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テストと夏期休暇の予定

 ひょんなことから僕の不思議な力のことが夏南と芦野さんに知られてしまう。しかし、二人は何事も無かったかのように普段と変わらぬ様子で僕と接してくれた。

 あのときから月日が経った現在も、二人は普通に話したりしてくれるため本当に感謝しているし、僕にとって掛け替えのない仲間と出会えたとつくづく感じている。そして今日は、夏期休暇に入る前に実施される試験のちょうど二週間前となる。

 特別、講義の時間が短縮されたり、高校生の時みたく試験日の前日は午前中の授業だけで終わるといったことはないらしい。

 また、大学で行われる試験ということもあり、専門分野の知識を問われる科目もでてくることだろう。そのため、大学一年生だから大丈夫、などといった変な余裕は持たない方がよさそうだ。


 今日の講義が全て終わった後、僕たちサークルのメンバーは活動の拠点となる倉庫へと向かった。何故かというと、三人で試験日まで毎日勉強を行うためにである。

 これからしばらくは土日でなくともサークルのメンバーである夏南と芦野さんと僕で集まって勉強をしていくことになる。そして、大学の講義は遅くとも午後六時までには終了する。それから集まったとしても毎日最低一~二時間は勉強をすることができるのだ。

 これらに加えて三人とも同じ学科であるため共通した科目が試験として行われる。芦野さんの場合は、以前にも少し触れたが履修科目に加えて選択科目もいくつかとっているらしく、僕と夏南よりも余計に勉強しなければならなかったりするらしい。

 僕ら三人は試験当日まで必死に勉強をした。勿論、家に帰ってからも勉学と休息を程よいバランスでとるようにして頑張った。

 サークルの方はというと、育てている植物の水やりだったりを毎朝少しだけ早く大学に来てやっていた。それに、土日も勉強の息抜きと称して活動をしていた。

 そうそう、つい最近、僕らがプランターに蒔いた植物の種が成長して綺麗な花を咲かせたのだ。それにしてもよく立派に育ってくれたものだ。花が咲いているのを見たときは、とても嬉しく感じた。

 僕の育てていた『サマーポインセチア』は、二人の育てる植物よりも少しだけ早く花を咲かせた。

 僕の力が作用したのかどうかについての詳細については不明だが...。

 

 さて、本日は試験初日を迎えた。これまでやってきたことを発揮させられる最高の機会となるわけだが、全くもって不安要素が無いというわけでもなかった。だが、少しでも自身の気持ちを落ち着かせて試験に臨むことができるように努力するしかないのだった。

 そうして、何とか本日分の試験を終えるのだった。

「夏南、どうだった、できたか?」と僕はさりげない感じで聞いてみた。

「まあ、何とか空欄は無いように回答したけど、あまり自信はないな」と夏南。

 それから少しして芦野さんと合流した。彼女の様子は見るからに落ち込んでいる様子だった。彼女が言うには、今日、つまりテスト初日の一番自信のあった科目の問題が思ったよりも解けなかったため、気持ちがブルーになってしまっているらしい。

 そこで僕は、

「明日も明後日もまだテストは続くんだからさ、そこで今日の分も取り返せばいいんじゃない?」

 そのように彼女を励ます意味も兼ねて言った。

「そうだよね、畑四季君の言うとおりだよね。こんな些細なことで落ち込んでちゃだめだよね」

 そう言ってきた後、彼女は僕らに向かって次のようにも言ってきた。

「この後のことなんだけど、もしよかったら三人で明日のテスト勉強しない?」と。

 僕と夏南は、いったん互いの顔を見た後、彼女の方を見てこくりと頷いた。そうしていつものように倉庫へと向かった。テスト初日は、午前中で終わったため大学内の購買で昼食のお弁当を買い、それからの午後の時間を僕ら三人は勉強に費やすのだった。

「今日はありがとね、明口君に畑四季君」と芦野さん。

 その言葉に応じるように僕と夏南も一言二言別れの言葉を返し、帰路についた。


 試験二日目と三日目は、どちらとも午前と午後を通して行われた。一日目が午前中だけで終わったのに対し二日目と最終日は午後まで試験があったため、そのぶん何かときつく感じた。

 そうして何とか三日間の試験を終えることができた。


 本日は、八月一〇日。夏期の長期休暇前の試験を終えた次の日である。

 この日は、今回行われた三日間の試験で追試となった者が発表される日でもあるため僕は緊張していた。大学に行く必要はないものの、追試者には大学から個別での連絡がくるらしいのだ。

 突如として、万が一、追試の対象者だったらどうしようという不安が僕を襲った。

 時間が刻一刻と過ぎていく。しかし、いつまで経っても大学から追試を知らせる連絡はない。そのため、僕は完全に安心しきっていた。

 そのとき携帯の着メロが流れてきた。まさか、追試の対象者に選ばれてしまったのだろうか...といった不安と共に冷や汗が流れ出てくる。

 恐るおそる携帯の画面をのぞく。その画面を見たとたんに僕はホッとして安堵の息をもらす。それは、大学からの連絡ではなく芦野さんからの連絡だったからだ。そして、僕は彼女からの電話に応じる。

「どうした、僕に何か相談事でもあるの?」と僕。

「いや、そういうわけじゃないんだけど...」と彼女。

 そのとき、僕の脳裏に彼女が追試の対象者になってしまったのではないだろうか、といった不謹慎な考えが浮かんでしまった。それから彼女は、こう言ってきた。

「あのね、まだ大学から何の連絡もないんだけど、もう安心してもいいのかな?」と。

 正直なところ、僕からは何とも言い難い。現時点(午後四時)になっても大学からの連絡がないからといって確実に追試者を免れたとは限らないからだ。

 そんなわけで僕は芦野さんに対しての言葉が見つけられないでいた。

「ごめんね、そうだよね。畑四季君からは何とも言えないよね」と彼女。

 それに対し「うん、僕には今日のいつまでに大学からの連絡がくるのかは分からない。力になれなくてごめん」と言った。そして、彼女との連絡を終えた。それ以降は誰からも連絡がなかった。


