おまけPart2:帰り道の三人
今回は、何とかサークルメンバーが集まった日の大学から帰宅までのワンシーンを切り取ったもの......
「夏南、ちょっと教えてほしいんだけどさ~」
「なんだ?言ってみてくれないか」
「今日の健康診断の後、どのタイミングで夏南がいなくなったのかがあまり覚えてなくて...」
「あぁ、それな。輝の方が俺よりも少し前に最終項目の内科検診が終わって外の通路で待っててくれたよな!?」
「確かにそうだったけど」
「じゃあその後、輝がどこかに消えたと思ったら五分位で俺の所に戻ってきたのも覚えてるだろ!?」
「だから、その時はトイレに行ってただけだって。言ってなかったっけ?」
「いや、それについては別に今聞いてない。覚えてるならそれでいいんだ」と夏南が言う。
続けざまに「輝がトイレだか何かから戻ってきた時、携帯にお前の妹の華江から着信があったことも覚えてるだろ?」と言った。
それに対し僕も「あぁ。妹からの着信はダルかったけど、それがどうしたって言うんだ?」と聞き返す。
「その少し後には、俺もういなくなってたぞ」
「マジか、全然気づかなかったわ。電話対応に気をとられすぎてたのかもしれないな」
「それについては、よう分からんから俺の口からは何とも言えないけど...」
「じゃあ、もう一つだけ聞いてもいいか?」と輝。
「いいぞ。この際だから言ってみ!」と夏南。
「芦野さんとは、どこでご、合流したんだよ?」
「それは輝が妹と電話をしてる時だったんだけど、どこからか強烈な視線を感じたんだ。それで、お前はまだ電話中だったから俺だけでそっちの方に歩いて行ったんだ」
「それでどうだったんだ、夏南?僕はそのことにすら気づけてなかったけど」
「あぁ、そこには彼女がいたんだ。だから『何してるんだ?』って声をかけた」
「そうか。で、彼女は何て言ってた?」
「『ちょっとした段差に躓いたから休んでた』だって。それで一応俺が『大丈夫か?』って聞くと『平気です。もう大丈夫です』って言うもんだから俺、その場を去ろうとしたんだよ。そしたら、彼女が相談したいことがあるって言ってきたからしばらくそれに付き合ってたんだ。その後は彼女と一緒に輝から送られてきたメールの所まで向かったってわけ」
「へぇーそうだったのかー...」と僕が落ち着いた口調で言うと、彼はどの会話からそう感じたのか僕が彼女のことを好きではないのかと聞いてきた。
それに対し「いや、別に何とも思ってないけど。うん...」と答えると「そっか。輝のことだから好きなのかと思ったぞ。まぁ、どっちでもいいけどさ...」と夏南が言ってきた。
実を言えば、僕は芦野さんに好意を持っている。もっと言うと彼女と初めて会ったからあの時から気になっている。まだ出会ってから間もないというのに。
自分でも<少し気色が悪いな>と思ったりしたのだが。
そのやり取りの後は互いに言葉を交わしたりすることなくそれぞれの家へと帰って行った。
帰宅後の夏南はというと<輝の奴、さっきはあんなこと言ってたけど本当は彼女のことが好きなんだろうな~。一目惚れってやつかね。梨実花さんの方も輝のこと、まんざらでもなさそうなんだけどな~。今度いつか聞いてみるとでもするか...>なんて思っていた。
一方の芦野さんはというと<夏南さんに見つかってしまったときは、一瞬焦ってしまっただども何とかなったから良かった。それとクッキーを畑四季さんに渡した後、二人の作ろうとしてるサークルにどうしても入りたいという一心で、こっそり尾行していたことは口が裂けても言えね~な...>なんてことを思っていましたとさ。




