表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋が始まらない《本家》  作者: 北斗白
夏〜Summer〜
29/37

29話~嘘つき

「恋が始まらない」は現在、月・水・土曜日の三日更新で21時更新です。

ですが本日は文字数の都合上、21時に28話、22時に29話更新のには更新となります。


29話は文字数が少ないです。

 教室を出ると、香織はバラバラになってしまいそうな心と体を奮い立たせ、覚束ない足取りで何とか自宅へとたどり着いた。

 家の中に入ると、力が上手く入らない身体で二階へと上り、すぐさま自分の部屋のベッドに突っ伏した。


 (どうしよう……)


 先ほど言ってしまった自分の発言が頭の中をよぎる。

 

 --あんなの全然タイプじゃないし、何て言うかおもちゃ感覚? てか陰キャなんて相手にするわけないじゃん。


 あんなの全然本心じゃない。そんなのは言ってしまった自分が良く分かっている。ただ、それを言われた本人《水城》の事を考えると、どうしようもないくらいに胸が引き裂かれそうになって、ただただ辛くて、自分の事でもないのに涙が溢れ出してきそうだった。

 ……彼を傷つけたかったわけでも、彼との仲を壊したかったわけでもない。むしろその逆で、自分たちの関係を守りたくて、周りにいた友だちに最低で拙い嘘をついてしまった。

 ただ、こんなことになるって分かっていたら絶対に言わなかった。あの時見栄を張ってしまった自分を後悔してもしきれないくらいに心が苦しい。


 (水城に嫌われちゃったよ……)


 そう自覚した瞬間、これまで我慢してきた涙がぼろぼろと溢れ出してきた。

 水城の事は好きだ。今思えば、自分が気づかなかっただけで、勉強合宿でスニーカーを貸してくれた時から惚れていた。この前も家にお邪魔した時に嫌な顔を見せないで、帰りだって暗いのに駅まで送ってくれた。球技大会の時も話したことのない女の子の為に自分を犠牲にして助けて、それから学校でも知らない内に水城のことが視界に入るようになって、優しい彼の表情を見るたび、よりいっそう好きになった。


 (ただ…)


 だけど、その好きな人に嫌われてしまった。それもたった一言の自分が招いてしまった失言のせいで。あの時、水城はそんな人じゃない。女子生徒二人を庇ったんだって正直に言っていればと何度も唇を噛み締める。

 出来る事ならばもう一度水城に会って本心で謝りたい。そして、絶対に振り向いてくれないのは割っているが「好きだ」って言いたい。でもそれが叶う望みではないという事は身に染みて感じている。

 香織は行き場のない絶望感と虚無感に包まれて、止まらない涙を必死に拭い続けた。

お読みいただきありがとうございます。前回の後書きが長くなって申し訳ありませんでした。今後の物語を温かい目で見守ってくださると嬉しいです。


北斗白のTwitterはこちら→@hokutoshiro1010

お知らせなどは活動報告をご覧ください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