 次の日の朝、僕は起きると大学へ行く準備をした。今日は、夏期休暇の前の終業式のようなものがあるらしい。それからしばらくして僕は家を後にした。

 また、いつものように夏南と途中で合流して何気ない会話を交えながら大学へと向かう。

 到着後は、大学のアリーナで集まり集会のようなものが行われ、いくつかの話を聞くこととなった。そこでは、今回の試験結果は大学からの郵送で各家庭へと送られるということ、夏期休暇の大学生らしい過ごし方などについて言われたのだが、そのほとんどは、誰であっても人生の中で何度も聞いたことのあるような当たり前の注意すべきことであった。

 そうして、ふとしたときには集会のようなものが終わりを告げていた。


 集会のようなものが終わると、僕と夏南と芦野さんは倉庫へと向かうことにした。その道中、何とか三人とも追試を受けなくてもよいということが会話をしたことで分かった。

 それから少しして、僕らは倉庫へと到着した。その入口付近では、プランターから花が顔をのぞかせている。

 それにしても、花が咲いている様子を見る度に毎回思うのだが、花ってなんて綺麗なんだろうか。

 それから間もなくして、僕らは倉庫の中へと入っていく。

<明日からは夏期休暇になるのだが、今日は何かすることがあっただろうか?>

 そんなことを僕は考えていた。すると、夏南が僕に対して次のように言った。

「輝、お前今から何をするのか全く理解してないみたいな表情してるけど大丈夫か?」と。

 その通りである。僕は今から何をするのか全くもって分かっていない。そのため、彼の言葉に対して僕は「あぁ、そうなんだよ」と返事をした。それに対して夏南は呆れたような感じで溜め息を一つ吐き、僕に対してこう言ってきた。

「はぁ~今から夏の予定を決めるんだよ。お前にも昨日連絡しただろ?」と。

 そのように夏南は言ってくるが僕のところに昨日きた連絡は、芦野さんからの電話のみであって、そのような内容の連絡は送られてきていないはずだ。念のため、僕は携帯を開き、夏南からそのようなメールがきていないかの確認をした。だが、やはり僕のところには知らされていないようだった。

 そんなわけで、僕は芦野さんにも聞いてみることにした。

「芦野さんに聞きたいことがあるんだけど、いいかな?」と僕。

「どうかした、畑四季君?」と彼女。

 そこで僕は、夏南が言ったような内容の連絡が芦野さんにきたかどうかの確認をしてみた。その結果、彼女のところにもそのような主旨の連絡はきていないということが判明した。

 そのため、僕は再度、夏南に本当に昨日そのような連絡をしたのか聞いてみた。彼は最初、「メールとして送信した」と言っていたが、彼の携帯のメール送信済み一覧を見せてもらうと、そのような内容のメールは僕と芦野さんに送られていないようだった。

 このことを確認した夏南は首をかしげているが、送られてきていないことに変わりない。それからしばらく彼の携帯のメールボックス等を隅々まで調べさせてもらったりしたことにより、ある一つの事実が浮上してきたのだ。

 その事実とは...夏南は僕と芦野さんにメールを送信したつもりになっていたが、その送ったつもりになっていた肝心のメールは、下書きのところに保存されていて、やっぱり送信完了ではなかったのだ。所謂(いわゆる)、夏南は送った送った詐欺のようなことをしていたのである。

 その事実が発覚した後、夏南は「すまん、悪かったな。俺の勘違いだったわ」と言って一人苦笑いをしていた。しかも、彼が送ろうとしていたメールの本文には、先ほど僕に言ったような確実に決まっているといった断定口調ではなく、あくまで、一つの意見として提案しているだけのようなものとなっていた。しかし、夏のこれからの予定を決めるという案は決して悪いものでもない。そんな流れのまま、僕らは夏期休暇(これから)の予定を話し合うことにした。


「芦野さんと夏南は何か夏の予定に関して意見とかってある?」と、いきなりだが僕は聞いてみた。

「そうだなぁ~俺からは特にないな、今のところは」と夏南。

「あの、私も明口君と同じで今は良い考えがこれといって思いついてなくて。ごめん」と芦野さん。

 かくいう僕も現時点では何の意見すら見つけられてないでいる。そのため、二人のことをとやかく言う資格はないのだ。

 それから何の進展もないまま時間だけが過ぎていき、いつの間にか一時間と少しが経過していた。と、そのとき、僕の中に一つの考えが舞い込んできた。それは、以前決めたこのサークルの活動予定でもある野外散策と夏の合宿を兼ねたものである。

 僕は、たった今思いついた考えを二人に話してみることにした。

「いきなりであれなんだけど、二人とも僕の考え聞いてもらってもいい?」

 その言葉に対して二人とも頷き返してくれたため、僕は続きを話すことにした。

「以前、このサークルの活動予定を決めたときがあったでしょ。その時に決めた野外散策と夏期休暇を兼ねた夏合宿みたいなのが、このメンバーでやれたらいいなって思ってさ」

 そのことを言い終えたときには、芦野さんと夏南の二人とも「おもしろそう」とか「その考え良いね!!」といったような感じで、僕のこの発言に対して興味を持ってくれているようである。

 こうして、今年の夏期休暇は三人でどこかに行き夏合宿を行うこととなった。

 



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