ボロアパート・クッキング
下手な鉄砲数撃ちゃ当たる、なろうラジオ大賞2第三弾。
相変わらずの甘さに加えて飯テロ要素もありますので、お覚悟を。
ボロアパートの台所に、俺は後輩と並んで立っていた。
「よろしくお願いします」
「あぁ」
くそぅ、髪縛ったエプロン姿可愛い。これがよその男の為かと思うと無性に腹が立つ。
「まずは何をしますか」
「米炊くとこからだな」
「はい」
食費節約の為に弁当作って、部室で食ってたのがまずかった。それを見た後輩が、自分で作ったのか、教えてほしい、男の心を掴むには胃袋からだと聞いた、と畳みかけられ、頷いた自分の弱さを殴りたい。
「水切ったらそのまま置いとけ。吸水させる」
「水、切るんですか?」
「吸水には、表面に残った水で十分なんだよ」
吸水の間に全体の説明を行う。
「今日は男の心を掴む料理って事で、五品作る」
「五品……」
「ご飯、汁物、メイン、小鉢二品だから、大した事ない。男は丼物とか麺類とか一品完結が多いから、品数が多いと喜ぶ」
「成程」
真剣に聞く姿が可愛くて腹が立つ。料理に集中だ。
「まず山芋を千切りにして袋に入れ、醤油をかける。以上だ」
「えっ」
「次。大根千切りにして、マヨネーズ混ぜたツナ缶と和える。以上だ」
「えっ」
家飲みの経験は伊達じゃ無い。
「炊飯をかけて、と。メインはハンバーグだ。普通は炒めた玉葱を入れるが、俺はこれを入れる」
「エノキ……」
「ハンバーグのタネは水分が多いとまとまらない。だがエノキなら大丈夫だ。みじん切りも楽だし」
「成程」
「塩胡椒で下味付けたらこねて丸める。あ、小さく薄めに丸めろよ。火が通る前に焦げる」
「はい」
「で、タネを寝かせてる間に汁物だ。汁物の具は好みが分かれる。今日は豆腐とネギの味噌汁にしよう。相手の好みは調べておけよ」
「先輩の好みは」
「俺は油揚げだな」
参考にはならないと思うが。
「さてハンバーグ焼くぞ。油はタネから出るから薄くな。強火で両面焼き固めてから中火だ。肉汁が逃げる」
「はい」
「焼けたら残った油に醤油とケチャップ入れて一煮立ち。よし、盛るぞ」
「はい」
盛り付けて並べるとなかなか様になった。
「凄い……」
「感想は食べてからだ。いただきます」
「いただきます」
うん、美味い。上出来だ。これを振る舞われる奴が妬ましい。
「今日はありがとうございました。あの、また教えてもらっても良いですか」
「……暇ならな」
「ありがとうございます」
そんな笑顔見せるな。誤解されるぞ。好きな奴にも、俺にも。
「次は油揚げのお味噌汁、ですね」
「えっ」
誤解、だよな? さっと踵を返した後輩の背中を、俺は呆然と見送った。
読了ありがとうございました。
料理スキルは大事だけど、振るい過ぎるとオカン扱いされます。ソースは私。
ハンバーグはお弁当に入れる場合には、タネの段階で味噌や塩麹を混ぜると、ソース要らずで他の食材を侵食しないのでおすすめです。後書きで何を書いているのやら。
次回もお楽しみに!