集合
開いたグループ名は「お悩み相談所」。
しかしこのグループに入っている人は、誰かに相談するために入った訳じゃない。
このグループに入っているのは、自殺をしたいと思った人だけだ。
自殺という言葉をグループ名に入れると、親に見られたときに厄介だから、別の言葉にした。
ひょんなことから知り合った自殺志望者6人が、傷の舐め合いをしていると思ってくれればいい。
俺はこの6人には、自分のことをさらけ出せた。皮肉なことに、そのお陰で気が楽になり、今日まで自殺をしなかったと言えるだろう。
匠:なんか『救世主』?のせいで皆がおかしくなってる。みんなは無事?
すぐに既読がついた。
美久:うん。でも吐きそう。匠今どこ?1人じゃ不安で。
健也:良かった。匠も美久も無事なんだな。とりあえず俺も会いたい。外は危なそうだし……。3年4組はどうだ? 廊下の真ん中にあるから。
匠:そうだな。
小花:了解!
春花:分かった!
望:ラジャ
良かった。全員無事なようだ。
俺は3年4組に向かった。
3年4組には、俺と春花以外は既に着いていた。
「とりあえず、この6人が無事で良かった。なんだかんだで皆に一番気を許しているから」
こう言ったのは斎藤小花だ。背は小さいが、言いたいことはちゃんと言うタイプ。
「ごめんごめ~ん! もう皆揃ってるのね!」
「おい、静かにしろよ! 俺らの居場所を見つけられたら困るだろうが!」
「あんたもね」
加藤春花の大声を止めたのは森健也。そしてそれに突っ込んだのが美久だ。
渡辺美久の口調は基本的にきつい。だが、人一倍優しいことも知っているから、美久のことは苦手じゃない。
春花はいつも通りだ。うん、春花らしい。
「僕たちどうなるのかな?」
怯えながら、声に出したのは鈴木望。気が弱いけれど根性はある。
皆いい人達だ。俺が仲間に入っているのが不思議なくらい。
「これからどうする?」
健也が言った。
「どうするもなにも……。お父さんとお母さん、無事かなぁ」
小花が答えた。
「とりあえず状況を把握しよ。男子と女子でペアになって、学校の中がどうなってるか確認しようよ。まだ生き残ってる人がいるかもしれない」
美久の言葉に小花が反応した。
「やっぱり皆死んじゃったのかな」
小花は不安を声にのせて言った。俺も皆が死んでいて欲しくない。でもあの状態の健人が生きていると判断するのは無理があった。
皆は沈黙する。だが、春花がその沈黙を破った。
「まあまあ、暗いことを考えても仕方ないよ! とりあえず動かなきゃ!」
春花の意見に賛成し、俺たちは二人ずつに分かれた。
俺、渡辺美久は特別棟、つまり、いつも先生たちがいる場所を。
森健也、斎藤小花は教室棟を。
鈴木望、加藤春花は体育館や美術室などの特別教室を。
それぞれが調べることになった。