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無駄な時計(HM)
何処か物悲しく、何処か肌寒い。部屋に吐き出すため息もすぐに凍り付きそうだ。
暖を求め、マグカップに注いだコーヒーを口にする。確かに温かいが、酷く苦い。苦味の少ない豆を挽いたはずなのだが、別の豆を買ってしまったのだろうか。
そんなはずはない。それは一番自分自身が分かっている。
心の中で思うものの、だから何だともう一人の自分が言う。意味の無い確認作業だ。賃金も何も得られない無駄な残業と変わらない。だが、余計な事を考えずに、数字が並ぶ書類を眺めていた方がマシだろう。何故今日を休暇にしたのだろうか。
一緒に選んだ壁掛け時計は、12月24日から25日へ針が動いている。
「結婚、して下さい」
無駄な言葉を口にし、輝きを失った無駄な箱を眺め、去った彼女が好んでいた苦味の少ないコーヒーを口にする。
コーヒーはやはり苦く、そして何処か塩気が増えた。