですか?」
「ええ。かまいませんよ。ではこちらへ」
少女を先導するように喫茶店に向かう。ここのところ女性と接する機会が多くないためエスコートの仕方なぞ知らないが、見たところ靴はヒールだしあまり早く歩くのもダメだろう。少女の左斜め前を少し前で歩く。
モールの中では大分視線を感じたが、まぁ俺は県外の人間だし気にしなくてもいいか。だが少女はどうなのだろう。
そんなことを考えている内に昼食を食べた喫茶店につく。店員さんに2名と言うと昼に接客してくれた店員さんが、えっ?と言いたげな表情をするが席に案内してくれる。席に着いた後メニューを少女に差し出し
「好きなのを頼んでいいよ?」
「あ、はい。ありがとうございます」
少女は食い入るようにメニューを見ている。食事欄の方を。
「お腹空いてるの?俺はコーヒー頼むけど」
「あ、あはは・・・そうですね。空いてるかもしれません。あの、これいいですか?」
少女はオムライスを指さしながら俺に訪ねてくる。俺がまぁまぁと思ったオムライスだったが、わざわざ言う必要もないかと了承して、水を持ってきた店員さんについでにオーダーする。
しばらくするとオムライスとコーヒーが席に並ぶ。俺はコーヒーを飲みながらスプーンでオムライスを頬張る少女を眺めていた。
かわいいよなぁ・・・・どこでこ拗らせたんだろう・・・・・
「あの・・・・・そんなに見つめられたら食べにくいです・・・・・もしかして作法が違いますか?」
「ん?あぁごめん。絵になるなぁって思ってただけだよ。それおいしい?」
「はい!とってもおいしいです!」
少女には好評のようだった。俺の下がおかしいのか?
「それはよかった。」
俺はそのあとスマホを取り出しニュースやSNSを見ながら、たまに少女を眺めながら時間を潰した。そして少女が食べ終わったのを確認してから切り出す。
「で、どういう設定?」